絵本
端正な顔立ちをしたスーツ姿の男が、ピンクの華やかなドレスに包まれた女の前に跪き、愛の告白をする様子が、紙いっぱいに描かれていた。
私は今、絵本を読んでいる。
それは、小学校に入学するときに、お婆ちゃんにお祝いの品として貰った絵本だった。
何度も読み返したせいなのか、ところどころ紙が折れたり、破れたりしていてボロボロだった。
そういえば、昔は私もお姫様に憧れたなぁ。
でも今は、みんなからはあんなに嫌われている悪を、私は尊敬する。
みんなに嫌われても、己の目的の為に努力をして、敵を徹底的に潰そうとするところが、本当にすごいと思う。
悪なんて滅びればいい、だとかみんなは言うけれど、私はそうは思わない。
だって、悪があるからこそ、正義があるのでしょう? 悪がいなければ、正義なんてものも存在しない。
正義の味方は、悪に助けられているの。
私は、悪役の中でも、
なんて平和ボケした間抜けな顔なんでしょう。幸せばかりが続くと思っているのかしら。
そんなことを言って、幸せそうなお姫様の居場所を奪う〝悪女〟には特に惹かれていて、私もこうなりたい、といつの間にか思うようになった。
もしも、お姫様に憧れる女の子がいたら、私も……憧れの悪女になりきって、潰してあげるのに。
……まぁ、中学生にもなって、お姫様に憧れる馬鹿なんていない、よね。