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二十四話 密会

「姫様、どうしてここに?」


 俺はなるべく、声を抑えて、しかし緊張と困惑は抑えることはできない、すごい上ずった声で聞いた。


「...お久しぶりです」


 姫様は自分の問いには答えず無難な挨拶をした後、彼女は俺の部屋の窓を開けた。


「うぉ!さむ!!」


 思わず声が出てしまう。

 俺がこの世界に来たのは夏。その夏はもう既に過ぎ去り、秋も寒さが入り交じる季節となっている。


「新木さん、少し散歩しませんか?」


 そう言う彼女の表情は年齢相応のいたずらっぽい笑みと少し怯えの表情をごちゃ混ぜにしたかのような表情だった。


「いやいや、危ないですよ!!」


 俺は全力で、拒否する。

 この国はいま戦争をおこそうとしている。そんなピリピリしている国の姫が外に出たらどうなるか。騒ぎになるどころか、暗殺もありうる。


「大丈夫です。ロープを持ってきているので!!そしていざとなればほら」


 彼女はそう言ってロープと青色に輝く宝石を見せてきた。

 その輝きは銀河を連想することができた。


「これは半径1キロ以内の場所なら1度だけ、ワープすることが出来る国宝です」


 そこまでして行きたいというものを邪険にするのはいけないことだろう。なんとなくそう感じて、俺は口を開いた。


「そんなものまで...わかりました、行きましょう。ちょっとした冒険でしょう」


 そう言うと彼女は笑った。円満の笑みだった。


「では、行きましょう!!」


 彼女はロープを下ろし始める。外に出て周りを見渡すと、姫様などの要人がいる部屋とは真逆にいるため、警備はあまりいなかった。


「ちゃんと変装もしてくださいよ」


 俺がそうたしなめると、彼女はだまってローブを被る。すると、姫からただの怪しい人に変身した。その変装に思わず噴き出してしまう。


「...なんですか、新木さん。折角変装したのに...酷いです」


 そう言って彼女は怒ってしまった。しかしその口の口角は少し上がっていた。


「すいません、すいません。行きましょう?」

「わかりました。行きましょう」


 そう言って俺と姫様の少し間の探検が始まった。


「...すごいです。こんなにキラキラしているなんて」


 彼女はそう呟いた。時計をみると針は12時を示しており、ここの街路以外は静寂が広がっている。おそらくここはメインストリートだったところだろう。肉の焼ける匂いが鼻腔に抜ける。少し前の食事会では全く食欲が沸かなかったが、お腹が空いてくる。すると隣からキュルルと、可愛らしいお腹の悲鳴が聞こえてくる。


「美味しそうですね、あそこのお肉」

「そ、そうですね」


 彼女の頬は羞恥からか真っ赤になる。


「買ってきますよ。いまお金持っているんで」


 そう言って歩きだす。彼女の方をふと見ると少し不安そうな顔をしている。

 そうか夜中に街で一人は不安になるわな。


「いや、やっぱり一緒に行きましょうか。はぐれるといけませんし」


 俺がそう言って手を差し出す。彼女は少しだけ嬉しそうな顔を見せる。


「は、はい。わかりました。」


 彼女はその差し出した手をギュッと握る。


「はぁー食べた食べた」


 俺と彼女はお腹をさすりながら、買った冷たい飲み物 (オレンジジュースのような)を飲みながら、ベンチに座った。いま考えてみれば、肉串、フォーのような麺、冷やしパインを夜食として食べる量ではなかったのだが・・・


「お腹一杯です...」


 彼女に目をやると、飲み物は少し酸っぱいせいか、飲み込むのに時間がかかってしまっている。


「これ食べたらもう帰りますか?時間もそろそろいい時間ですし・・・」


 時計をみると、既に1時を指していた。


「いや、最後に行きたいところがあります」


 そう言って、彼女は残っていた飲み物を飲んで、立ち上がって、歩き始めた。それに俺はついていく。


「おーすごい風景ですね。」


 15分ほど歩くと、少し高い丘にたどり着いた。


「私のお気に入りの場所なんです。ここからだと王都の人たちの生活を一望できるんです」


 町を見ると、もう既に1時を過ぎているのに、町の明かりはまだ消えていない。先ほどいたメインストリートもまだまだ明るい。


「私...怖いんです」


 その言葉を聞いて、俺はなにも言うことができなかった。


 怖い。これは、言わずもがな、戦争のことだろう。


「戦争が始まったら、この風景は無くなっちゃうんじゃないかって」


 声が震えていた。俺は、なにも言えず彼女を見つめる。戦争が始まれば、この町はどうなるのだろうか。


「新木さんは戦争が始まったらどうしますか?」


 戦争を体験したことのない俺に戦争と言われても、どうしてもおとぎ話のように感じる。


「自分は...知り合いを連れて逃げたいですね」

「知り合い...とですか」

「俺はこの国で色々な人と出会いました。リーナさん、ミラ、アレンさん、アドレナ、リーシャ、そして勿論姫様とも。全員を連れて逃げたいです」

「私も...ですか。」


 姫様の問いにうなずく。


「...私はアルドニア王国第一王女です。この城を離れるわけにはいきません。もし私がこの戦争で危険な状況になったら」

「そのときは私、俺が助けにいきます」


 俺は震えている彼女にそう言った。そう言うと彼女は顔を上げ、口を開いた。


「そうですか...新木さんが助けてくれるなら心配はいりませんね!」


 彼女はそう言った。不安、気恥ずかしさを押し潰し、勇気のある目であった。


「新木さんに渡したいものがあります」


 そう言って彼女は差し出した、国宝といわれている青い転移石である。


「受け取れませんよ!!こんなの!!」

「いや、新木さん持っておいてください。もう会えないでしょうし」


 そう言って彼女は少しだけ目線を少しだけ下げた。

 確かに、今日は特別に招待されて、彼女と会えているわけである。俺がなにかの式典で彼女を見ることはあっても、彼女は自分を見つけることなんてできないだろう。そして間違っても、今のように二人で会って会話する機会は今後一生ないだろう。


「だから、持っておいてください。その転移石の使い方は簡単です。行きたいところを願って、地面に叩きつけてください。そうすれば、ここから城までの距離くらいまでなら転移することができます」


 俺は青色の転移石を受けとる。そして首にかけた。


「...大事にします」


 俺はそれだけを言った。彼女はその返事に満足したのか、うなずいた。


「もうだいぶ時間がたちましたね」

「そうですね、帰りましょうか」


 時計を見ると一時半に針を指していた。

 俺と彼女は歩き始めた。もう二度とこんな機会はないだろうと思い、どうしても歩みが遅くなった。

 曇っていて、星が見えなかったが、西の方向ではかすかに星空が見えた。

 明日は晴れるだろう。


次で一章完結です。次の話投稿してから、一章の話を全て改稿したのち、二章を投稿していきます。なんとか今年の夏休みの八月、九月には完結させたいと思ってます。

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