四話 敗北者じゃけぇ
俺の絶叫した直後にロリっ娘がまた一時停止してくれた。
良い配慮だけど今はそんな事ではない。
待て待て待て待て。
「そんなことあって良いのか?、そんなことあって良いのか。こんなことありえるん?なぁ?こんなことって」
まさか救急車に轢き殺されるなんて聞いたことない。
俺って轢き殺されるほど存在感の薄い奴だったのか小さいのか。
「慌てないで、これでもまだ死んでないから」
「我ながら不死身やな。ってやかましいわ。もう死んでるて、絶対死んどるて」
車に轢かれてから救急車にも轢き飛ばされるとはな。
「俺の身体はパチンコ玉やないんやけどやな」
これはただのオーバーキルじゃないか。
「いえ、まだ生きているわ。というかこの次のシーンで死ぬの」
「わかったよう見とく」
そう聞いてよく目を見開いてスクリーンを凝視する。
他の事故で一般人は死んでいるのに俺はコメディーキャラのようにしぶとく生きていたのだ。
そんな奴がどのように死ぬのかを見定め無ければ。
そして映像はクライマックスに差し掛かる。
救急車に飛ばされた俺はそのまま歩道の建物の看板に激突。
俺はそのままその看板が落ちてきて潰されて死ぬのだな。
しかしそんなことでは無かった。
何故なら俺の死因はまさかまさかの歩道に置いてあった鉢植えのサボテンの針に。
頭をぶっ刺して死んでしまったのだから《・・・・・・・・・・・》。
そしてスクリーンからは突如現れた心電図が現れ例の折線と共にあの音が流れる。
『ピ、ピー、ピ、ピー、ピ、ピー、ピーーーーーーーーーー』
死にかけのご老人が臨終した時の心肺停止の警音。
「………。………。………。はぁ?」
いやいやいや。
多方向すぎて、多すぎてツッコまれへん。
なんですか?俺は車に轢かれて死んだのではなく。
たかがサボテンの針に頭をぶっ刺さして死んだとかそういうオチ?
笑えない、ぜんっぜん笑えない。
少しでも面白くさせようと思って意地になってわざと伸ばしてしまってシケてしまった芸と同じくらい笑えない。
一周回りすぎて笑えなくなっている。
「これが貴方の見たがっていた死因よ。分かった?」
「サボテンで死んだんか、ふ。我ながら情け無い最後やったなぁ」
「何を勘違いしているのか知らないけどこれはサボテンじゃないわ。ユーフォビア・ピローサと言われる毒性植物の一種よ。棘から象さん何万匹と殺せる毒を持ってるんだから」
「何でそんな大量虐殺兵器がその辺の市街地に置いてあんねん」
色々とサボテン保持者に言いたい事があるけど死人に口なし。
そう言われて俺は、一気に一つの思いが込み上げてくる。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。どうせこの歳で死ぬんならもっとやりたい事やっておけば良かった。あのアクションゲームを全クリしたりとか、格闘ゲームで敵を気が済むまで叩き回したりとか、自分が今まで貯めとった金がなくなるまでソシャゲのガチャを回しまくったり、旨いもの限界まで食ってみたり彼女作って童貞卒業して美少女の膝枕の上で死にたかった。しかも俺の遺言が『あああかん』やで嫌や、変えたい。最もカッコいいセリフ言って死にたかったんや〜〜〜〜」
頭を抱えて叫び机に頭を打ち付けている俺を見ながら言う目の前のロリッ娘。
「最後の方の言葉は聞かなかった事にしてあげるけど、ええ。貴方の体は一応原型は保っているけどピチュッて死んだわ。苦しまずに一瞬でね」
そう言いながら手でベリーを潰す仕草をするロリっ娘。
いやいやいや、俺ってそんな夏に良く活動してるあのGくんのように死んだの?
他に別の表現はなかったのか。
もっとこうほら、オブラートに包んだ言い方的な?
まぁ苦しまずに死ねたのは不幸中の幸いなのか。
中には銃で撃たれたり電車に突っ込んだりなどで苦しみながら死ぬ人がいるからな。
人間誰しも苦しまずに一瞬で死にたいと思うのが普通。
それ以外はまぁあのそのあれだな。
「でもまあ陰キャの貴方の割にはカッコ良く死んだのじゃない?女の子を助けて自分は死ぬっていう自滅奉公な英雄的行動は評価してあげるわでも所詮……人生の敗北者ね」
ぴくりと今の言葉に何かが俺の心に刺さった。
俺を蔑む言葉ではなくもっと別のものに向けられた愚弄。
「敗北者?」
「ん?」
「取り消せよ、今の言葉。陰キャが人を救っちゃいけへんのか、陰キャが英断しちゃいけへんのか?陽があるのは陰があることで成立すること即ち太極、おのれら陽キャか輝けるのはなぁ、俺ら陰キャがおるから成り立ってとるって、とそう肝に銘じておけ。ロリっ娘」
目の前のロリ娘は焦りながら「怒るとこソコ?」とツッコミながらも謝罪する。
「あのごめんなさい、その少し調子に乗りました」
「ほんで良えんのでっせ。分かれば良えんやねん」
許した気に戻し腕を組んでいる俺を見てか前にいる美少女は口を開いた。
「あのこんな状況にこんな事聞くのもあれだけど心の整理はついたかしら。初めましてこんにちは、でいいのかな。まぁここでは時間の概念がないからこれでいいわよね。こほん、歌川辰政さん。私は今回貴方の死後を決め次の転生先を決める女神です。名はゼアミ。……さてさて、勇敢ある死をしたあなたには直ぐに死後を決めて貰いたいのですがよろしいですよね」
「せやな、自分の死因は知れたし、うん心が死にそうになったけど………良えで」
それにしてもゼアミ?何とも日本の音楽神らしい名前だな。
それに転生先が選べるとは、これほどない幸運だ。
定型だと大体が勝手に決められてそこで人生を終えよ、的な感じなのにな。
今ではそういう運悪い主人公が流行ってるらしいじゃないか。
俺の場合、天国へ来ただけでもラッキーということだ。
これは良い女神に出会えたとも言える。最初に言われた言葉が引っかかるが。
「ではではでは、選択肢を与えます。一つは人道に落ちていただき新たな人生を歩むか。もう一つは、畜生道に落ち、獣としてその生を謳歌するかのどちらかです」
あまり救いの少ない選択肢。
これがあれかどれ選んでもバッドエンドってか。
人間と獣ってあまり違いはないとは思うのだけれども。
と言うか転生先は六道に則っているのだとしたらやはり地獄道や修羅道もあるのか。
そうなると誰しも行きたいと思う道を問い詰めてみる。
「俺は天道の極楽行きではないんすか」
「はい。いくら一人の命を救ったとしても天道行きにはなりませんよ。少なくとも千名の命を救済をしなければなりませんし、そもそも貴方のような普通の者を最高神がいる世界に連れて行けるわけないじゃないですか、ふふーん」
ゼアミは手に持っていた団扇で口元を隠しながら大きく笑う。
恐らく心の中では爆笑しているのだろう。
全然隠しきれてないけどな、普通にモロバレなんだよ。
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