三十一話 異世界でも熱中症は怖い
「頭痛い...」
おじさんと飲んだ翌日俺は二日酔いに苦しむ羽目になった。既に時刻は11時を回っていた。
「くそー暑い。この世界に来て一番暑いんじゃないか?」
汗でシャツがベタベタになっている。あとでコンビニで買わねば...コンビニに下着が売っていてよかった。
「しかし暑いな...なにもする気にならん」
そう言って俺は目を覚ますため残っていた炭酸水をイッキ飲みする。
「ぬるい」
やはり冷蔵庫がないのは致命的だな。普段の食材は魔法使いの氷魔法で作っているらしいのだが、あいにく俺には属性魔法の素質がない。
「しょうがない。とりあえず起きて、冒険者ギルドに行くとするか」
そう言いながら、俺は階段を降りる。すると洗い物をしているおじさんが見えた。
「よぉ!やっと起きたか!!」
「はい...二日酔いで」
「俺と張り合おうとするから。言っただろう俺は酒に強いって」
そう笑っていると、看板娘の女の子がおじさんの耳を引っ張った。
「ちょっとお父さん!!酒は飲まないって約束だったでしょ!!」
「・・・すまない」
「あまり怒らないでください、少し悩みを聞いてもらったです」
俺が焦ってそう言うと、看板娘の女の子は驚いた顔をした後、引っ張っていた手を離した。
「少しは気が楽になったか?」
「うーん、そうですねちょっとは」
「そうかそうか。結局自分で消化して、納得するしかないからな」
そう言っておじさんは笑った。
「じゃあ仕事行ってきます」
「頑張って行って来い」
「行ってらっしゃい」
二人の言葉を背に俺は冒険者ギルドに向かった。
「こんにちはー新木さん。今日は遅かったですね。」
そう言ってリーナさんは笑いかけてくる。
「ちょっと飲み過ぎちゃって」
そう言って俺は曖昧に笑う。
「珍しいですね。新木さんがお酒飲みすぎるの」
そう言ってリーナさんは笑った。
「今日は指名依頼ないんですか?」
いつも二日に一回指名依頼が来るため、リーナさんに聞く。
「そういえば来ないですね。なにかあったんですかね?」
「じゃあ今日は普通の依頼を受けます」
そう言って貼られている依頼を見る。しかし良い依頼がない。
「うーん。これでも受けるか」
そう言って俺は張り紙の依頼書を取って、リーナさんに渡した。
「受理しました。畑仕事の手伝いですね」
そう言って、リーナさんが笑う。
俺が畑にむかうと、既に畑仕事が行われていた。
「今日は頼むよ」
俺が依頼主に挨拶にむかうと、そう言って快く受け入れてくれた。
畑仕事の内容は収穫だった。まわりを見ると子どもやおばちゃんも働いていた。家族総出の仕事らしい。
「...暑い」
たまには農作業でもやろうと考えた俺の考えが甘かった。やっぱりこの世界でこれだけ、暑いのは初めてだな。
黙々と収穫する。社会人のときも田舎にいたが、生まれも育ちも田舎暮らしで、実家にいたころから畑仕事をしていたが、農業での収穫期の作業量は壮絶であった。
「大変だ!!ルーが倒れた!!」
その声で一時作業が停止した。
どうやらルーというのは子どもの名前らしい。彼の顔を見ると顔が真っ赤になっていた。熱中症である。涼しい場所というところで、川で日陰のところに運ばれていく。すると、同じ症状で倒れている人が十数人いた。涼しいっていったって、30℃はあるぞ、ここも...
「氷屋は?」
「貴族の方に行っちまってるらしい」
周りで見守っている人たちが心配そうに見合ってる。
「よかったら、氷仕入れてきましょうか?」
「できるのか?今氷屋は平民街にはいないらしいが」
「独自のルートがあるので大丈夫です」
「...悪い。助かる。」
その言葉を待って、俺は人がいないところを見つけてコンビニに入っていった。
「さて、さっさと買って戻るぞ」
そう言いながら、ロックアイスをいれる。他に熱中症に役に立つものを探す。幸いこの世界も夏なので、熱中症対策のグッズもたくさん取り揃えてある。
目についた商品をかごに放り込む。
「熱さまシート、スポーツドリンク、塩飴、ロックアイス...これぐらいでいいか」
そう言って会計にもっていき、お金を払った後に、すぐにコンビニを後にした。
「持ってきました!!」
そう言って俺はまず、ロックアイスを開封する。
「おぉ!!本当に持ってきてくれたのか!!ありがたい!!」
俺がロックアイスを見せると、その場にいた大人たちが早く自分の子どもを冷やそうと詰め寄ってくる。子のことを想う親の気持ちの強さをひしひしと感じながらも、平等に分けていく。
事態が終着したのは夕方になってからだった。
「今日は農作業あまりお手伝いすることができず、すいませんでした」
そう言って俺は頭を下げる。
「いや、野菜なんか枯れちまったって来年できる。だが子どもが死んじまったら二度と戻ってこない。あんたは俺たちにとって英雄だよ」
そう言って俺に報酬を渡してくる。銀貨八枚である。この人たちにとっては決して安くない額である。
「頂きます」
そう言って俺は頭を下げた。
「お兄ちゃん、ありがとう!!」
ルーと呼ばれていた男の子がお礼を言って頭を下げる。
「どういたしまして。これから辛いと思ったら家族に言うんだよ。そういうところで遠慮しちゃダメだ」
俺の言葉に対して、少年は黙って頷く。
そして依頼の経緯の説明のためギルドへ歩きだした。
「王都から難民が来ているってどういうこと!!??」
リーナさんが叫ぶ声が聞こえる。事態が一転する。
王都でなにかが起こった。それだけはわかった。




