時計は決して止まらない
テーマ
時計、廃墟都市、人間
私は今日、ある廃墟都市に足を踏み入れた。いや、都市と云うにはささやかもしれない。どちらかといえば廃村だろう。村の至る所は雑草という雑草で生い茂っている、歩きにくいことこの上ない。
日が暮れ、草をかき分け、途方に暮れて、遂に私は一件の家に辿り着いた。郵便受けはチラシや封筒でいっぱいになっている。誰も整理をしないということは、もはや誰も人間は住んでいないのだろう。
私は扉に手をかけた、鍵ははかかっていないらしい。扉を開け放つと床を数匹の虫が這い回っている。ゴキブリだ、気分が悪い。
家の中を観察してみると、ここの元住人はだいぶ多趣味な人間だったようだ。インテリアや壁紙にもこだわりを感じる。釣竿に虫あみまである。どれもこれも風化し、ボロボロではあるが。
書類の角が飛び出している引き出しを開けてみる。何の書類かと思えば、どうやら借用書のようだ。全て返済済みにはなっているが、住人はとんでもない借金をして家を増築していたらしい。無計画な人間なのか、悪徳な金貸しでもいたのか。
私は鏡を見つけた。
覗き込むとそこには、ボサボサの髪をした男が映っている。この家の住人が、この廃村の村長である私が一人、映っている。
そう、ここは3DS版「飛び出せ 動物の森」の世界。私は中古で安く買ってきたこのゲームソフトを人のデータで遊んでいるのだ。
どんな世界も時間は、時計は止まらない。飽きてしまっても、売り払ってしまっても。たまには貴方の村と家、住人たちのことを思い出してあげてください。
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