6 カレーライス
「さあみんな、召し上がれ♡」
女神のように優しくて美しい笑みを浮かべ、
ナミコさんは食卓に座るオレ、カスミ、テイコさんにそう言った。
そんなオレ達の目の前に、ナミコさんお手製のオリジナルカレー(?)が置かれている。
ちなみに皆さんは『カレー』と聞くと、どういう物を想像するやろう?
最も一般的なのは、お肉とじゃがいもとニンジンとタマネギが入った、茶色いルーのカレーや。
この他に、カツやチーズがトッピングで入っていたり、ルーの色が黒やら赤といったものもある。
でも、今オレの目の前に出されたそれは、オレが今まで見てきたカレーとは、全く違ったものやった。
具体的に何が違うかと言うと、カレーのルーの色が、紫やった。
それはもう見事なまでに紫やった。
ナスが具として入ってるカレーはあるけど、ルーの色そのものがナス色のカレーは初めてや。
まるで紫のペンキをそのままルーとして使ったようにも見えるけど、
このルーには一体どんなスパイスが入っているのやろう?
そしてそのルーに入っている具も凄い。
一体何かと言うと、さっきナミコさんが持っていたビニール袋に入っていた、あの巨大トカゲ。
それが丸焼きにされてそのままドンとカレーに乗っていた。
可愛そうなトカゲ。
まさか自分がカレーの具にされるとは、夢にも思わんかったやろう。
オレもまさか、トカゲをカレーの具として食べる日が来るとは思わなんだ。
こんなトカゲ、何処のスーパーで買えるの?
食用?
そしてこのカレー(?)が他のそれと最も違う点は、
そのルーから放たれる独特の香り(臭気とも言う)やった。
カレーというのは色んな種類があるけど、匂いをかぐと、
『あ、これはカレーやな』というのが大体分かる。
が、このカレー(?)の匂いは、何というか、例えて言うなら、
ガムテープとタイヤとおっさんの使用済み靴下とを混ぜ合わせ、
それに青カビを生やして発酵させたような匂い、とでも言おうか。
まあ要するに、よだれが垂れてお腹が鳴るような匂いではなく、
吐き気をもよおしてめまいがするような匂いなのや。
そんなナミコさんのお手製カレーに対する、オレの最大の疑問はこれやった。
これ、食べても大丈夫なんか?
と、その時やった。