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月、悪魔、万年筆

 月、悪魔、万年筆


「ーーやってしまった」


 私の目の前には、ポッキリと真っ二つに折れた万年筆がある。ママが大切にしていたものだったのに、私はなんてことをしてしまったのだと頭を抱えてしまう。一体全体、なぜこんなことになってしまったのか、時間を遡って思い返してみる。


 私、城島譲(ジョウシマユズル)は今年の春に高校へ入学したばかりの女子高生である。親しい友達からは名前の読み方を変え、苗字と合わせてジョジョって呼ばせようとしている。入学後の自己紹介でそうお願いしたのにジョジョって読んでくれる友達はまだいない、寂しい。

 そう、お察しの通り私はジョジョの奇妙な冒険が好きなのである。ジョジョが好きな女子は彼氏の影響であるとよく言われるが、私は自らこの道に染まった。彼氏の影響でジョジョ好きになる女子はいるのに、最初からジョジョが好きな女子には彼氏が出来ない気がする、私を含めて。これ如何に。


 そんな私は今日も今日とてジョジョの奇妙な冒険ごっこに勤しんでいたのである。

 第三部スターダストクルセイダースの世界へ私は没入していた。具体的に言えば、花京院が操っていた学校の保健医が錯乱して体温計と間違えて万年筆を振り回すシーンを一人で演じていた。


「振って目もりをもどしてるんじゃないのッ!」


 ガンッ!


「ガボっ!?」


 そして話は冒頭に巻戻(バイツァ・ダスト)……


「どうしよう……うちのママは守ってあげたいと思う、元気なあたたかな笑顔が見たいと思うような、そばにいるとホッとする気持ちになるような優しい人間ではないというに……」


 後悔の気持ちで押しつぶされそうな私は腕時計の秒針を巻き戻す。何も起こらない、ここが女の世界だからだろうか。スタンド使いてえ。


 その時、階段をゆっくりと誰かが昇る音が私の耳へと届いた。ゴゴゴという効果音が頭の奥で響く。


「ヤバイ……ママが来る!」


 以前も悪魔の暗示のスタンド『エボニーデビル』ごっこをママのお人形でやっていたらゲンコツをされたんだ。大切な万年筆を壊したなんて知られたらどうなることやら。


「さっきすごい音がしたけれど何かあったの?」


 ドアを開くや否やこの発言。くっ、思春期の娘の部屋へノックもせずに入るんじゃあないよ! 咄嗟に万年筆は机に隠したから見られてはいないよね……?


「音? そんなのしたかなあ」

「何か誤魔化してるでしょう? あなたは嘘を吐く時に鼻の血管が浮き出るんだからすぐにわかるのよ」

「嘘でしょう!?」


 私は思わず自分の鼻を触る。


「ええ嘘よ、だけどマヌケは見つかったようね。机の中身を見せなさい」


 ジョジョネタ! 乗らずにはいられない! そんな私の習性を利用したママは私の机を漁り、壊れた万年筆を発見するのだった。よりにもよって、月の暗示のスタンド『ダークブルームーン』ネタだなんてスルーできないよ!


「晩ご飯抜き」

「wry……」


 私の奇妙な冒険第一部! 完!

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