⑥
「こりゃあ上玉のメイドだな。レオ、お前の知り合いか?もしかしてその巨乳メイドと妹を交換してほしいってことか?」
「そんなわけねーだろ!物を盗めば妹を返してくれる
約束のはずだ!このわけわかんねーメイドは関係ない、たまたま居合わせただけだ」
少年はそう言って慌ててソフィアを庇うが、ソフィアはニコッと笑みを浮かべレオを見返した。
「あのー……妹さんを返してあげてください」
ソフィアは優しく不良兄弟にお願いをする。
「いいけどよォ、その代わり、分かってるよなァ?」
「はい」
ソフィアはにこりと笑顔のまま頷いた。その姿にレオは焦りの表情を見せる。
「おい、状況わかってんのかよあんた」
「ふふ、そういえばレオ君っていうんですね、お名前聞きそびれちゃってて気になってたんです」
「いやこの状況で何を呑気に……名前なんてどうでもいいだろ。早く逃げろよ」
レオはソフィアを逃そうとするが、ソフィアは静かに首を横に振ってレオの前に立つ。レオはソフィアの行動に驚きを隠せずにいた。
「なにやって……」
「私が交換の材料になるなら、喜んで」
ソフィアが前に出てきたことによって、不良兄弟は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「いーじゃねえか、交渉成立ってことで!レオの妹はまだ10歳そこらだし。ガキすぎてヤる気にならねえよなァ」
「そうか?兄貴はそうかもしんねーけどー俺ァわりといけるぜ。たぶん。ガッハハハハ!」
不良兄弟の下衆な発言と下品な笑い声に、ソフィアはピクリと眉を顰める。
「クソ野郎が……」
怒りが限界に達したレオは、不良兄弟に殴りかかろうとするが、ソフィアがそれを静止した。そして、虫も殺さなさそうな微笑みを不良兄弟に向ける。
「妹さんはどちらに?」
「ついてきな、巨乳のメイドさん」
下心が丸見えな不良兄弟の後をついていく道中、レオはソフィアに小声で話しかける。
「おい、なんのつもりだよ。悪い事は言わないから逃げた方がいい」
「いいえ、妹さんが危険な目に遭っているのなら、助けるべきです。あの2人の様子をみると、女の子を素直に返してくれるとは思いませんし」
「だからって……」
「言ったでしょう?私、少し魔法が得意なんです。なんとかなります」
ソフィアは凛とした表情でレオに返答すると、底知れぬ彼女の強さを感じたレオは目を見開いた。
少しソフィアを信頼したのか、レオは静かに耳打ちをする。
「あの兄のほうが、結構強い。腰にかけてる星石銃あるだろ?あれを自在に操るんだ。そんなんだから取り巻きも多くて、ゼオル兄弟はこの辺じゃ有名なボスなんだ」
「そうなんですか?街から離れて住んでいるので、そんな噂聞いたことありませんでした。尚更、妹さんを取り返しましょう」
ソフィアは一呼吸置き、ネックレスを取り出すと意を決した表情を浮かべて前を見据える。
「小さな女の子を誘拐するなんて、下劣な男共には制裁が必要ですよ」
胸元に光るソフィアのネックレスを見たレオ。
「それ、星石?」
「いいえ、レオ君が持っているそれと一緒です」
「え、じゃあ……」
ソフィアは人差し指をレオの口に当て、内緒ですよと囁きレオに笑顔を向けた。一瞬顔を赤らめたレオだったが、不良兄弟が会話に気づきこちらを振り返る。