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俺の義妹と幼なじみが修羅場ぽい

「あたたたた……」

「むがむがももも」

「……あんっ」


 俺の口を何かがふさいでいる。あたたたくらい言いたいので、必死に口を動かすと、頭上から雪の色っぽいあえぎ声が聞こえてきた。

 なんだろうと思い目を開けると、俺は広い布に覆われ、俺の顔を健康的な肌をした太ももが挟んでいて、使用前の毛筆みたいな感触が俺の鼻をくすぐっていた。

 その時は何がなんだかわからず混乱していて、もぞもぞと顔を動かしていると、布の向こう側から「あんっ」という雪のあえぎ声が、また聞こえてきた。


 あれ、これもしかして……?


「ちょっと、何やってんですか!」


 美奈の怒声が響くと俺の顔を押さえつけていたものが一気に取り除かれ、パアッと視界が明るくなった。 俺が体を起こし、自分を押さえていたものを見ると、道路上で生尻を丸出しにして突っ伏している雪がいた。

 いや、生尻どころか女性の大事なとこまでくっきりと俺には見えて、これをなんと言って伝えたらよいものか。


「ちょ、ちょっと何するのよ。美奈!」

「それはこっちの台詞です。こんな朝から、にい様になんてことを……」

「そうよ、巧。私になんてことしてくれたのよ!」


 急に矛先が俺に向けられ、雪は立ち上がると、顔を真っ赤にしながら俺にずんずんと迫ってきた。


「私、まだキスもあんたとしたことないのに。いきなり、こんな……。女の子の大事なとこを……。嫌じゃなかったけど……」

「え?何が嫌じゃなかったって」

「う、うう、うっさいバカ!あんたのせいよ!み、見られたどころか舐められて!」

「俺のせいかよ。倒れてきたの雪だろ。それになんでノーパンなんだよ!」


 俺が言い返すと雪は、急に口ごもってうろたえ始める。


「いや、私パンツ履くの一番最後だからさ、履こうとしてたら、ちょうど窓からあんたと美奈がいちゃいちゃしてるのが見えて……。イラついてパンツ引っ掻けてくるくる回してたら、飛んじゃった……」


 長い付き合いで雪の性格も長所短所もわかっているつもりだったが、全てのことに呆れてしまって雪を見ていると、「私のパンツさっさと返して!」と悲鳴のような声を挙げて、俺の手からパンツを奪い取っていった。


「……たくっ。それにしてもあんたら、朝っぱらからいちゃいちゃして、デリカシーないわよね」


 そう言いながら、雪は俺の目の前でパンツを履きながら言った。


「私がお風呂に入ってくるときも、トイレに入ってくるときも、勝手にあんたが入ってくるんだから」

「いや、どれも俺の家で勝手に入ってるのお前だから……」


 雪は幼なじみでよく行き来していたから、勝手知ったる俺の家ということで、勝手に上がり込んで俺の部屋にいることがよくある。今でもそうだ。ただ、知らない間に来るために、上記のように鉢合わせすることがよく起きた。

 美奈が家に引き取られてから、倍になったかもしれない。大概、美奈がしなだれかかってくる時が多い。

 雪さんと美奈が強い口調で言った。


「雪さん、失礼ですよ。あなたのようなお尻丸出しにするような痴女にデリカシー云々言われたくありません」

「誰がデリカシーのない女よ!」


 雪と美奈はにらみ合い、両者の間で鋭い火花がはしる。

 美奈が俺の家に引き取られたのは去年と言ったが、この一年間、2人はどうにも折り合いが悪く、いつもいい合いになる。でも、何故か俺の部屋で一緒にいることが多い。

 にい様と、美奈が憤然とした顔つきで振り向いた。


「にい様。雪さんみたいなこんな痴女の汚いものを見せられて、さぞご不快でしょう。かわりに私の……」

 言うなり、美奈はスカートをたくしあげ、自分のパンツをするすると降ろし始めた。


「な、なにしてんの!」

「あんたバカじゃない?」

「バカで痴女の雪さんに言われたくありません。不快なものに目の触れたにい様の心を、私が癒そうとしているまでです」

「そんなんで巧の心を癒せるわけないでしょ?あたしはね。巧の幼なじみなんだから、あんたなんかより、ずっとよくわかってんだから」

「時の長さと関係の深さは比例しません。この一年間、私とにい様は濃密な時を過ごし、誰よりも親密な関係となりました」


 パンツを膝まで降ろした状態のまま、美奈が俺の腕を組んできた。


「にい様と私の間に、誰も入れさせません。この間もせっかく一緒にお風呂に入れたのに、邪魔などぶネズミが入り込んできて……」

「あ、あたしがどぶネズミ?」

「私はにい様の全てを知っています。あなたなんかと違ってね」


 鼻で笑う美奈に対抗してか、雪も俺の腕にしがみついて声を震わせながら嘲ってみせた。


「あ、あたしだって、巧の全ての知ってんだから。朝なんかボンレスハムみたいに膨れ上がってて。あんた巧のそんなの、見たことないでしょ」

「……え?」


 雪の意味不明な発言に周りの空気が氷つく。


「どういうこと、それ?」

 俺がちょっと真剣な口調で聞くと、自分が何を口したのかようやく気がついたらしく、うろたえながらポツポツと話始めた。


「えとえと、この間の朝ね。驚かせてやろうと、黙って家に上がったの。案の定、あんた毛布腹に掛けてたまま寝てて、起こそうと思ったら、あんたのパンツが異様に膨れ上がっていたから気になって……。そしたら目の前にボンッ!て飛び出してきたから……」

「お前な……」

「変態ですね」

「な、なによ!私見ただけよ!何も触ってないんだからね!びっくりして声だしたら巧が起きそうになって、あわてて窓から飛び降りたんだから。血だらけになって大変だったのよ」

「……」

「でも、これでわかったでしょ。あたしのが一歩、いや百歩はリードしたわね」


 何がどうリードしているのかさっぱりわからなかったが、勝ち誇る材料としてはそれで十分らしく、雪はふふんと鼻を鳴らし、美奈はキイイと悔しそうに歯を食いしばっている。

 にい様と、美奈が俺をにらんだ。


「この女だけに、にい様の大切な宝物を見せるだなんてずるいです。私にも見せてください!」

「み、見せる?」

「そう、今ここで!」


 そういうと、美奈はいきなり俺のベルトを外し始めた。


「よせ、やめろよ美奈!」

「そうよ。今の状態だとフランクフルト程度の大きさよ」

「小さいのなら、大きくすればいいじゃない」

「お前ら、何の話をしてんだよ!」


 俺はベルトとファスナーを守ろうと必死で押さえつけ怒鳴り散らした。

 幸いにも、というか奇跡的にこれだけの騒ぎがあっても、ひとっこ一人通らず、雪の家からも家の人は誰も出てこない。静かで朝のさわやかな空気に包まれている。

 騒いでいるのは俺たちだけだった。

 そんな俺たちのところに、一台の真っ赤なポルシェが猛スピード走ってきた。急ブレーキをかけたようにピタリとまってみせたが、。急ブレーキ特有の不快で甲高い音などせず、感心してしまうくらい静かな止まり方だった。


「やっほ、朝から元気ね。乗ってかない?」


 車の窓が降り、中から現れた真っ赤なスーツ姿の女性がニコリと微笑んでみせた。切れ長の瞳に、丸い唇。豊かな栗色の長い髪。艶かしい肌は男を狂わせる何かを感じさせる。

 一言で言えば妖艶な美女。


「おはようございます。加藤先生……」

「巧君。私は確かに担任だけど、私との仲でしょ?春香て呼んでよ」

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