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三話 インスタント食品無双

「一緒に食べるって・・・私たちに食料を分けてくれるのか?」


 筋肉めっちゃある騎士の人が疑念の目を向けながら聞いてくる。


「あ・・・はい。」


 疑いの目は晴れなかったが、深刻な食料難なのか従者らしき少女二人に目配りした後に目を閉じて頭を下げた。


「・・・すまない。助かる」


 そうお礼を言われたときに己の失態に気づく。俺、主食、カップラーメンしかないじゃん・・・もうおにぎりとか弁当売っていなかったんだよな


「あっ、すいません。自分の食べ物もお湯がないと食べられないものしかないんですよ」

「お湯か?問題ない・・・リーシャ、アドレイナ。二人でお湯を作ってくれ」


 男がそう言うと、二人の少女が立ち上がった。


「はいはーい。わかったよー。いくよアドレナ」


 軽い返事をしたのはピンク色の髪で少し幼げ少女だった。


「は、はい。私も頑張ります!!」


 そう返事したのは青色の髪のショートカットの少女だった。

 二人ともかわいすぎるだろ。しかし残念。俺はロリコンではない。


「生み出せ。生命の始まり・・・(ウォーター)!!」


 リーシャと呼ばれるピンク色の髪の少女がそう唱えるとなにもなかったはずの大きな器に水が注がれる。

 さすが異世界。魔法があるのか・・・


「生み出せ。文明の始まり・・・(ファイア)!!」


 アドレナと呼ばれる青色の髪の少女がそう唱えると水があっという間に沸騰した水に変わった。


「これでどうでしょう?」


 リーシャはそう言ってどや顔をした。


「あ、はい。ありがとうございます」


 俺は二人に思わず頭を下げる


「こらリーシャ、生活魔法ごときで自慢するな」


 騎士の男がそうリーシャに注意する。するとリーシャは「テヘッ☆」と舌を出して笑う


「コレは飲んでも大丈夫なんですよね?」


 俺は気になっていたことを口にする。得体も知らない方法で作り出した水を怪訝そうな目で見つめる。日本人は胃が弱いという。気をつけて損はしないだろう。


「うん。全然大丈夫だよ」


 そうリーシャは言う。出会って間もない俺が言うのもなんだが、彼女が言ってもなんだか不安だ・・・


「はい、リーシャが言うように大丈夫だと思います。生活魔法で生まれる水は純度100%なんですよ」


 そうアドレナも補足して説明してくれる。こんな純粋そうな子が言うと信用度がグッと上がるな。


「なら、いいんです。じゃあ作りますね」


 そう言って俺はカップラーメンの蓋を開けて全てに線までお湯を注ぐ。なにを作っているのか興味があるのか全員が俺の手先に注目している。


「ねぇねぇもう食べていいの?」


 少し時間がたってからリーシャは、少しワクワク顔で聞いてくる。


「うーんもうちょっと待ってください」


 俺は自分の腕時計を見ながら言う。


「・・・ほほぉ。魔法時計を持っているのですか」


 あっやば。いつもの癖で普通に時間確認しちゃったよ・・・まぁ幸いこの世界にも似たようなものがあるから大丈夫だったけど。

 次から気を付けよう。



 3分経った。もうこの3つは食べれるだろう


「はい。この3つはもう食べていいですよ。」


 そう言って俺はカップラーメンの蓋を開ける。


「うわー!!おいしそう!!」


 リーシャは目を輝かせる。そしてポケットから箸を取りだす。

 この世界にも箸があるのか・・・


「姫様。先にお食べください」


 そう言って騎士の男は姫様と呼ばれている少女にカップラーメンを差し出す。そう言えばこの人、俺が来てから一回も喋ってないな・・・


「あ、ありがとうございます」


 彼女はそう言って恐る恐るカップラーメンを口に運ぶ。


 食い意地が張ってそうなリーシャも食べてないのを見るとこの世界では一番偉い人が一番先に食べるのが一般的なのか?毒があった時はどうするんだろう・・・


 そう考えているうちに姫様が一口麺をすすった。


「・・・おいしい」


 姫様は少しだけ目を輝かせて言った。


「本当に!!私も食べよう!!」


 そう言ってリーシャも思いっきり麺を食べ始める。


「おいしい!!ねぇ!!これおいしいよ!!何て言うの?」


 リーシャは俺に顔を近づけて聞いてくる。


「ええっと。コレはカップラーメンって言うんですよ」

「カップラーメンですか・・・聞いたことありませんな」


 騎士の男も興味深い様子である。


「ってかアドレナ。早く食べなよ。美味しいよ」


 リーシャはアドレナに、少し興奮したかのように勧める。


「う、うん」


 アドレナも、恐る恐るカップラーメンの麺をすする。その瞬間アドレナが見せたのは笑顔ではなく涙だった。

 なんでだ!?俺はなにもやってないぞ!!


「このままなにも食べずに死んじゃうのかと思った」


 アドレナは泣きじゃくりながら麺をすする。

 カップラーメンでこんなに喜んでくれる人は日本にはいないだろう。

 そんな間に残り2分たち残り2つのカップラーメンが出来上がる。


「はい。出来ました。私たちも食べましょう」


 俺は騎士の男に少し笑いかけながら食事を促した。


「うむ、すまない頂くとしよう」


 そう言って騎士の男も箸を持ってカップラーメンを食べ始めた。

 と言ってもこの人の体つきを見るにこの量じゃ足りないと思うんだが・・・まぁいいや。オヤツのポテトチップスとかもあるからなんとかなるだろう。



 10分ぐらいして全員がカップラーメンを食べ終わったのを見計らってか騎士の男が話しかけてきた。


「見知らぬ私たちを助けていただき感謝の言葉もない」


 そう言って騎士の男は頭を下げる。


「いや、目の前に困っている人を見捨てるわけにはいかないでしょ。皆さんの名前はなんというのでしょう?私は新木 蓮と言います」


 そう言って俺も慌てて頭を下げる。


「申し訳ない。名乗るのを忘れていた・・・私はアルドニア王国の第2騎士団長。アレン ウィルドスという」


 そう言ってアレンさんは膝をつき、深く頭を下げた。


「はいはいー私は第一王女側近警護のリーシャ。平民生まれだから。姓はないよー」


 リーシャは、かるーく手を降りながら元気よく自己紹介をする。

 ・・・うん?第一王女だと?


「わ、私も同じく第一王女側近警護のアドレナです。姓はありません。食料の提供ありがとうございました」


 そう言ってアドレナは深く深くお辞儀をする。

 俺はどうやらとんでもない人たちと知り合ってしまったらしい。

 そして残る自己紹介をしていないのは肝心の姫様だけであるのだが。


「・・・」


 彼女は全くしゃべる気がないらしい。俺に顔も会わせてくれない。


「すまない。新木殿。今、姫様は人間不信に陥っていてな・・・彼女の名前はエナメラ ナイーグだ。」


 アレンさんが代わりに彼女の名前を言う。


「は、はぁ・・・それにしても、なぜあなたたち程の身分のお方がこんなところで食料不足に陥っていたのですか?」


 俺が雰囲気を変えるために質問をぶつけると、アレンさんは渋い顔をする。


「うむ・・・理由は5日前にさかのぼる。その日私たちは同盟国であるカーンド国に滞在していたのだ。しかしその国のものが突然私たちに襲ってきたのだ」

「なんのために?」


 国の姫を襲うなど、その国に戦争を吹っ掛けるのと同義だとおもうのだが・・・


「たぶん身代金目的だろうな。現在、カーンド国の財政は火の車だからな」

「なるほど・・・」


 どうやら俺は国同士の争いに巻き込まれたらしい。

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