三十五話 城内へ
「もう街が見えなくなっちゃいましたね」
リーナさんは街が見えた方向を見ながら、そう言った。馬が走り出して5分、既に街道から外れ、近道である森に入ろうとしている。
「そうですね。リーナさんは街を出るのはいつぶりですか?」
「うーん、そうですね。1年ほど前ですね。それまで王都で冒険者として働いていたので」
リーナさんは人差し指に顎を指しながら言う。
「結構最近ですね。なんでやめちゃったんですか?」
「もう冒険者でいるのが辛くなったからですからね。」
リーナさんはそれ以上詳しく語らなかった。俺も追求しなかった。
「良かったんですか?着いてきてもらって」
「大丈夫です。新木さんを守るためです。これくらい、どってことありせん!」
そう言ってリーナさんは笑った。その表情に自分も釣られて笑ってしまう。
そしてなにもトラブル無しに、1日目・2日目と過ぎていった。
「やっぱり降ってきたか」
そう言って俺は空を見上げる。曇天だった空からついに雨が降り始めた。
「あ、新木さん、早いですね。おはようございます」
見張りをしていたリーナさんが挨拶をしてきた。
「おはようございます、リーナさん。見張りありがとうございました」
「いえいえ昼に寝ているので、大丈夫です!」
しばらくすると、従者の人も起きてきて、朝食をとった。
「さて王都までもう少しです。昼頃に着きます」
従者さんはそう言って、馬を走り始めた。
移動を始めて二時間、馬車が大きく揺れた。
「...なんだ!?」
「新木さん、馬車のなかに居てください!!」
その言って、リーナさんが武器をもって飛び出す。
馬車から見ると、金属の鎧に包まれた男が五人いた。対するリーナさんは1人で立ち向かう。
「ここを通すわけにはいかない。引き返せ!!」
金属で包まれた男が叫ぶ。
「新木さん、先にいってください!!」
リーナさんは武器を構えながら言う。
「いやでも...」
自分がいたところで、なにもすることはできないことは理解できたが、このままリーナさんを置き去りにしてしまうことは憚られた。
「私は大丈夫です!!私は大物喰らい、ドラゴンスレイヤーですよ。これくらい大丈夫です!!」
「新木様行きましょう」
従者はそう言った。冷静そうだが、言葉を早口で焦っていることがわかる。
「...わかりました。リーナさん絶対に死なないでくださいね」
「新木さんも絶対戻ってきてくださいね」
リーナさんは神妙な顔をして言った。
「一気に抜けます。捕まっていてくださいね」
そう言って従者は手綱を使って、一気に戦場を後にした。
大雨がふりはじめた。
ついに王都が見えてきた。王都は既に閑散としており、人気もなく不気味な雰囲気がある。
「自分が指示するところまで移動してください」
そう言うと従者は驚いたような顔をしたがすぐに頷いた。
「わかりました」
従者は俺の言葉にしたがって、移動をしていった。
「おぉ...こんなところがあるとは私知りませんでした」
従者は王都を一望できる光景に感嘆の言葉を漏らす。
自分が指示した場所は姫様と一緒に行った秘密の場所だった。
「ここまでありがとうございました」
そう言って俺は頭を下げる。
「いえいえ、これも仕事ですから」
そう言って従者は笑った。危険な道程だった。リーナさんがいなかったら全滅していただろう。それを仕事だからと引き受けることは俺にはできない。この従者にも頭が上がらない。
「では私は失礼します。できればこの国を助けてください。なんだかんだ言って生まれの国が滅びるのは見たくないので」
そう言って従者は馬で戻っていった。
「じゃあ行くか」
そう言って俺はペンダントを取り出した。そのペンダントは姫様から貰ったものである。姫様の言葉を思い出す。
『転移石の使い方は簡単です。行きたいところを願って、地面に叩きつけてください。そうすれば、ここから城までの距離くらいまでなら転移することができます』
やることは簡単。願って地面に叩きつけるだけだ。
「頼む。城の中に俺を連れていってくれ」
そう言って俺は青色に輝くペンダントを地面に叩きつけた。
「うお!?なんだこれ」
驚き声をあげてしまう。足元には巨大な魔方陣が描かれていた。そして俺は青い光に包まれた。




