二十八話 ボールペン無双
「こんにちわー」
俺は、いつもの新聞のコピーをした後、冒険者ギルドに訪れた。
「新木さん、いつもお疲れ様です」
そう言ってリーナさんは笑顔で迎えてくれる。
「やっぱり大変ですか?最近、疲れているように見えますけど」
「...はい。疲れました...あっ!!」
少し書類を整えようと書類を動かし、絶妙なバランスで置いてあったインクが倒れた。そしてリーナさんの服はインクによって、黒く染まった。急いで布巾をもって服のインクを落とそうとするが、全くとれない。
「大丈夫ですか?」
「あぁ...もー最悪」
リーナさんはそう言って、ギルド職員の更衣室に駆け込んだ。
五分後違う服に着替えたリーナさんが更衣室から出てきた。
「すいません。ってあぁ...書類も汚れちゃった」
リーナさんは自分の書いた書類が汚れてしまったことでうさみみも垂れ下がり、少しだけ涙目になってしまっている。
「少し便利な書くもの持ってきます」
そう言って俺は立ち上がって、冒険者ギルドを出た。
「いらっしゃいませー」
気だるそうなあの男の声が俺を迎えてくれる。
「あれ?新木さん。なにか忘れ物ですか?」
「いや、ボールペンを買いたくて...っと、ここだ」
しかし、文房具コーナーに置いてあるボールペンは1本しかなかった。
「まじか、1本しかない」
「倉庫から取ってきますよ。いまお客さんいないし」
「あ、すいません。ありがとうございます」
しばらくすると青年は5本ほどボールペンを持ってきた。
「何本ほしいですか?」
「6本全部お願いします」
そう言うと少し驚いた顔をしたが、すぐに会計をしてくれた。
「またお願いします」
そう言って青年は笑った。最初は愛想ない店員かと思ったが、今では親しくなると思いやりのある好青年に感じてくる。
それは俺と親しくなったのか、青年が成長したのか分からないが、元の世界もこちらの世界と同じように月日が変わっているのは明らかだった。
そろそろ親に電話をかける必要があるかもしれない。
そう思いながら、俺はコンビニを後にした。
「持ってきましたー」
そう言って俺は再び冒険者ギルドを訪れた。
「わざわざ、ありがとうございます。新木さん」
そう言ってリーナさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「いえいえ、いつもお世話になっているので、そのお礼だと考えていただければ」
そう言って俺はボールペンを渡した。ミラに渡した万年筆とは違い安いものだが、実用性ではこちらが遥かに優れている。
「あっ、これ、王都で有名なやつですか!?」
リーナさんは目をキラキラして聞いてきた。
「え?これ王都で売ってるんですか?」
「はい!!最近王都で売れに売れているんですよ!!価格も程よく押さえられていて、書きやすいと流行中なんですよ!!」
「へぇーそうなんですか」
どうやらこの世界にもボールペンという文房具が生まれていたらしい。
「じゃあ使い方はわかりますね?」
「はい!!ありがとうございます。って新木さんこのペンをどこで仕入れたんですか?」
リーナさんは不思議そうに俺に問いかけた。
「そうですね...すごく遠くの便利なところから仕入れてきました。」
そう言って俺は誤魔化すのだった。




