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反少年主義 第二幕  作者: 椎家 友妻
其の三 望まざる再会
20/66

1 一命は取り留めた

 ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。

 翌日の朝。

(すずめ)の鳴き声とともに、オレは目を覚ました。

どうやらオレは、一命を取り留めたみたいや。

 しかし夕べはホンマに死ぬかと思うた。

ていうか一瞬ホンマに死んだんやないかと思う。

それほどにナミコさんの作ったカレーは、破壊力が(すさ)まじかった。

あれのおかげでオレは、お母ちゃんは今のお母ちゃんでええとつくづく思ったのやった。


 やけに広い寝室を出て、夕べと同じ広間へ行くと、

ナミコさんとカスミが食卓を囲み、朝食のトーストを頬張っていた。

そしてオレの姿に気づいたナミコさんが、心配そうな顔でオレに言った。

 「おはようヨシオ君、もう体は大丈夫?」

 「ええ、もう大丈夫です、ハイ」

 オレはひきつった笑顔を浮かべながらもそう答え、カスミの隣に座る。

そしてカスミに言った。

 「お前は、大丈夫なんか?」

 「はい、もうすっかりよくなりました」

 そう言ってニコッとほほ笑むカスミ。

そのカスミに、オレは至極声をひそめてこう続けた

 「やっぱり、あのカレーが原因か?」

 それに対してカスミは、苦笑しながらコクリと小さく頷いた。

 「どうしたの二人とも?」

 そんなオレとカスミのやりとりに、ナミコさんがそう言って口を挟んできた。

 「あ、いや、今日も暑くなりそうやなぁって」

 慌てて誤魔化すオレ。

傍らのカスミも、必死にそれに頷いた。

するとナミコさんはオレの言葉を疑う様子もなく、

 「そうねぇ、夏はこれからが本番だものねぇ」

 と言い、オレとカスミにこう続けた。

 「カスミとヨシオ君も、夕べみたいに暑さ(・・)で(・)体調を崩す事がこれからもあるだろうから、

暑さ対策はちゃんとしないとだめよ?」

 どうやらこの人は、夕べオレとカスミが体調を崩したのは、

暑さのせいやと思っていらっしゃるらしい。

 『いや!違いますから!全てはあなたの手料理が原因ですから!』

と死ぬほど叫びたかったが、オレは涙とともにその言葉を飲み込んだ。

大人の世界は時として、明らかに理不尽な事でも黙って受け入れんとあかんのや。

難儀な事ですわ。



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