悪役令嬢の仲間
久しぶりの投稿です
煌びやかな内装に盛大な料理。いかにもなパーティ会場の真ん中で人目を集める集団がいる。
華やかな服装に身を包んだ人々は冷ややかに彼らを見つめていた。
「…もう我慢の限界だ!アルミナ・グラノーゼ、貴様との婚約を破棄させていただく!今日から私の婚約者はセフィアだ!!」
普段なら金髪碧眼で見るものを魅了するカイザール帝国の王子、ハーフフィルムはその顔を歪め怒鳴っていて、その隣には悲しそうに、だが満更でもない顔で寄り添う少女が見える。
正面に無表情で立っているとても綺麗な女性が毅然とした態度で話しかける。
「何が我慢の限界なのでしょうか」
「開き直るつもりか!貴様はセフィアに悪質な虐めをしたそうではないか!」
……そして私、サラ・ルーマンはその茶番に付き合わせられた人の一人として傍観していた。
一人、ハラハラドキドキしながら。
いや、言い方が少し悪かった。この茶番がどう収まるのかハラハラドキドキしているのではなく、実際に乙女ゲームの世界でイベントを見れた事にドキドキ興奮しているのだ。
時は遡って数年前。私は親友のゲテモノ料理を食べた時のショックにより前世の記憶を手に入れた。
前世の私は生粋の乙女ゲームオタクらしく、その中でも一番はまった乙女ゲーム、『星を宿す者達』がこの世界らしいのだ。
いやー最初はついにゲテモノ料理が体に当たって可笑しくなったと思ったよ?
会った事もない王子の顔が分かったりその生い立ちやスリーサイズ、幼少期の黒歴史まで分かるんだから。
まあ、そんな事はどうでもよくて、今はこのイベントがどう終わるのかが重要だ。
あ、いや、別に王子が、タイプとかじゃないよ。
『星を宿す者達』というゲームは乙女ゲームでは珍しい悪役令嬢が主人公のゲームだった。外交官の娘として帝国に赴いたセフィアは隣国の間諜で、婚約者の王子を誑かす。王子は残念な事に少女趣味で一気に恋に落ちてしまう。
そして王子は婚約破棄を言い渡すという…王子は結果的に廃嫡にされ、腹違いの兄が皇帝になるんだっけな。
まあ、王子の設定が残念なのを除けばあるあるなストーリーよね。
まさに今行われているこれがその婚約破棄場面であるのだが…だが、しかし!これはオープニングである。
王子は当て馬でもなくまあ一応名前はつけとこうかレベルの端役。ここから悪役令嬢は冤罪で遠くの国に捨てられ、そこで様々な仲間と出会い、下克上をはかり世界征服を目指す。
内政、戦闘、恋愛が混ざりに混ざった面白いゲームだった。
そのゲームの世界に居るなら堪能しなきゃ駄目だよね!
私はそんな回想をしながらとある事を胸に秘め、茶番が終わるのを待っていた。
「そんな事はしていませんわ。証拠はありますの?」
「ふん。残念な事だろうが目撃者が多数居てな!父上!承諾して頂けますよね?」
「はぁ…愚かな息子だ。まさか建国記念のパーティーでこんな事を言うとは。婚約破棄を認めよう」
「!!!」
「ありがとうございます!やったな、セフィア」
「ええ。嬉しいわ」
「…承りました。では、失礼致します」
驚愕する観衆と二人だけの世界を醸し出している二人を置いてアルミナは一人、退室して行った。
その後、アルミナの両親は利用価値の無くなり、家に泥を塗った彼女を無かった事にしようとし密かに遠くの国へ馬車を出した。
馬車の中。女性は一人で静かに涙を流していた。
「こんなに警備を固めなくても逃げないのに。……私の何がいけなかったのでしょう」
「うーん、少女じゃなかった事じゃないですかね?」
自分の味方などここにはいないはずなのにいきなり御者にフランクに話しかけられ、馬車の中の女性は驚きのあまり声をあげる。恐る恐る御者に近づくと御者はフードを雑に取り払い、アルミナに振り返った。
「どうも、こんにちは。サラ・ルーマンです。旅のお供に来ました」
「え!?は、えっと、サラ?!」
「うん。寂しいかなっておもって、来ちゃった」
「来ちゃったじゃないでしょ!ご両親は今ごろ貴女を探しているわよ」
「ちゃんと説得したから大丈夫。アルミナだけじゃ心配でしょ」
「か、帰りなさいよ!心配なんかいらないわ。私一人で大丈夫よ」
そうはいっても彼女の頬には涙の跡がまざまざと残り、声は震えてる。それを指摘すると彼女は可愛らしく否定する。
「そ、れはだって一人になったら気が抜けただけよ」
「うんうん。あー早く着かないかなー。お米っていう食べ物が名物らしいよ」
「へぇ、それは興味深いわね…ってそうではなくて」
「もう降りるの無理だよ。私がいなかったらこの馬車の御者だれがやるのよ。アルミナ、責任とって」
「はぁー分かったわ。好きにしなさい」
「はーい」
ガタガタと馬車の音が聞こえる
「____ついてきてくれてありがとう」
「…ならもうゲテモノ料理を作らないでね」
そのせいで貴女について来るはめになったんだから
そう私は呟いた
ここまでお読みくださってありがとうございました




