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灰色の花  作者:
10/12

9 全力

「白咲さん、すごいね。もうこんなに英語覚えたんだ」


ノエル騒動から、約一週間がたった。

相変わらず私は、先生に英語を教えてもらっていた。

それだけではなけ、自宅でもほぼ寝ないで勉強していたため、後は実践のみとなった。

まだわからない文法も、単語も多かったが、大体はわかるようになったので、あとは話すだけ。

飲み込みが早いね。とは、昔からよく言われていたので、先生の言葉に特に照れる素振りはせず、お礼を言った。


「これで、あの子とも話せるんじゃないかな」


私は目を見開いて、戸崎先生を見た。

この先生は、何もかも知っている。そんな気がして。

……この先生、笑顔も作り物めいているし、妙に私に絡んでくる。 何が目的なの?

そんな私の心情には気づくはずもなく、戸崎先生は笑顔を見せる。


「ほら、行っておいで」


その言葉に私は頷き、駆け足でリリアの元へと向かった。

リリアの元には、クラスの男子が多く集まっていた。

今は放課後。

この後の予定でも決めようとしているのか。


『……なにをしているの?』


初めて、英語を話した。

発音はまだまだ下手くそだけど、みんなは笑わずに、しっかりと聞いてくれた。

リリアはこちらを向いて、微笑んだ。


『今、みんなで私の家に行こうって話しをしていたの。貴女も、一緒に来ない?』


私は、勢いよく頷いた。

そして、両手を差し出して言った。


『私、英語を覚えたばかりで、あまり話しはできないかもしれない。だから……』


震えた声で言う私の手を、リリアはそっと包み込んだ。

リリアの温かさが、じんわりと伝わる。


『大丈夫よ。私、少しでも貴女と話しがしたいの。だから、ね?』


可愛い、というよりも、美しい、という言葉が似合うリリアの顔に、私は見惚れていた。

……この美貌を生かして、女の私も虜にするつもりなのかしら。

一瞬、そんな考えがよぎったけれど、今はリリアの家のことが先だと感じ、忘れてしまった。


『それじゃあ、行きましょうか』


リリアは私の手を引いて、ゆっくりと歩き出した。

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