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反少年主義 第二幕  作者: 椎家 友妻
其の五 予期せぬ人違い
42/66

2 犯人からの電話はなかなかかかってこない

 「えっ?ど、どうしたんですかヨシオ君?」

 突然のオレの叫びに目を丸くするカスミ。

そして玄関に居たナミコさん達も、オレの方に振り向いた。

オレはそんな中、一目散にナミコさん達の元へ駆け寄る。

するとそんなオレにテイコさんが言った。

 「そないに大声出さんでも、すぐに朝ごはんの用意をするがな」

 「ちゃうねん!そうやなくて!夕べ一体何があったのかを思い出したんですよ!」

 「え?ヨシオ君、夕べここで何があったか知ってるの?」

 「知ってます!」

 驚きの声をあげるナミコさんにオレはキッパリと答え、こう続けた。

 「夕べこの屋敷に二人組の男が侵入してきて、レイコをさらっていったんです!」

 「何ですって⁉」

 「ホンマかいな⁉」

 オレの言葉に驚きの声を上げるナミコさんとテイコさん。

すると警察のおっちゃんは腕組みをしながらこう言った。

 「ふむ、という事は、犯人がこの屋敷に侵入した目的は、

そのレイコという人物をさらうためだっという事ですな」

 「で、でもどうして?あの子がここに来たのは昨日が初めてなのに・・・・・・」

 そう言ってうつむくナミコさん。

するとオレの背後から、

「あの・・・・・・」

と言いながらカスミが歩み寄ってきて、おずおずとした口調でこう言った。

 「もしかしてレイちゃんは、()と(・)間違えられて(・・・・・・)さらわれた(・・・・・)んじゃないでしょうか?」

 その言葉でオレは全て合点がいった。

 「そうか!犯人はカスミを誘拐するためにここに侵入した。

でも視界が悪い上にあいつらも慌ててたやろうから、

レイコがここの娘やと勘違いして連れて行ったんや!」

 「そんな、私のせいでレイちゃんが・・・・・・」

 「カスミのせいじゃないわよ。悪いのはレイちゃんを誘拐した犯人なんだから」

 瞳を(うる)ませるカスミの頭をなでながら、ナミコさんは優しい口調で言った。

 「しかし犯人の目的が誘拐なら、いずれ向こうから電話をかけてくるでしょうな」

 と警察のおっちゃん。すると、その時やった。

 チリリンチリリン。チリリンチリリン。

 奥の部屋から電話のベルが聞こえてきた。

 「噂をすれば何とやらやな」

 テイコさんがそう言うと同時に、オレ達は電話が鳴っている部屋へ急いだ。

そしてその部屋にたどり着くと、ナミコさんが電話の受話器を取り、神妙な表情で口を開いた。

 「も、もしもし、ヤマトウでございます」

 その声に、オレ達も息をのんで耳を傾ける。

そんな中ナミコさんと電話相手のやりとりが始まった。

 「──────はい、はい、そうです。え?な、何ですって⁉

そ、そんな・・・・・・ええ、ええ。じゃあ、私はどうすればいいんですか?

・・・・・・そ、そうですか。分かりました。

こちらもできるだけの対応をさせていただきます。はい、はい、それではまた」

 ナミコさんはそこまで言うと、受話器を置いて深いため息をついた。

そんなナミコさんに、オレはおずおずとたずねた。

 「あの、電話の相手は犯人やったんですか?何て言ってました?」

 それに対してナミコさんは、ひどく物悲しげな顔でこう言った。

 「ただの、間違い電話だったわ・・・・・・」

 すってーん!

 その言葉に、ナミコさん以外の全員が吉本新喜劇ばりにズッコケた。

そしてオレはすかさずツッコミを入れる。

 「間違い電話やったらさっさと切ったらいいやないですか!

あんなやりとりされたら犯人からの電話やと思うでしょ!」

 「ごめんなさい、私、気が動転してて・・・・・・」

 そう言ってナミコさんが頭を下げた時、

 チリリンチリリン。チリリンチリリン。

 と再び電話のベルが鳴った。

すると今度は警察のおっちゃんがズイッと前に出て、

 「私が取ります!」

 と言って受話器を取り、話を始めた。

 「もしもし・・・・・・もしもし?・・・・・・な、何だと⁉

そんなバカな・・・・・・そ、そんな事が許されると思っているのか⁉

何とか言ったらどうだ⁉おい⁉・・・・・くそっ!」

 警察のおっちゃんはそう言うと、乱暴に受話器を叩きつけた。

そのおっちゃんにオレは尋ねた。

 「今度こそ犯人からでしたか⁉」

 それに対して警察のおっちゃんは、怒りに満ちた口調でこう言った。

 「ただの無言電話だった!」

 すってんころりーん!

 その言葉に、おっちゃん以外の全員が再び吉本新喜劇ばりにズッコケた。

そしてオレはすかさすおっちゃんにツッコミを入れる。

 「だから紛らわしいねん!無言電話ならさっさと切ったらいいでしょうが!」

 「いやあ、無言電話って腹が立つじゃないか」

 そう言ってカンラカンラと笑う警察のおっちゃん。

この人は事件を解決する気があるのやろうか?するとその時、

 チリリンチリリン。チリリンチリリン。

 三度目の電話のベルが鳴った!

 「今度こそ犯人からやろ!」

 オレがそう叫ぶと、今度はテイコさんがズイッと前に出て、受話器は取らずにこう言った。

 「残念、これは私が持ってる風鈴の音でした」

 そう言ってテイコさんは右手に持った風鈴をチリリンと鳴らした。

 それを見たオレ達は吉本新喜劇ばりにってもうええねん!

オレはテイコさんに怒りの声をあげた!

 「風鈴は今関係ないでしょ!何やってんスかホンマに⁉」

 それに対してテイコさん。

 「いやあ、この流れやと、私も何か面白い事をせんとあかんのかなと思うて」

 「そんな流れはええねん!今はレイコが誘拐されて大変なんですよ⁉

それやのに何なのこの緊張感のなさ!皆ホンマに事の重大さが分かってるんスか⁉」

 すると今度はカスミが、オレのシャツの裾を引きながらこう言った。

 「あ、あの、私も何か面白い事をした方がいいですか?」

 「そんなんせんでええ!せめてお前だけはまともであってくれ!」

 するとその時、

 チリリンチリリン。チリリンチリリン。

 今度こそ電話のベルが鳴った!



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