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クレアツィオーネの物語

婚約破棄されて衛兵に連行された先の部屋で元凶の男爵令嬢に土下座されました。

作者: 葉月 未兎
掲載日:2015/07/13

「ほんっっっっとうに申し訳ない!!」



婚約破棄されて衛兵に連行された先の部屋で元凶の男爵令嬢に土下座されました。



皆様御機嫌よう、私はリリアーヌ。

ロジエ連合王国カノヴァス家が第一子、リリアーヌ・マルキ・カノヴァスと申します。

私は数年前から我が国と同盟を結ぶカガチ帝国にある名門ノワイエ学園に王命の元、婚約者他同い年の令嬢子息共々通っていました。

身分平等・実力主義を謳うこの学園に、最初は戸惑うことも多かったですが尊敬できる諸先輩方のお導きもあり、無事ここまでくることが出来ました。


…いえ、出来ていました(・・・・・・・)が正しいでしょうか。



今から1年と少し前に彼女…アデール・バロン・マルブランク様が転入してくるまでは。



病弱で今まで学園に通うことすら危うかったという彼女は、医師の診断の元2年程遅れてこの学園に入学してきました。

今まで殆ど寝たきりだったせいか、貴族として身に着けていなければならない礼儀作法も壊滅的とまでは言いませんがそれはそれは酷いもので。

身分平等を謳っていましても暗黙の了解というものがあり、やはりそれなりにマナーや礼儀作法が問われます。

若輩者ではありますが、私達も最初は諸先輩方に倣って模範となるよう接してきました…時には厳しく、時には優しく。


しかしそれを彼女は男爵位という低い爵位と、病弱だったが故に世間知らずな所を馬鹿にされているととってしまったのです。


そして間の悪いことに、中庭の人気の無い所で泣いていた彼女を私の婚約者であるユーリ殿下は見初めてしまった。

その後も様々な殿方を故意か過失かはわかりませんが、次々と彼女は魅了していきました。


勿論、私をはじめとした婚約者という立場にある令嬢は彼女に苦言を呈しました。

私の国では重婚は認められておらず、婚約者や夫婦以外の異性と懇意になることを忌避されています。

そして重婚が認められている国でも、女性から既婚男性と懇意になることは忌避されています(未婚ならいいらしいですけどね)。


私達の苦言は至極真っ当なものでした。


しかし―――私は数刻前、この学園で年に4度ある舞踏会の一つ、卒業前最後のシーニュ舞踏会にてユーリ殿下にこれまでの彼女への度重なる苦言を糾弾されたのです。


殿下から語られる彼女への苦言に…いえ、嫌がらせに、私は全く身に覚えがありませんでした。


私と殿下はノワイエ学園に入学する前から勉学を共にしてきた、所謂幼馴染です。

お互いのことは何でも知っていると言っても過言では無い程一緒にすごしてきたのです。


どちらに信を置くかなど一目瞭然でしょう。

そうで無くとも、双方の意見を聞き調査・判断するのがアンサージュ(生徒会長)たる立場の者の在り方でしょう。



しかし、殿下は今までの私との関係性も、アンサージュとしての在り方も、何もかも無かったかのように私を糾弾したのです。



殿下との間に愛だとか恋慕だとか、そんな甘ったるい感情はありませんでした。


そもそも貴族の婚姻とは家同士・国同士の繋がりを強くする為に結ぶもの、恋愛結婚を望む方がおかしいのです。

私の父と母も、カノヴァス侯爵家とモンクティエ侯爵家の繋がりを強くする為に結婚しました。

第一子である私と、跡継ぎと保険の弟二人を産み落とした後、父と母が夜を共にすることはありません。

お互い私達子供の教育や、領地の運営以外は我関せずとなりましたが、それが成り立っているのは偏に両家の関係が良好だったから。

そしてお互いに戦友のような信頼感があったからでしょう。


私も父と母のような信頼感のある関係を殿下と築けたらと頑張ってきたつもりです。


少なくとも一時の熱や感情で崩壊するような関係は築いてきませんでした―――まあ、そう思っていたのは私だけだったようですが。



それからのことは、正直よく覚えていません。

ただ誰かに…多分、この学園を守護する衛兵でしょうか。

兎に角第三者の手によって引き摺られるようにホールから連れ出された感触を最後に、私付きの侍女であるアネットに揺り起こされるまで呆然自失とベッドに腰掛けていました。




アネットが用意してくれたお茶を飲み、舞踏会に並ぶ食事には程遠いですがそれでも豪華な夕食を摂ってようやく心が落ち着いてきた頃。


全ての元凶であるアデール・バロン・マルブランクが事前に声をかけることも無く入室してきました。

そして―――。



見事な投身姿勢での(ジャンピング)土下座をやってのけたのでした。



「ほんっっっっとう申し訳ない!!

 いや、私の謝罪が何の役にも立たないことはわかっている!!

 しかしまさかジャコブとイヴェットの息子があそこまでボンクラ…もとい駄男(だおとこ)だとは思わなかったんだ!!」


「あ、あの、アデール様?

 これは一体…というか、貴女まさか……」



男性、なのですか…?



動揺しつつも問いかけると、土下座したままだったアデール様?のお身体が盛大に引き攣ります。

そう、尚も「すまない」「申し訳ない」と繰り返していたアデール様のお声は、土下座している為…というには誤魔化されない程低くこの部屋に響いてたのです。




『リリアーヌ様は「灰被り(サンドリヨン)」や「赤ずきん」って知ってるか?

 ああ、どちらも市井にまで伝わっている有名な童話だな。

 じゃあ「傾国美人(アリアンヌ)物語」は?

 …そうそう、一人の悪女―――アリアンヌによって国が滅ぼされたという、あの童話だよ。

 あれは実際にこのカガチで起こったことなんだ。

 はは、信じられない?だが、あの物語があったからこそこの学園を創立した(・・)んだ。


 そう、他でもない私が、ね。


 ―――私はね、元々この世界の住人ではなかったんだ。

 所謂異世界トリップってやつを果たした異世界人で、拾ってくれた公爵家に恩を返したくてあの悪女の逆ハーレムをぶっ壊す手伝いをした。

 その後は色々と崩壊寸前だった国の立て直しにも協力して…ある日ふと気付いてしまった。


 …この世界に落ちてから髪も、爪も、一度も伸びていないという事実に、ね……。


 私がこの世界で老いて死ぬことはできないと確証できてから、私は王侯貴族の通う学校を創ることにした。

 二度とこんな惨劇を繰り返さない為に、私が悪女となって素質を見極めることにしたんだ。


 ―――幸い、時間は腐るほどあったしね、見届け役には持って来いだったんだよ。


 私が男なのに女体でいられる理由?偏に私の世界の能力のお蔭、だな。

 私の世界には生まれた時から「贈り物(キャドー)」と呼ばれる、物語に出てくる魔法のような能力があったんだよ。

 具体的に言えば、念動能力(サイコキネシス)精神感応能力(テレパシー)だな。

 で、私の贈り物(キャドー)形状変形能力(トランス)…思い通りの姿に変身できる能力だった。

 だからこうやって男なのに女体でいられるんだ。


 ああ、うち(カガチ)と同盟を組んでる国は皆この学園の本当の創立理由を知ってるぞ。

 大昔、外交の一環で留学生を受け入れたら結構ウケてさー、今では同盟国のみ一定数受け入れるようになった、って訳。

 「なんで同盟結んでんの?!」って国があるのはうち(ノワイエ学園)に入学させる為、ってのが大半…というか、殆どだな。

 で、最後まで知らないのは可哀相だから、卒業パーティで盛大に全部暴露(バラ)すの。

 リリアーヌ様達に知られていないのは、卒業証書に私の存在を秘匿するよう呪式が組まれているからさ。

 …知ってたら見極められないだろ?』


そう軽やかにおっしゃったアデール様のお顔は、なんとも黒く…本当に、殿下や他の方々を惑わさせていた彼女と同一人物なのか、己が目を疑いたくなりましたわ。




その後―――。


私はアデール様(本当の名前はもう随分前にお忘れになったらしいので、便宜上このまま呼ばせて頂くことになりました)から少し早目に卒業証書を頂き、正式な手段をもって帰国しました。

既に殿下の所業は陛下に報告されていたようで、王家からの正式な婚約破棄、それに伴う慰謝料をしっかり頂いた後、五大公爵が一つジルベルスタイン家に嫁ぎました。

王家からの正式な婚約破棄とは、王家側に非があったというのと同意義。

アデール様からも伺ってましたが、陛下と王妃様はアデール様の妨害も物ともしない程お立場を理解されておいでで、まさか殿下がこのようなお花畑思考だったとは、と。

育て方を間違えたと謁見の間で正式に(・・・・・・・・)謝罪してくださいました―――これで殿下の王位継承権も無くなりましたね、ご愁傷様です。


この後殿下がどうなるのかはわかりませんが、私は臣下として現陛下と次期陛下に旦那様共々お仕えするだけです。

アデール・バロン・マルブランク

カガチ帝国の男爵令嬢…という設定の名門ノワイエ学園の守り神。

本名は長く生き過ぎた為忘れたらしい。

元々別世界の住人だったが何らかの拍子にこの世界に零れ落ちてしまい、当時この国の王太子や有力貴族を誑かした悪女(アリアンヌ)を破滅に追いやる手伝いをした。

その後、この世界の時間軸で生きていけないことが判明し、同じことが繰り返されないようにと学園を創立。

自らが王侯貴族を誑かす悪女となることで(おさ)たる素質があるか、またその婚約者が相応しい対応ができるかどうかを見極め続けた。

卒業パーティにて正体を明かすが、卒業証書に自身の存在を秘匿する呪式が組み込まれている為、子供達には知られていない。

因みに男性、大事なことなのでもう一度明記するが男性。

女装癖があるという訳ではなく、元いた世界の能力(贈り物(キャドー)と呼ばれている)で在学期間中は女体で過ごしている。

創立当初はカガチ帝国内のみを対象としていたが、時代の流れと共に同盟国上層部にも知られることとなり、今では計16ヶ国の主だった王侯貴族も見極めている。



リリアーヌ・マルキ・カノヴァス

ロジエ連合王国の侯爵家令嬢でユーリの元婚約者。

婚約者のいる殿方に親しげに振る舞うアデールに再三苦言を申していたが、卒業パーティ前の大きな学園内舞踏会(通称シーニュ舞踏会)にて婚約破棄されてしまう。

またアデールへの執拗な嫌がらせ(濡れ衣)を摘発され学園を追放…される筈だったが、別室にてアデール本人から少し早目に学園の創立理由と共に卒業証書を貰い帰国。

ロジエ王から謝罪を受け、人材確保と公爵家からの強い打診があり、公爵家嫡男で学園OBの次期宰相候補に嫁ぐことになる。



ユーリ・プルミエ・プランス・ロジエ

ロジエ連合王国の第一王子でクリザンテーム(生徒会) アンサージュ(生徒会長)

本当の自分(笑)を見てくれたアデールに害成すリリアーヌを見限り、学園から追放する。

卒業パーティでの暴露後をここで筆舌するには躊躇うほど面白い…もとい、悲惨な為敢えて伏せるが、帰国後の彼の未来を語るならまさに『ざまあwww』であろう。



ジャコブ・ロワ・ロジエ、イヴェット・レーヌ・ロジエ

ロジエ連合王国国王と王妃。

アデール曰く、学生時代から己の立場をしっかりと理解しており為政者の鏡と言える逸材だった。

しかし子育ての手腕はイマイチだった模様。




ちなみにカガチ(鬼灯)の花言葉は『偽り』。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 全体的に言葉の使い方が気になったのですが、 これだけはあとで作者さんが恥ずかしい思いをなさることになるので。 >気をやる これ、おそらく気を向けるとか、そういう意味で使われたのでし…
[気になる点] どうしてもスルー出来ない部分があったので書きます。 共和国に君主いわゆる王様はいないので、王立ではなく国立になります。また寝たきりだった“性”は平仮名もしくは”所為“のはず。(この部…
[良い点] ありそうな話だと思わせられるところが良い。 [気になる点] 凶弾>糾弾では。不正の追及とかの意味なら。 [一言] この発想は無かった(笑) いいと思います。
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