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灰色の花  作者:
12/12

11 母と父

リリアの母と父は、やはり美しい顔をしていた。

リリアの母である、ノア・ストーリアは、大人の余裕を含ませた、どこか色気のある表情で微笑む。男女共に、その笑みに見とれてしまう。

リリアの父は、ダンディなおじさま、という印象が強く、実際はコーヒーなんてものは飲めなくて、ジュースが大好きなのだ、と笑いながら言われた時は、そのギャップに、不覚にもときめいてしまった。

渋い声で、外見もダンディなおじさま。

「……アレン・ストーリア」とだけ言ったのは、ただの人見知りのせいであり、クールなおじさまだからではなかった。

あぁ、いけない。いつまでもこんなこと考えていたら失礼よね。

なんて、お嬢様言葉になってしまうが、とにかくリリアの家族は美しいのだ。

そんな美しい家族と、今日は共に過ごします。つまり、お泊まりをするのです。


リリアの部屋に行き、家族について聞けば、リリアには兄がいて、ルイスという名前であることを教えてもらった。

現在は、日本にいることも教えてもらい、私はルイスお兄さん? に興味がわいた。

しかし、リリアはそれ以上は兄の話を続けず、とある小説を出した。

私とリリアを繋ぐ、1冊の本。

現在も、2巻、3巻、と続く悪女小説。


『あなたも、読んでるのよね? この……悪女は眠る、という本』


私たちが好きな本の題名は、〝悪女は眠る〟というもの。

まだ主人公は眠らないし、全部の男の人を虜にしたわけでもない。

まだまだこの物語は続くのだろう。


『ええ、読んでいるわ。それが……どうしたの?』

私がそう言うと、リリアは私に近寄り、耳元で言った。


『私たち、きっと似ているのね。この小説の主人公に憧れたんでしょう?』


にっこりと笑いながら、リリアはソファに座った。

私も笑い返し、頷いた。


『ねぇ。私ね、日本に行きたいの』


突然、リリアは真剣な表情になって、壁にかけてある家族写真を見ながら言った。

……日本? もしかして?


『ルイス兄さんのところに、行きたくて』


そう話す彼女は、少し辛そうな顔をした。

私は、リリアの肩に手を置いた。


『なにか、あったんだね。ねぇ、私たちは似ているのでしょう? だったら、分かり合えると思うの。話してみない? あなたの悩みや苦しみを、全部』


私が優しく言うと、リリアは涙を一粒落とした。

ありがとう、あなたは本当に……私と似ているのね。

と、皮肉を言いながら、彼女は笑った。

お互いに気づいているのだ。

相手が、嘘をついていることを。

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