2 カスミはどうしてもお出かけしたい
「さて、どうしようか」
朝食を食べ終え、ナミコさんも仕事に出かけ、一息ついたところで、オレは言った。
オレはヤマトウ家に二泊する事になっている。
なので今日一日はこっちで過ごすんやけど、何をするかは全く考えてなかった。
するとそんなオレに、カスミが遠慮がちに言った。
「あ、あの、もしよろしければ、私と何処かにお出かけしませんか?」
「出かけるんか?オレは別に構へんけど」
と言いながら、オレは傍らのテイコさんを見やった。
するとテイコさんは言った。
「私は午前中はお屋敷での仕事があるから、一緒には行かれへんで?」
そしてカスミの方に向き直り、心配そうな顔でこう続けた。
「というか、お嬢様は大丈夫なのですか?昨日のアレ(・・・・・)の毒気がまだ体に残っているのでは?」
昨日のアレとは、言うまでもなくナミコさんの手作りカレーの事や。
それに対してカスミは、首を横に振って言った。
「さっきも言った通り、私の体はもう大丈夫です。だからお出かけさせてください」
「う~ん、でも、私が付き添わずにお嬢様を屋敷の外へ出す訳にはいきませんので、
それなら私の仕事がひと段落してから、三人でお出かけしましょう?」
テイコさんはそう言ったが、カスミは珍しく駄々をこねるようにこう続けた。
「私は今すぐヨシオ君とお出かけしたいんですっ」
「う~ん・・・・・・」
カスミの言葉に、困った顔で頭をかくテイコさん。
そしてオレの方に向き直り、オレの両肩にポンと手を置いてこう言った。
「しゃあない。今日の午前中は、カスミお嬢様をあんたに預けるわ」
「預けるなんて大層やな。ちょっとそこら辺に遊びに行くだけやのに」
オレが軽い口調でそう言うと、テイコさんはやにわにオレの肩に置いた手に物凄い力を入れ、
ドスの利いた声で言った。
「ちょっとそこら辺に遊びに行くだけでも、カスミお嬢様が急に体調を崩す事もあるやろ。
それに、誰か不埒な輩に誘拐されるかもしれんし」
それに対してオレはこう返す。
「イタタタ!痛い痛い!肩潰れる肩潰れる!」
テイコさんの握力は、文字通り死ぬほど強かった。
するとそれを見たカスミが、慌てて止めに入った。
「落ち着いてくださいテイコさん!私は大丈夫ですから!
ヨシオ君には迷惑をかけないようにしますから!」
するとテイコさんはしぶしぶオレの肩から手を離し、最後に一言こう言った。
「もしカスミお嬢様にもしもの事があったら、あんたのキンタマを潰すからな」
それならいっその事ひと思いに殺してください・・・・・・。