3.大事な事を決心中
「という事がありまして」
「お前ら難儀な事になってるな」
悠犀と謎の電話を終えてから、彼に再び電話をする勇気がない私は蒼汰を呼び出した。
好敵手の蒼汰に話すのもどうかと思ったけど、やはりこんな話を出来るのは彼しかいないと思ったのだ。
缶コーヒーを飲みながら、眉間に皺を寄せている。
「とりあえず、悠犀に好きって言え」
「どうしていきなり」
「お前は言葉が足りない。悠犀もだが。お前らは話をきちんとした方が良い」
「ん……そう、なのかしら」
「思っている以上に自分の気持ちってのは、相手に伝わってないんだ。特に、悠犀に関してはもっと露骨に自分の気持ちを露呈する事を勧める」
「したところで……ううん。何でもないです。分かった、話してみるよ」
そうしなきゃ、この現状、何も解決されないような気がするし。
しかし、なんて話を切り出すべきか。やはり相手の気持ちを汲んだ上で話を進めていくべきだよね。ならば。
「確認なんだけど、蒼汰は悠犀の事……その、恋愛対象としては見て……ないわよね?」
そうと言ってくれ。ここで否定されたら私、明日から生きていく術を見失うから!
「当たり前だろ。俺は悠犀の幼馴染みで、友達で……好きな奴と幸せになれればいいと思っている」
あぁ、そうか。蒼汰はこういう人だ。
誰かの幸せを願える人だ。だから私は、もし悠犀が蒼汰を好きなら応援しようと思ったのだ。だって、蒼汰なら悠犀を幸せに出来ると思ったから。
……男同士だけど。
「ありがとう」
「お前に礼を言われる意味が分からない」
「えへへ。蒼汰に好きになってもらえる人はきっと幸せになれるんだね」
私がげへげへ笑っていると、なんとなく気まずそうに顔を逸らす。その横顔はそこはかとなく、赤くなってるような気がした。
「私も蒼汰の幸せ願ってるよ」
「その恥ずかしい台詞やめろ……」
呆れたようにため息をつく蒼汰はさっきより少しだけ深刻な顔をしていた。
プルルルル、プルルルル。
時は変わりその日の夕方。私は気持ちを万全の状態にして、その時を迎えた。
今日は悠犀のバイトはお休みの筈。この時間なら電話に出てくれる筈。
ドキドキする心臓を押さえながら、スマホを握るとプツっという音の後に悠犀の声が聞こえてきた。
「もしもし……」
「あ、悠犀? 私、瑠歌だよ」
「うん……どうしたの?」
「あの、悠犀。私、貴方に話があって……今から会えないかな?」
「話? 何の?」
電話越しに聞こえてくる声は、いつもよりなんだか冷たい。顔が見えないからそう感じるのだろうか。
「えっと……大事な話」
私は思い切ってそう伝えると、悠犀は少しの間の後、分かったと言った。場所は私の家。悠犀の家だといつ蒼汰が帰ってくるか分からないし。出来るだけ、修羅場になるのは避けたい。
一時間後、私の家に悠犀が来る事になり、電話は切れた。