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反少年主義 第二幕  作者: 椎家 友妻
其の二 ヤマトウ家のもてなし
15/66

5 カレーを作る音

 グシャアッ!

 バキィッ!

 ドカドカァッ!

 ボッコォッ!

 ペキペキペキィッ!


 何やら物凄い音が、ヤマトウ家の屋敷に響き渡っていた。

これは一体何の音なのかというと、ナミコさんがキッチンにこもり、

今日の夕飯の『カレーライス』という料理を作っている音やった。

 その音を、オレとカスミとテイコさんの三人は、隣の食堂の食卓を囲みながら聞いている。

ていうか、カレーを作るのに何であんな音が聞こえてくるんやろう?

オレは隣に座るテイコさんに尋ねた。

 「あの~、ナミコおばさんは今、キッチンで何をしてるんですか?」

 するとテイコさんは、額に冷や汗を浮かべながら答えた。

 「キッチンで、カレーを作ってらっしゃるんや」

 「カレーを作ってるんですよね?それやったら、

『トントン』とか『グツグツ』とかいう音が聞こえてくるのと違いますか?」

 「奥様の作るカレーはな、他とはちょっと(・・・・)だけ(・・)違うんや」

 「ちょっと(・・・・)だけ(・・)ですか?かなり違う気がするんですけど。しかもかなり危険な感じがするんですけど」

 「まあ、そう言えなくはない・・・・・・」

 「オレ、ちょっとキッチンを覗いてきてもいいですか?」

 「それはあかん!」

 「な、何でですか?」

 「奥様はな、ご自分で料理をなさる時は、絶対に他の人間をキッチンに入れへんのや」

 「それ、メチャクチャ危険やないですか・・・・・・」

 そんなやりとりをする中、オレは正面に座るカスミの顔色が、やけに青ざめている事に気がついた。

 「おいカスミ、何かしんどそうやけど、大丈夫か?」

 オレがそう声をかけると、カスミはしんどそうにしながらも笑みを浮かべて言った。

 「大丈夫です。ちょっとめまいがしただけですから・・・・・・」

 「それはあんまり大丈夫とちゃうんとちゃうか?無理せんと横になったらどうや?」

 「お嬢様はな、奥様が手料理を作ってくださる日は、決まって体調が悪くなるんや」

 オレの言葉に、テイコさんが神妙な口調で言った。

ていう事はつまり、カスミの体調が悪くなったのは、ナミコさんの料理のせいっちゅう事やないか。

ていうか、カスミが病気がちな体質なんも、もしかしてそれが原因なのでは?

 と、ナミコさんの料理に対する不安が一層募(つの)った、その時やった。


 ちゅどーん!


 と、今までよりもひと際大きな爆音が、ナミコさんの居るキッチンから聞こえた。

 「な、何や何や⁉」

 思わずそう叫んで立ち上がるオレ。

するとその直後、キッチンからナミコさんの声が聞こえてきた。

その内容は、次のようなモンやった。

 「出来たわ!」

 どうやらあの爆音は、料理の仕上げの音やったらしい。

一体どんな料理ができたんやろう?

 とうとうナミコさんのお手製カレーライスが完成してしまった。

この後それを食べる訳やけども、果たしてオレ達はその料理を食べて、

生きたまま明日を迎える事ができるんやろうか?

 オレ達の運命をかけた夕食会が、始まろうとしていた!

 ・・・・・・もう帰らせてください・・・・・・。



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