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1 昔のはなし
私は、親の仕事の影響で、今まで海外にいた。
初めは、言語の壁があったせいで、学校の友達なんて一人もいなかった。
だけど、そのおかげで人間観察がたくさんできた。
気弱な子が意地悪な子にいじめられて、ある日 突然 反撃をしたところを見たときは、本当に驚いた。
人間って、こんなに急に変われるものなのか、と。
その気弱だった女の子が気になり、私は英語を全力で学んだ。
初めてその子に英語で話しかけたとき、その女の子は笑った。
『白咲 華澄……。貴女、あのときよりも前から、いつも私とメルクを見ていたね』
怒られるだろうか。
そう思って、申し訳なさそうな顔で謝ろうとすると、女の子は言った。
『友達、いないんでしょう? 私も、同じなの。見ていたら、わかるよね?』
その話し方は、気の弱かったあの頃とは違い、ゆったりとした話し方で……。
まるで、私の憧れた、悪女のようだった。
その日、私と彼女、リリア・ストーリアは、友達となった。
お互いの秘密を打ち明け合って。