二十七話 キレイな玉
「ミラ、お前何やってんの?」
俺は、頭をかきながら、ミラに近づきながら聞いた。ミラは一番初めに会ったときに比べ、格好も表情も女らしくなっていた。髪も伸びていて括っている。もう男と間違えられることはないだろう。
「炊き出しよ。見ればわかるでしょう?」
「お前、勉強はどうなったんだ?」
「もう完璧に覚えて、商会に雇ってもらったわ」
ミラはそう言ってどや顔を見せつけてくる。しかし、文字を覚えるにはもっと時間がかかると予想していたため、思わず目を丸くする。母国語だとはいえ、中学高校で六年間英語を学んでも少しも喋りも書きもできない俺からすれば、天才である。
「まじかよ...すごいな。その商会の仕事はいいのかよ?」
「大丈夫よ。私を雇ってくれた商会は大きいから、社会奉仕も仕事の一つだから」
「ふーん、そうか」
確かに俺が勤めていた会社も社会奉仕活動をしていた。その優しさを俺たち社員にも向けてほしいものだ。
「新木は?元気だった?」
「あー元気元気。最近は金銭的にも時間的にも余裕が出てきたわ」
「そうなの?よかったわ。恩人が生き倒れなんて、笑えないからね」
「ハハハ...てか?いいのか?喋ってて、炊き出し待ち遠しそうにしているけど」
俺は炊き出しを今か今かと待ちわびている、子どもを見渡して言った。
「あっ、そうね。そろそろ始めないと、じゃあね」
そう言ってミラは大きな鍋のところに走って戻っていった。
「俺も少し手伝うか」
ミラが大きな鍋からよそう姿を見ながらそう独り言を呟いた。そして俺はいつも誰もいない場所にむかった。
「あるといいんだがな...来いコンビニ」
慣れた口調でコンビニを呼び出し、自動ドアが開くと俺はコンビニの中に入っていった。
「いらっしゃいませー」
1時間強しかたっていないが、いつもの青年はおらず、代わりに可愛い女の子の声でお出迎えをしてくれた。
「まずは洗剤っと...」
そう言って、台所用洗剤をあるだけ、かごの中にいれる。
「あと...」
コンビニ内であるものを探す。
「あった。けど二個だけか...しょうがない、ストローを買うか...」
そう言って俺はストローといっしょに玩具をかごの中にいれた。その後この世界は夏のシーズンということもあり、おいてあったビニールプールも持ってレジに向かう。
可愛い女の子は明らかにめんどくさそうな顔をしていたが、気にしない。
「ありがとうございました」
レジに時間が少しかかったが無事会計をすませ、可愛い声を聞きながら、俺はコンビニを後にした。
「よし。じゃあ戻るか」
俺が戻ると既に炊き出しの鍋は空っぽになっており、ミラをはじめとしたボランティアさんも疲れの表情が見える。子どもたちは炊き出しを元気に食べている。
その様子を見ながら俺はビニールプールを膨らませ始めた。
それに気づいたミナは俺のもとに駆け寄って話しかけてくる。
「なにするつもりなの?」
「見てのお楽しみ、てかミラも手伝ってくれよ」
「さっきまで働いていた人にそれを言う?...まぁいいけど。何をすればいいの?」
「これを膨らませてくれ」
そう言って俺はもう一個買ったビニールプールを差し出した。
「?なるほど、ここから空気を入れればいいのね?」
そう言ってミラは頬を思いっきり膨らませ、空気を入れ始める。
「ミラ、蓋ついてるぞ」
「え?あっ!?」
そう言って俺が指摘すると、ミラは口から空気入れのところ放し、顔を赤くしながら蓋をとって、改めて空気を入れ始めた。
五分後、膨らませ終わったビニールプールに洗剤と水を入れる。
「出来たけど、これでなにするの?」
まあ、見てろってそう言って俺はストローに洗剤をつけ、フーと吹く。
「...キレイ」
ミラは呆然したかのように空を見つめる。
「やってみる?」
そう俺が言うとミラもストローをフーと吹く。
「すごいわね!!これ!!」
ミラはシャボン玉を見て笑った。年相応の幼い笑顔だった。
シャボン玉のキレイさに惹かれたのか、どんどん子どもたちが集まってくる。子どもたちに向かって俺は口を開いた。
「やる?」
そう俺が提案すると一気にシャボン液に集まってシャボン玉を作り出す。近所の人も騒ぎを嗅ぎ付けたのか見物客が増えていた。
周りを見渡すと子どもたちの笑顔が溢れ、空を見上げると幻想的な風景が広がっていた。




