クールな視線でぶっとばせ!
MWAMさいたまス-パーアリーナでハリキリすぎて全身筋肉痛。
Fly Again イエー イエオ
Fly Again イエー イエオ
Fly Again イエー イエー
Fly Again イエー イエッエッエッエッエ・・・
そう、あの日も今日みたいな風が強く吹いていて、花粉だか粉塵だかが舞ってたっけ。
空は低く鉛の様で、じっと目を開けてると痛かった。
ふいに目をこすりながら突っ立ってるオレに声を掛けてきたんだよな。
「ちょっとええかな? キミ、持っとるやろ?」
「ん?」
薄目を開けて見ると、眼鏡のいかにも勉強ができますって感じの爽やかな優男。
「完全に持っとる目や」
「オレが? 何を?」
「タバコ、持っとるか?」
「い、いきなり!?」
この眼鏡はいきなりナニを言いやがる。
「キミは持っとるやろ? 見た目が本田圭祐やん。持っとる感じするわ」
「え、サッカーの? あのサッカーの本田にぃ? オレそんなの言われたの初めて」
「お世辞ちゃうよ。その目は持っとる目や」
そんな事を言われたら誰だって悪い気はしない。
「ああ、あるけど、ソレがなにか?」と、オレ。
「1本くれへんかなぁ?」
「ええよ」
オレは上機嫌で内ポケットからをホープ・スーパーライトを取り出しソイツに1本あげ、尚且つ手際よくライターで火も付けてやった。火力は最大なので眼鏡のやつ目を丸くしやがった。
「……ホープに改造ジッポライターか。あんたシブいわ」と、眼鏡はうまそうに煙を吹き出した。
オレもシブいタバコをくわえ、シブいジッポライターで得意げに火を付けた。
「アメリカ村で買ったんだ」
「アメリカやのぉてアメリカ村かい。うん、やっぱりシブいわぁ」
まぁな、とオレはうなずいた。
こうして、二人で煙草をふかす。気分はストーンズのキース・リチャーズだ。
ふと、気がつくとまわりのヤツラがやけに俺達を見ている。
オレは調子に乗って、ナニ見てんだぁ!? シバクぞ! と、イキった。我ながらカッコイイと思いほくそ笑んだ。
ふいに眼鏡が叫んだ。
「おまえ! 逃げるでぇ!」
眼鏡がタバコを投げ捨て走り去る。おいおい、まだ吸えるだろぉ~と、オレはソイツの投げたタバコを目で追った。風に吹かれタバコは道路に、そして行き交う車の中を抜けていった。さらさらと木々が音を立て、遠くのほうから誰かの叫び声が聞こえた。まるで猟犬が獲物を追い立てる様なそんな声だった。ふと、眼鏡をさがす。もう、ソイツはかなり遠くまで走っていて、オレはその後ろ姿をぼぉーっと見ていた。美しいフォームだった。完璧な去り姿っていうのはこういう事を言うんだなって、オレは心の中でちょい笑ったね。が、次の瞬間、オレの体は強い力で地面に押さえつけられた。
「堂々とやってくれたのぉ! オノレェ!」
スーツを着た大男がオレを羽交い絞めにして圧し掛かった。周りで女子の悲鳴が聞こえた。
それは、そうだ。
俺が立ってたのは高校の校門前で、しかも今日は入学式。なにしろオレはこれからこの高校に入るんだった。
そうしてオレは入学式前から、あの鬼の生徒指導城島先生の極上の寝技を食らう運びとなった。
クラスメートに会う事無く、いきなり停学という最低なオレの高校生活がこうして始まった……
あれから丁度一年が経った。今、オレは校門前で『持っていそうなヤツ』を捜している。
校門の前でぼーっと校舎を眺めるボサボサの髪の毛、目をしきりにこするその新入生をオレは見逃さなかった。
「ちょっとイイかな? キミ、持ってるだろ?」
「ん?」
そいつが薄目を開けてオレを見た。
オレは腕組をしている。その左腕には『風紀委員会』の腕章が風にはためいていた。
そして、オレの隣には昨年ここで逃げ出した眼鏡――三年一組星エーメイ先輩が「間違いないわ」と、うなずいた。そう、コイツが『風紀委員会』悪の風紀委員会委員長だった。
喫煙は二十歳からです。未成年は喫煙ダメ、ゼッタイ!
加速された文化のための物語を書きたい。