ビスカ国王の悩み
(ううっ、まぶしいな)、目の前が光に包まれる。なんとなくジリジリと焼かれるような気分である。(熱い!熱いあついいぃいぃぃいぃ!!)弘樹は強烈な太陽の直射日光で目がさめた。
(何だ、太陽か)弘樹は太陽の方を見る。そういえば、この星の太陽は、地球のものに比べて、大きい、しかし、光の密度はは地球のよりも弱いようだ。
総合的には同じ明るさになる。
「おっはよー」
レミルの声が眠い頭に響く。そういえば、ここのところ毎日彼女の方が早く起きているようだ。
「おはよう」
ところで、今日はビスカ国王に会うべく、ビスカ城に旅立つ日である。ビスカ城は、ユナリ城下町の中にあり、ユナリ町までの距離は、およそ45キロメートルだそうである。
日本だと、バイクで下道を通っても、1時間半ぐらいで着く距離だが、この星では道が悪く、また、今回は馬で行くので、2日かかるそうである。
昨日見たのだが、馬と言っても、まるでロバのような馬であった。
スタミナはあるそうだが、遅い。
弘樹は出発の準備を始めた。今回は、バイクは持っていけないので、携帯式の通信機、食料、そして落下地点で拾った9㎜拳銃や、5・56mm自動小銃、コンバットナイフ、十得ナイフ、戦闘服(防弾仕様)などもそろえる。
今回、連絡用に、村長の家にも携帯式の通信機を一つ置いてきた。これで村長とも連絡がリアルタイムで取れるようになる。
ジーク、レミル、弘樹たち三人の準備が整ったころ、村長が尋ねてきた。
「そろそろ準備は出来たかのう?」
「はい、出来ました。いつでも出発可能です。」
ジークが答える。
「では、この書をビスカ国王に渡してきてくれ、それと、これを見せれば、国王と面会できるはずじゃ」
村長が、国王への親書と、面会するための書類をジークに渡す。
「気をつけて行ってきなさい。となりのユナリまで!」
・・・・・・・・・(さむいおやじギャグ)
さて、彼らはビスカ国王へ会うべく、城下町ユナリに出かける事になった。
2日後―――
その日の夕方、彼らはユナリ城下町に、着いた。へとへとだ。弘樹は馬などは、経験がなかったので、股はすり切れて痛いわ、馬に嫌われて落とされそうになるは、相当に気疲れした。
ここに来る途中、20人組みの盗賊に出会ったが、ジークが瞬殺してしまった。やはりとんでもなく強いじいさんだった。
「さて、もう夕方だが、急ぎの用なので、国王に会いに行くとするか。」
「えー―休みたいなー。」
レミルがだだをこねる。ふうっと、一息ついて、ジークは話はじめる。
「しかし、急用なのじゃよ、」
その後、いろいろやりとりはあったが、結局その日の内に国王に会うことにする。
―――――――
複雑な手続きを経て、彼らは王の謁見の間に通された。赤を基本とし、きらびやかな装飾が施されている。壁や柱の一つ一つに、手間のかかった彫刻が施されており、圧倒される。
しばらくすると、国王の側近と思われる人物が姿を表した。
「これはジーク様、よくぞいらっしゃいました。国王様もさぞ喜ばれるでしょう」
さすがに国王の側近だけあって、丁寧な言葉使いである。また、身なりも紳士的で、1流という雰囲気を漂わせている。
「それでは、第26代ビスカ国王、バーゲル・ハルト様が御成りになられます。」
弘樹たちは、片足を床について、頭を下げる。ジークにそうしろと言われていた。
シルクと思われる布製のカーテンが揺れる。
赤いマントをはおり、王冠をかぶったポッチャリした体系の人物が姿を表した。
「ジ―クゥゥゥ!!いいところに来てくれた!!」
王が突然、話しはじめる。その目には、涙が浮かんでいた。
「実は・・・。娘が!娘がさらわれて、ううっ」
「!!」
そこにいた一同の表情が驚きに変わる。
「王!何があったのですか?」
真剣な眼差しで、ジークが王に対して語りかける。
王は、ジークと面識があり、そしてジークの事を信頼しているようだった。
「実は、3日前、娘が、突如いなくなって、探しておったのだが、昨日、誘拐したとの連絡が来て・・・。」
王は、涙を押しこらえるような表情で、話を続ける。
「城を一週間以内に明け渡せ。さもなくば、姫、リーアは、無惨な死体となって、城に帰る事になる。と、言ってきたのじゃ。無論、娘は助けたい。しかし、城を明け渡すわけにもいかん。
そして、昨日のうちに、娘の救出部隊として、わが国の、選りすぐりの精鋭部隊を、20人ほど送り込んだのだが・・・。帰ってきたのは、たった一人」
王は、なおも話を続ける。
「そして、その帰ってきた一人の男の背中には、ナイフが紙の上から刺さっていてな。それによると、城の明け渡し期限を3日に前倒しする。3日を過ぎたら、まずは娘の腕が無くなる。そして、更に3日が経つと、今度は足、1週間たったなら・・・。解るな?と、書いてあったのじゃ。」
王が、泣き崩れる。
どうすれば良いのか?どうすれば・・・。絶望の淵、
「解りました。王!私が姫を取り戻してきます。」
「え!?」
ジークがとんでもない発言をした。精鋭部隊20人を、全滅させたであろう犯罪集団を、このお爺さんは、一人で助けに行くと言うのである。
「おお!!ジーク、そなたの心意気には、心のそこから感謝する。」
王の心の中では、絶望の淵を、静かに朝日が上ろうとしていた。
「よし、ではさっそく明日出発するぞ!弘樹!!」
(へ?)
「・・・・・・・・・・」
「返事はどうしたのじゃ!?弘樹、君も当然助けに行くよな!!」
(俺も数に入っていたのかああぁぁぁぁ!!!)
瞬間的に、弘樹の脳裏に、ちょっとした死の恐怖がよぎる。だが、状況が状況だけに、助けに行かない訳にはいかない。
しかし、本格的な初めての実戦を、まさか他の惑星でする事になろうとは・・・。
「解りました。行きましょう」
虚勢を含んだハキハキした声、その声は、自信に満ちており、皆に安心感を与えさせる。
結局、弘樹とジーク、そして、王の近衛師団隊長アー・ボーン、そして、この国一番の弓の使い手、ローバンドの四人で、姫の救出ミッションを行う事とした。
途中、レミルも行くと、だだをこねたが、4時間にもわたる説得の結果、なんとか踏みとどまってくれた。
余談だが、ジークたちは、村長からの親書を国王に渡すのを忘れた。
速く進めたい部分を省略しすぎたかもしれません。