2 文通相手と会って来た
オレは、文通相手やった憧れのレイコさんと、とうとう直接会う事になった。
ちなみにレイコというのはペンネームで、本名はカスミという名前やった。
オレは待ち合わせ場所である近所の駅に出向き、
カスミさんが現れるのを今か今かと待ちわびた。
あの時のドキドキ感といったらなかったね。
カスミさんはどんな人なんやろうとか、会ったらまず何を話そうとか、
色んな事が頭の中をグルグル回っとった。
そしてそんな中、とうとうカスミさんが俺の前に現れた!
その人は、俺が思い描いていた通りの大人の女性やった!
めっちゃべっぴんさんで、上品で清楚な雰囲気が、全身から醸し出されていた!
その人を見た時、オレはメッチャ感動したんや!
その勢いでプロポーズの言葉まで考えた(その時考えたプロポーズの言葉『ボクと一緒に、熱海に新婚旅行に行きませんか?』)!
でも、その感動はほんの一瞬で終わった。
最初に現れた女性は『ナミコ』という人で、カスミさんではなかったんや。
そしてその後に現れたのが、カスミさんやった。
ちなみに、オレの目の前に現れたカスミという人物は、
九歳の女の子やった。
青汁かっ!(いや、キューサイだけに)
そう、俺が大人の女性やと思って文通しとった相手は、まだ十歳にも満たない女の子やったのや。
まあ、四十過ぎのおっちゃんやなかっただけまだマシやけど、
それでもオレのショックはとてつもなく大きかった。
オレは一体何のために、反少年主義を掲げて今まで頑張ってきたんや?
告白してフラれるならまだしも、俺が片思いをしていた相手が、
そもそもこの世に存在してなかったやなんて・・・・・・・。
その出来事以来、オレの中にポッカリと穴が開いてしもうた。
そして何もかもがどうでもよくなり、こんな事を考えるようになったのや。
オレ、何のために生きてるんやろう?
ちなみに昨日オレのお母ちゃんに、人は何故生きなければならないのかを聞いてみた。
それに対するお母ちゃんの答えはこうやった。
『生きてないとおいしい物が食べられへん』
これを聞いたオレは、何で女の人は全体的に男より長生きするのかを悟った。
そして同時に、こんなくだらん事でウジウジ悩む自分がアホらしくなった。
でもやっぱり、オレの心は沈んだままやった。
この沈んだ気持ちは、当分浮かび上がってきそうにはない。
もしかしたら、もう一生浮かんでけぇへんのかもしらん。
ああ、夏休みはまだ始まったばかりやというのに、
オレはこれから、何を糧に生きていけばええんや。
もういっそこのまま、どっかに消えてしまいたい。
でも死ぬのは嫌やし、そうなると、やっぱり生きていかんとあかんのや。
死ぬのは嫌やけど生きるのもしんどい。
何とも難儀なこっちゃ。
でもホンマに難儀なのは、オレのこのひねくれた根性なんやろうけど。