1話 まさかの死亡宣告やとぉぉぉぉぉ‼︎
「俗名歌川辰政。何の偉業も成さず、大きな悪行も働かず、つい一時間前、不幸にも享年十八年のとてつもなく短い人生に終止符が打たれました〜(棒)」
どことなく幼さを混じりながら透き通った女性の声でそう聞こえた。
いや、前言撤回。
声そのものは良いのにどこか抜けている、だらしない声だった。
「なんやこの(棒)死亡宣言セリフは、シャッキっとせんかいシャキッと」
そうでないとチ○ちゃんに「ボーと生きてんじゃねぇよ」って言われるぜ。
「だってさっき覚えたばっかり仕方ないじゃ無い。全部一言一句暗記して心を込めて音読なんてできるわけないじゃないの」
学校の先生に当てられて教科書を読まされてるじゃあるまいし。
もうちょっと心を込めて読むことはできなかったのか?
「いや、どう聞いてもアドリブやったで。明らかに自分の思うてたこと口に出しとったやろ」
絶対俺に対しての憐憫と軽蔑が混じっていると思う。
「て言うか俺死んでるのか?初耳なんじゃが?」
大体死んだ瞬間の記憶、走馬灯なるものがある。
死ぬ直前に脳が活性化して記憶が蘇るそうだ、知らんけど。
それも所詮フィクションの話なのだろう。
にしてもだな、一言余計すぎないか?
「不幸にも享年十八年のとてつもなく短い人生に終止符が打たれました」って。
「確かに酒も飲んだことないし、童貞卒業しておらん未体験ばっかの人生やったで?ほんせやけどちょっとくらいは評価してもええのでは?」
「自分で童貞とか言っちゃうの?それは置いておいて事実だし、書かれている事であまり評価が高いところが無いのよね〜」
「そこをなんとか褒めとっただいてもろて」
「0をいくらかけても0なのよ」
「そこは足すねんて。プラスアルファやろ?」
「そこツッコまれたらしょうがないわね。何か、何か無いかな?」
「ありがてぇ、ありがてえ」
「あったけど、これでいいのかしら。一応、言うけど貴方は八歳の頃木の上に降りれなくなった猫を助けました」
「うんうん」
「それと当時猫を助けようとした幼馴染の女の子も同じく落ちてきて助けたと同時に変態行為に及びました、で良いかしら」
「まさかの俺の忘れとった黒歴史の暴露」
逆にそんな事しか善行が書かれていないなんて。
我ながらつまらない人生だったよ。
何も偉業も悪行も行わなかったって。
一周回って馬鹿にしているだろ、尖りがないって言っているだろ。
声主は一体どこだ、軽くとっちめてやらなければと俺は周りを見回す。
曇りなき極光のような空間、様々な色彩が交差している場所であった。
よく目を凝らしてみると輪郭線が見えてくる。
形はよく刑事ドラマとかで映る裁判所の証言台に俺は立たされていた。
第三者目線では被告人と裁判官みたいな構図だ。
「死後の世界、っていうことはこれって最後の審判か?」
「そうよ、ここは死後の世界。詳しく言えば欲界と色界の狭間、彼岸の場所。そして貴方の業を裁定する場よ」
「あの、急に厨二病口調になるのはやめてもろて」
「だってこの台本にそう書いてあるだもの」
「みんなこないなこと言うてんのか?絶対黒歴史になりそう」
その台本の被害者の会が創設されそう。
と、まぁ。厨二病発言は置いておいて納得した。
なるほどな、飾り気の無い殺風景な所で、一切の目の楽しみもないつまらない場所。
俺は自我がある最後の裁判にかけられているのか。
ありがたく暴れられないように手錠がかけられているし。
「へぇ?」
……………俺なんか悪いことした?
確かに信号無視くらいの軽犯罪をした覚えがあるけどそれは皆んなやってる事だし。
人の物を盗んだり、壊したり、悪意で虐めたり、陰口を言ったことなんて無い。
完全な聖人君子ではないので完全善ではないが地獄行きほどの悪ではないと自負はしている。
これは神様だけではなくて全人類に誓える。
そもそもそう簡単に自分が行った悪事について思い当たる節が全くないのだ。
「ちょい待て、急に死亡宣言されてから一気に状況がわからなくなってしもた」
「そう?ちょっとだけ頭の中の整理をする時間をあげようか?」
「お、おう。ちょいと頼んますわ」
「けど、ダメ〜」
「おいふざけるな」
とうとう俺を虐め始めたぞ、この声の主。
絶対性格悪いと見た。
各宗教とは違う死後の世界、白い空間に閉じ込められて。
しかも手錠をかけられて煽り文句入りの死亡宣言。
混乱を誘う要素だらけじゃないか。
目の前には俺の人生の終わりを告げた裁判官らしき相手が座っていた。
此処は本物の裁判所とは違い本来数名いるはずの人はおらず裁判官はその一人だけだった。
一応背中から白鳥のような翼が生えた人達も並んで座っていた。
確か裁判は公平性を求められるため奇数の複数人必要ではなかったっけ?
義務教育での公民の授業は虚偽を教えていたのか。
これが義務教育の敗北か、あの世の事情なんて知らんのが普通やけど。
「って、こないなこと考えてる場合ちゃうやろ」
今はそんな事はどうでも良くて早く俺の無罪を主張しないと。
もしかしたら地獄行きになるかもしれない。
悪事を働いていないのに苦痛の煉獄行きは嫌だ。
俺は目の前の裁判官らしき人の方にジッと真面目な顔で向く。
しかし無罪主張を忘れてその裁判官らしき相手に釘付けになってしまった。
もしこの世に女神という概念を体現するものがあるというのならば。
………恐らく目の前の人物の事を言うのだろう。
人類史において数多くの芸術家が一度は描いてみたいという、美の頂点。
美しい、魅せる、芳しいの文字が擬人化したかのような。
歳は俺より年下なのだろう、机の高さに対して上半身が短いように見える。
これは俺の予想なのだが、絶対小学生用のシートを使っていそう。
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