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昔話に囚われて
「お母さん、行ってきます!」
「あらメイ、どこへ行くの?」
私の名前はメイ。
村に住む普通の女の子です。
「も、森に野イチゴを摘みに行くの!」
「あらそう。
でも、くれぐれも森の端の川は渡っちゃダメよ。」
森の端の川…
「…うん。川の向こうは狼がいるのよね。」
「そうよ。奴らは私達人間を見た途端、頭から丸飲みしてしまう恐ろしく野蛮な猛獣なのよ。」
この世界では、人間と狼は決別している。
その訳は、私達は皆が知っている童話“赤ずきんちゃん”の子孫であり、
お腹に石を詰められ川で死んでしまった狼の子孫が川の向こうに住んでいる。
遥か昔に“赤ずきんちゃんと狼”が作った大きな溝は
今もなお、埋まることはなかった。
「狼…か。」
だけど私は、
その大きな溝に違和感を感じてしまっている。
森をずっと抜けていくと、
昔話で赤ずきんちゃんが花を摘んだ野原がある。
そこをもっと奥に進むと、
昔話のおばあちゃんのおうちがある。
そしてそこから先の森には
赤ずきんの子孫は誰も立ち入らない。
この先の森をずっと進むと
狼と赤ずきんの境界である川があるのです。
私はよくその川へ行く。
そして今日も。