十九話 観光
「さてまずはどこへ行くか」
俺はそう独り言を呟いて、歩き始めた。収入源を作ろうと必死になって、全く周りが見てなかったがこの世界は日本とは全く違っている。
まず目の前に広がっているのは、レンガで作られた道とレンガで積まれ作られた家である。日本ではまず見られない光景である。高層ビルも電柱もなく、空気も澄んでいる。心なしか空がきれいに見える。
その風景に圧巻されたのか、注意力が落ちたのか、目の前の人に気づかずに、ドンッと衝撃を感じる。
「すいません!!」
慌てて、顔をあげる。
「なに、構わんよ。次から気をつけてくれ。」
男は耳がとても長く、目がつり上がっていた、凛々しい戦士だった。見た目はとても若いが、見た目年齢では、実年齢は図れないのがこの世界である。
澄んでいる空とは対照的にこの道を行き交う人たちは逞しく生き生きと熱をもって暮らしている。行き違う人たちは多種多様である。白人、黒人など人の顔をしている者たちは勿論、なかには、顔は竜の顔をしていたり、尻からは尻尾が生えている者もいる。リーナさんも、うさ耳が生えているが、この世界では決して珍しいものではないだろう。
「そこのお兄さん!!ミノタロウスの串焼きだよ?どう?」
そう言って、高校生ぐらいの年ごろの男の子が俺に30センチほどの一見すると牛の串焼きのような食べ物を勧めてくる。
まだ中学生や高校生ぐらいの年ごろの子どもが働いていることには驚きだな。
「じゃあ、一ついただきます」
俺がそう言うと、その男の子は年相応の笑顔を見せる。
「まいど!!大銅貨2枚だ!!」
それを聞いて俺は大銅貨二枚を差し出して、ミノタロウスの串焼きを受けとる。俺はそのミノタロウスの串焼きをかぶりつく。
「...硬い。しかもなんか獣臭い」
俺はミノタロウスの串焼きを見つめて渋い顔をする。
ここの物の相場は日本と比べて安いが、基本的に品質は悪い。
「カッコいいお兄さん、その串焼きに合わせて酒はどうだい?」
今度はおばちゃんに話しかけられる。商売根性は凄まじいな...
「あ、はい、もらいます」
その勢いに負けて、俺は思わず財布を取り出し購入してしまう。
「まいど!大銅貨五枚だよ!!コップを戻したら大銅貨二枚返却ね!!」
「わかりました。大銅貨五枚です」
そう言って俺は大銅貨五枚払う。
「...見た目はただのビールだな」
俺はコップを覗きこみ呟く。意を決してコップに入っているビールのようなものを飲む。
「うん?これはエールビールか」
いつも日本で飲んでいたラガービールの方がのど越しやキレがいいが、このエールビールも濃厚で美味しい。周りを見るとまだ昼間なのに酒を飲んでいる人がいる。
この世界でも酒は娯楽品なようだ。
「まぁ、なんだかんだ言って楽しそうにしてるんだよな」
俺はビールを飲んでミノタロウスの串焼きを齧りながら町並みを眺める。
日本よりだいぶ貧しく、文化レベルも低いはずなのに、こんなにも楽しそうにしている。
「いい世界だな。やっぱり」
そう言って俺は宿屋に戻って、日本も好きだが、この世界も好きになれそうだ。
そう思いながら俺は宿屋に戻って、休んだ。
「新木さん!!王家からの招待状が届きました!!」
今日は忙しくなりそうだ...




