三十話 深夜の飲み会
「...暑い」
俺はベッドに寝がえり打ちながら、自分の意識が薄くなるのを待っていた。
「コンビニでも行くか」
いっこうに眠くならず、コンビニに行こうと思い、ベッドから起きて、自分の部屋からでた。日は既に変わっており、窓からは歓楽街以外は暗く寝静まっていた。
「どうしたんだ?こんな夜中に」
階段から降りると、そう言って、宿屋のマドンナ的存在の女の子ではなく、おじさんが顔を出した。おじさんはいつも鍋を振るっている裏方的存在である。俺も挨拶することはあっても、喋ることはない。
「眠れなくて、少しだけ、外に出ようかと」
「わかった。いま、扉を開ける」
そう言っておじさんは外に続く鍵を開けた。
「いらっしゃいませー」
店長らしき人の声が聞こえる。夜中のこのコンビニはいつも店長らしきこの人が接客している。俺はウィスキーと炭酸水と氷、ビールをかごに入れておつまみを物色する。
「うーん。チーカマとソーセージと...これもいくか」
そう言って俺はチーズケーキをかごの中に放り込んだ。甘いものは酒と合わないという人も多いが、俺は甘いものと酒の組み合わせはありと思っているし、かなり好きである。
「ありがとうございました」
欠伸混じりの声を聞いて、少し店長に同情しながらも、外に出た。夜勤って辛いもんな...
「買いすぎたな...しかし外で飲むつもりだったが」
おじさんが待っているから、早く宿に戻るか...俺は早足で宿に戻った。
「おー戻ってきたか」
俺が宿に戻ったのを確認して、おじさんは扉の鍵をかける。
「こんな夜中にすいません。あと申し訳ないのですが、グラス貸してもらえませんか?」
「グラス?何か?飲むのか?」
「少し、お酒を?」
そう言って俺は笑って、ウィスキー等を見せた。
「おーいいなー」
そう言っておじさんはかなり羨ましそうな顔をしている。そして物欲しそうにしている。
「...飲みます?」
「...いいのか?」
「いいですよ。ちょっと買いすぎちゃったので」
そう言うと俺は小さくいたずらっぽく笑った。そして食堂に向かった。深夜の密かな飲み会が始まった。
「よっしゃ!!じゃあ、乾杯」
おじさんがそう言うと、俺もジョッキをかかげた。
お互いビールを一気に飲む。おじさんはすぐにジョッキを空けた。すごいな。もう俺は一気でジョッキ開けれないぞ...
「この酒キレがあってうまいな!!まぁもうちょっと強い酒がいいけどな!!」
そう言って寡黙そうなおじさんが初めて笑った。
「じゃあ、これ飲みます?」
そう言って、俺はジョッキにロック氷を入れて、ウィスキーを注いだ。
「おっ!悪いなー!!」
そう言っておじさんはウィスキーを一気飲みする。凄いな...このウィスキー、度数40くらいあるぞ。俺はそんな酒に強くないから、いつも炭酸水入れて、ハイボールにして飲んでるのに...
「いやーかみさんが、健康に悪いから飲むなって言われてたんだけどな...」
「そうなんですか」
「まぁ、客に勧められた酒を飲まないっていうのもな」
そう言っておじさんはにやりと笑った。俺はおつまみとして、ソーセージとチーカマをお皿に広げる。
「おっ、つまみも美味しそうだ!」
そう言っておじさんはソーセージをつまんで、口のなかに放り込んだ。
「旨いな!!このソーセージ!!」
「やっぱりおいしいですね。このソーセージ」
そう言って俺もソーセージを口に放り込む。そして残ったビールを流し込む。
「最近、宿にすぐ戻ってきてるけど、仕事は大丈夫なのか?」
「最近は戦争関連の仕事をしていますね、皮肉ながら最近はいつもより稼げてます」
酒を飲んでいるせいか、お互い口が軽くなってしまっている。
「あー戦争関連の仕事か。稼げそうだもんなー」
そう言っておじさんはチーカマを齧った。
「なんだこれ。味濃くて酒に合うな!!」
「あまり飲みすぎると明日辛いですよ」
俺は彼をたしなめる。
「大丈夫。俺は二日酔いしにくい体質なんだ。まぁ、話を戻そう。その戦争関連の仕事っていうのが辛いのか?」
「うーん、辛いというか。戦争に加担している気がしていて・・・」
「生活のためだろ?仕方がない」
そう言っておじさんはジョッキの中を空にする。
「...そうですかね」
「戦争は悪いものだと思うか?」
「そりゃー悪いものでしょ。人死ぬし」
「悪いものと思っているんなら、まだ大丈夫だ。悪いと思わなくなったらやばいと思え」
そう言っておじさんは笑い飛ばす。
「そう...ですかね」
「なんか、湿っぽくなっちまったな。飲みなおすぞ」
そう言って俺とおじさんの、飲み会は一時間くらい続いた。なんとなく、肩の荷が降りた気がした。
ちなみに、チーズケーキと酒の組み合わせにおじさんはかなり驚いていた。




