表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1.浮気相手と会話中

なにも考えずにさらりと読める恋愛小説、を目指しました。どうぞお付き合い下さいませ。



「だから、誤解だ。お前が思っているような事は何もない」

「嘘。だって、思い当たる節がありすぎる。そんなの信じられない」

「……なら勝手にしろ。とにかく、俺は嘘は言ってない」

くるりと後ろを向いて背中を見せる蒼汰。ちょっと待って、話はまだ終わっていない。

蒼汰(そうた)! 待ってよ! まだ話し足りないぃ!」

「これ以上、俺と話しても埒が明かないだけだろ。そういう事は、悠犀と話せ」

「正面切ってフラれろっていうの!?」

「だから! 誤解を解けと言っているんだ!」


大学の講義の後、人が少なくなってきた講堂の中。

私と蒼汰は人目も憚らず言い合いをしていた。蒼汰はあまり声を荒げるタイプではないので、近くにいた蒼汰の友達がびっくりしてこちらを見ている。


きみきみ、見世物じゃあないぞと言ってやりたい。そもそも、こんな話聞かれたら私だけじゃなく、蒼汰や悠犀の沽券にも関わる。

私は二人を傷付けたくてやっているわけじゃないんだから。


「……悠犀(ゆうせい)にはまだ何も聞いてないんだな?」

「聞けるわけないじゃない。そんな事。そんな……」

考えただけで、目がじわりと熱くなる。

考えたくもない、想像もしたくない。でも、そうだったらという可能性を考えるだけで心が痛い。

「絶対、悠犀は蒼汰の事好きなんだから……」

「はぁ……どうしてそうなる」

「だって、この間だってほら。蒼汰、熱出したでしょ?」


それは先々週の日曜日。僭越ながら悠犀とお付き合いをしている私は、その日デートの約束をしていた。悠犀は学校の近くのスイミングクラブでバイトをしている。そのため、デート出来るタイミングも回数も限られていた。

それでも私は構わなかった。水泳が好きな悠犀はバイトをとても楽しそうにしていたし、嬉しそうにその話をする悠犀も私は大好きだった。

おっと、話がずれてしまった。

とにかくその日、私は悠犀とデートの約束をしていたのだ。しかし、その日デートをする事は叶わなかった。


何故なら。

プルルルル。


『もしもし? 悠犀?』

瑠歌(るか)。ごめんね、朝早くに』

『んーん。今日、悠犀とお出かけだから早く起きてたの』

『……』

『悠犀?』

『ごめんっ! 今日行けなくなった!』

『へ……へっ!?』

『本当にごめんっ! 理由は色々あるんだけど、えーと、その……わっ! そうたっ、寝てなきゃダメだって!』


その時の私の心境。頭にタライが落ちてきた、みたいな。


『ごめん、瑠歌! また後で連絡する! 今日は本当にごめん!』


ガチャ、ツーツー……。

これが、私と悠犀が交わした会話。デート直前の私達の電話だ。


「確かにあの日、俺は高熱を出していた。一緒に住んでいる悠犀に迷惑もかけたと思っている」

「悠犀は優しいもの。熱を出した幼馴染みを放っておくなんて出来ない、……ううん、ごめん、違うの」

「違う?」

「蒼汰を責めたいんじゃないの。そういうんじゃなくて……ただ」

やはり、不安なのだ。昔からの友達で幼馴染みで、家賃が安いからって理由で。

大学生で、一緒に住むって……。


「いやああ……! 悠犀が、私の悠犀が……!」

「いきなり叫ぶな。とにかく、俺は悠犀の幼馴染みだし友達だ。それにあいつは……」

「いや! それ以上言わないで。聞くのが怖い」

「はぁ……もう後は悠犀と話せ。この間のデートはじゃまして悪かったとは思っている。じゃあな」


そう言って、蒼汰は講堂から出て行ってしまった。胸の奥につかえるわだかまり。これを解消するには、悠犀と話すしかない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ