3 父方の祖父が物凄いお金持ち
そんなやりとりを経て、オレとカスミは二人で屋敷を出た。
屋敷を出ると、相変わらずバカでかい庭園が目の前に広がっていた。
そのはるか向こうに見える門までたどり着くには、歩いてざっと十分くらいはかかりそうや。
でもまあ、別に急ぐ用事がある訳でもないし、カスミも体調は良いと言ってるから、
のんびり歩いて門へ向かう事にした。
「ヨシオ君、すみません」
二人で歩きだすと、カスミが申し訳なさそうに言った。
何がすみませんなのか分からないオレは、カスミに問うた。
「すみませんって、何が?」
「テイコさんの事です。あの方は、私の事となると頭に血が上るクセがあって、
それでヨシオ君にあんな事を・・・・・・」
「ああ、別に構へんがな。それだけテイコさんはお前の事を心配してるんや」
オレは右手を横に振りながらそう言ったが、
それでもカスミは申し訳なさそうな顔をするので、話題を変える事にした。
「それにしても、カスミの家ってホンマにでかいよなぁ。
カスミのご両親って、二人で相当稼いでるんやな」
するとカスミは首を横に振ってこう答えた。
「いえ、このお屋敷を建てたのは両親じゃなくて、父方の祖父なんです」
「カスミのおじいちゃんか」
「はい。私の祖父は、世界で最大手の船舶会社の会長をしていまして、
今は祖母と一緒にイタリアに住んでるんです」
「世界を股にかける大金持ちっちゅう訳かい。道理でこんなごっつい屋敷を建てられる訳や」
「でも私のお母さんは、いつもボヤいていますけどね。
『こんなだだっ広いお屋敷、出入りするだけでも大変だわ』って」
「それは確かに」
とかいう話をしているうちに、ようやくヤマトウ家の門までたどり着いた。
そしてその脇にある通用口の扉を開け、オレとカスミは屋敷の外に出た。
と、その時やった。