7 隣のレイコはよくメシ食うレイコだ
その夜、オレは再びヤマトウ家に戻ってきた。
そして昨日と同じように、カスミやナミコさん達と食卓を囲んでいた。
尚、今日の晩御飯はテイコさんが作ってくれた。
ナミコさんには悪いけど、素直に嬉しい。
そしてそんなオレとカスミの間に、レイコが座って一緒に飯を食っていた。
「バクバクガツガツムシャムシャ!」
レイコは昼の時と同じように、目の前に並んだ食事を勢いよくかきこんでいる。
結局あれからレイコはオレについてきて、
今日一晩は、カスミの友達としてここで泊めてもらえる事になったのや。
レイコの家出の事をカスミは黙ってくれていたようで、
ナミコさんもテイコさんも、レイコが家出をしてここに居る事は知らなかった。
ナミコさんはレイコを泊める事を快く引き受けてくれたんやけど、
実質騙しているようなモンなので、オレはナミコさんにお詫びの言葉を述べた。
「あの、すみません。急にもう一人泊めてもらう事になっちゃって・・・・・・」
するとレイコも食べる手を止めて言った。
「どうほふいはへん」
口に物を入れたまま喋るなっちゅうに。
そんなレイコに気を悪くするでもなく、ナミコさんはニッコリとほほ笑んで言った。
「そんな事気にしなくていいのよ。カスミのお友達がまた一人増えて、私はとっても嬉しいわ」
それに対してレイコ。
「わはひもカフミひゃんほおひりあひになれへふへひいへふ」
だから口の中のモンを飲み込めっちゅうに!
すると今度はテイコさんが、レイコに対してこう言った。
「ところで、あんたは何処に住んでんの?この近く?」
「うっ・・・・・・」
テイコさんの言葉にレイコは言葉を詰まらせ、その拍子に口の中の食べ物も喉に詰まらせた。
「ゴホッ!ガハッ!」
「だ、大丈夫?私何か変な事聞いた?」
そう言って目を丸くするテイコさん。
するとカスミが、レイコの背中をさすりながらフォローした。
「あ、大丈夫です、ちょっとむせただけみたいですから。
あとレイちゃんは、姐茂江町に住んでるんですよ」
「へぇ、ここからやと結構遠いねぇ」
テイコさんはカスミの言葉を不審に思うでもなく頷いた。
まさか今日その家を飛び出してきましたとは言えんわな。
すると今度はナミコさんが、レイコにこう言った。
「レイコさんの家は何人家族なの?」
それを聞いたレイコは、口の中の食べ物が更におかしなところに入ったらしく、
さっきよりも激しくむせかえった。
「ガッハァッ⁉ゴッホォッ!ゲッヘェッ!」
「あらやだ、私ったら聞いてはいけない事を聞いてしまったのかしら?」
むせかえるレイコを見て、申し訳なさそうな顔をするナミコさん。
そんなナミコさんにオレは、ひきつった笑みを浮かべながら言った。
「ああ、大丈夫です、慌てて食べてむせただけですから。ちなみに彼女は両親と三人で暮らしてます」
今のところはね。
まさか近々親が離婚して、一家離散になるとは言えんわな。
そんな中レイコはようやく息を整え、ナミコさんとテイコさんに言った。
「そ、そうなんです」
そう言って笑うレイコの顔は、完全にひきつっていた。
ホンマに難儀やなぁ。