アクレス
第二章アクレス
チュンチュン、ぴよぴよぴよぴよ・・・弘樹はだんだんと、天国である睡眠時間から、解き放たれようとしていた。カーテンの間から太陽の光が漏れてくる。外では小鳥たちがさえずっている。
(鳥類には爆発進化はあまりおこっていないようである)そんなことを思いながら、弘樹は目を覚ました。まだ頭がボーっとしている。
こんなに気持ちのいい目覚めは久しぶりのことだった。
「おっはよーーー」
彼女の明るい声が木霊する。不意に弘樹の頭は正常に回転を始めた。それにしても明るい。心の中から明るい。そう、表現するならば、ハッスルハッスルニコニコニコイェ-イ といったところだろうか。
「おはよう」
弘樹は、ちょっとテレながら、少し作り笑いをして答えた。
ちなみに彼は、レミルの命の恩人ということで、レミル一家の家に泊まっていた。何日でも、泊まっていいからね。と言われていた。
親切な一家である。こんなに親切な人は、今の日本ではあまり見かけないだろう。
しばらくすると、朝ごはんである。ここでも一家勢ぞろいする。どうやら朝と晩にご飯を家族で食べるのはこの国の風習であるようである。
日本の場合、核家族化が進み、地方ではちゃんと朝晩一緒に食べているが、都心部では、一緒には食べないという家族が多いことも事実である。まあ小さいうちから家族で一緒に食事をしない場合、あまり教育のためによくない。
弘樹は、うん、これはいい風習だ!と思った。
台の上には、おいしそうな料理が並べられていた。いわゆる御馳走である。弘樹が一番驚いたのは、肉が出ていたことであった。肉と言っても普通日本で食べる肉ではなく、マンガに出て来るような、骨が真ん中に一本とおり、肉が回りに付いている、というような肉である。
マンガやゲームでは肉のイメージとしてよく使われるが、実際にあのような肉を見たことはない。
弘樹はある意味で感動していた。
料理がやけに多いようだが、この国では、食は命の源であり、元気のもとである。だから、朝にいっぱい食べる習慣があるようだ。朝食を多く食べることにより、昼までは、元気いっぱいに働けるのである。
おいしい食事が終わり、弘樹は自分のこの星に落ちたところの近くにあった通信機を使うために、出かけようとした。
その時、レミルが話し掛けてきた。
「どこに行くの??」
「いや、ちょっと森まで散歩にさ、忘れてた記憶も戻るかもしれないし。」
弘樹はここでは自分は記憶喪失と言うことになっているので、そうゆうふうに言った。
「では私も行きます。」
(え!?)
「え!!?いや、いいよ一人で、それに危ないし」
「大丈夫、こう見えても結構強いんだから、私」
「いや、しかし・・・・。」
弘樹は、戸惑いの表情が隠せない。それを察知したのか、レミルのお爺さんが、とつぜん話しに割って入ってきた。
「まあ連れて行くと良いじゃろう、レミルはこう見えてもクシラ三段じゃからのう。」
クシラ、どうやらこの国の格闘技のようだった。
「だが、もしも孫に手を出したらこのクシラの達人、ジークは黙っておらんぞ!!」
しゅごごごごごごごご
ものすごいオーラがジークに宿る、すさまじい威圧感、彼がものすごく強いことを弘樹は本能でさとった。
しかし、あのじいちゃんは、ジークと言う名前だったのである。かなり渋い名前である。
結局レミルもついてくる事になった。
深い森の中を、弘樹たちは歩いていた。森はにわかに湿っていて、潤いのある風景、非常に心地よい。日本で森の中を歩くと、杉林が多い。もともとの森ではなく、戦後に作られた森が多いのだ。
弘樹は考えていた。
(通信機を普通に使ったら、どう考えても記憶喪失には見えないじゃないか。しかし、・・・・どどどどうしよう)
そうこうしている時に、森の中からなにか動物が飛び出してきた。弘樹にはウサギに見えた。が、何か大きい。背丈が150センチメートル近くある。しかも、体は筋肉もりもりだ。毛の上からでも、ものすごい筋肉であることがうかがえる。顔は凶悪そのもの、ウサギだけに、目が赤いのがさらに凶悪そうに見えた。
「しぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ウサギは雄叫びをあげると、襲い掛かってくる。
弘樹はとっさにナイフを取り出した。すると、その危険性に本能的に気が付いたのか、あろうことかお化けウサギは、レミルのほうに向かって突進をはじめた。速い、人間の足では追いつけない、しかもレミルとの直線状にウサギがいるので、銃は使えない。
まずいと思ったその時、
「えいっ」
なんと、レミルがウサギを投げ飛ばした。さらに追い討ちをかけるように、腕を折る。ポキポキポキ・・・。ウサギが爪を立ててレミルをひっかこうとする。しかし当たらない。決してレミルが速いわけではないのに当たらない。
ポキ、やがて、ウサギの首の骨が砕かれた。ぴくぴくしながら、ウサギは最後の時を迎えている。しかし、これは自業自得である。
「すごい強さだね。あの化け物を・・・。」
弘樹は驚きの表情が隠せない。
「柔は剛を制す、この国のことわざです。でも、弘樹君の方がずっと強いと思うけどなあ。ロークシャーを倒したんだし。」
「え、そ・・・そうかな。にこにこ」
武器に頼ってます。とは言えない。しかし、弘樹は陸自でトップクラスの射撃の腕を有している。また、近接戦闘として、コンバットナイフによる殺人術、また、空手や柔道、剣道、銃剣道などはマスターしていた。が、それらはあくまで人間に対するものである。はたしてこのような化け物相手にどれだけ通用するのかは解らない。
しばらくして、弘樹の気絶していた場所が見えてきた。
「な・・・何??これ」
周りには、出力の強い通信機器が、散らばっていた。また、高機動車(ようはいろいろな場所を走行できる車)は大破して壊れていた。
残念ながら、弘樹の場所の近くに落ちた物の大半は壊れていた。しかし、多少は使えるものもあった。
弘樹は通信機器に向かって歩き始めた。
「なんですか?これは?鉄の塊ですか?鉄がほしければ、村にもあったのに」
レミルの質問をさらっと無視し、弘樹は通信機器をいじり始めた。
他の隊員が、どこかで電波を発しているかもしれない。一筋の希望が弘樹の中に生まれた。
「ががが・・・・が・・・ぴーーががががジジジジ」
通信機が、音を立てる。
「ん?自衛隊専用周波数じゃない周波数から、なにか電波が出てる」
「ジジ・・ビビびび・・アクレス・・・ガが・・時間がな・・じじじ・・早く・・・遂行・・・誘導・・・・びびびぷつっ」
通信が途切れた。
(なんだったんだ?今のは?)
電波の発信源が解析される。どうやら、レミルの村から北東の方角、三千キロメートルから発信されていたようである。
それ以外では、電波はいっさい出ていなかった。
弘樹は考えた。(電波を通常に使える文明レベルがあるならば、この場所も電波の洪水のはずである。しかし、電波が出ていたのは一箇所だけ。あやしい。ようやく電波が使える文明レベルに達し、初めて実験した可能性も考えられる。しかし、その場合、三千キロ離れていて、あれほどの出力を発することができるはずがない。
考えられる可能性は、異文明がこの世界に入っているということかな。そして、何かをしている。もしくは、自分と同じように事故でこの星にきたのか?)弘樹は、念のため、この状態で電波を発することは危険であると判断した。しかし、電波の発信源は気になった。
「ちょっと聞きたいんだけど、北東の方角三千キロメートルになにかあるの?」
「え!!?」
レミルはなにか驚いたような反応をしていた。弘樹(しまった!!キロメートルは地球一周4万キロメートルとして、決められた単位だった!!星が違えば、こんな単位使っているはずがない!!まずいな)と、弘樹は思った。
「・・・本当に爆発進化をしらないのね。まるでモムのことを何も知らないみたい。・・・。この方角で、その距離にあるのは、動物たちの国、人間に対して侵略を繰り返している、アクレス帝国です。」
その距離?どうやら、ここの星も一周4万キロなのかもしれない。
「え!!!!そんなことが・・・。そうか。ところでモムって何?」
「・・・・・この星の名前です。」
呆れはてた様な声でレミルは答える。
弘樹は、地球で、「地球って何?」と聞いたようなものだった。
(怪しいわ。この人絶対怪しいわ。本当に異世界か何かから来たのじゃないのかしら?それに、あの音を出す箱は何??聞いてみよう)
「あの音を出す箱は何ですか」
本気で知りたそうな、真剣な眼差しで質問してくる。
「あれは無線と言って、・・・。まあ僕らの国のものだよ」
しばらく沈黙が流れた。そして、弘樹は使えそうなものを拾い始めた。
ここでも彼は、レミルの質問をしれっと無視した。さて、出力の高い、車に積むタイプの通信機は移動不可能である。しかし、携帯式の通信機一式、これらは壊れていなかったので持って行く事とした。
また、他の隊員が、ひそかに持ち込んでいたお菓子のモナカがあったので、これももっていく、武器としては、運のいいことに、5.56mmの自動小銃、いわゆるマシンガンがあった。また、戦闘服もあった。(もちろん防弾仕様)そして、バイク、あの自衛隊のオフロードバイクがあったので、それに積んで移動するこのにした。
「後ろに乗ってくれ」
弘樹はレミルに対して、バイクの後ろに乗るように言った。これで、町まで行くつもりである。
「な・・なんですかそれは。」
あわてた声で、レミルが尋ねてくる。それはそうだ、得体の知れない物体を自由に操る人間、ロークシャーと呼ばれるとてつもなく強い化け物を一瞬で葬り去る人間が、得体の知れない物体に乗れと言うのである。
「いいからいいから、」
「・・・はい」
レミルはしぶしぶ後ろに乗った。
弘樹はエンジンをかけた。
「ぷシュンシュンシュンぎゅいいいいんんん」
エンジンは、さすが日本製だけあって、落下の衝撃でも壊れてないようである。
「!!!!!!」
レミルの表情が、一瞬こわばる。
「じゃあ行くよ、落ちないようにつかまって。」
「え?え?」
ギアを一速につなぎ、エンジン回転数を4000rpmぐらいまで上げて、ゆっくりクラッチをつなぐ、バイクはゆっくり走り始めた。
だんだんと速度が付いてくる。
「ひあぁぁぁぁぁ、すごい速さ!!そ・う・か・いー」
なんか、後ろで叫んでいる。変わりやすい子だ、もう慣れたのだろうか?弘樹たちは、あっという間にレミルの村に突入した。
――――――
風がそよそよと吹いている、近くでは、小鳥がさえずり、ニワトリがのんびり歩いている、その傍らで、牛が畑仕事を手伝わされている、何処までものどかな風景、しかし、そののどかさは、一瞬にして切り裂かれた。
向こうの方から爆音が聞こえる。そこにいる誰もが聞きなれない音だった。
ウー―――――ン
とつぜん、村人たちが今まで見たこともないほどのものすごい速さで鉄の馬が突っ込んできた。その馬は、車輪が二個、前と後ろに付いている。
一見みたところ、まるで曲芸をしているかのようだった。
速い!!何という速さだろうか!!その馬は、みるみるうちに、村人たちとの距離をつめていった。
よく見ると、人がうえに乗っている、そしてそのうち一人は、見慣れた顔だった。
その馬は、村人たちの前をかすめて、進んだ。
風圧が、村人に襲い掛かる。
「ひええええぇぇぇぇ」
「なんだなんだ!!」
驚く村人、悲鳴をあげる村人、様々な光景が繰り広げられる。そして、風を切り、バイクはなおも突き進んだ。そして、レミルの家の前に止まった。
「ばるんんんんシュンシュンシュン」
エンジンを停止する。あたりを見渡すと、村人が目を点にしてこちらを眺めていた。
「ど・・・どうも」
村人が駆け寄ってくる。
「な・・なんじゃ?この鉄の馬は!?」
どうやら、敵襲ではないというような、ほっとした表情と、人騒がせな奴だ、という怒りの表情が村人に、にじみ出ている。
「まあいいじゃないですか、ね、そんな小さいことは」
弘樹が答える。しかし、決してそれは村人にとって小さいことではなかった。
不意に、レミルが話し始めた。
「なんだか知らないけどすっごく速いのよ、これ。今まで乗ってきた乗り物で一番速かったわ!うーんそうかい!!」
本当に、変わりやすい子だ。もう、これがいったいどういう物体なのかは、彼女にとってはどうでもいいことのようだ。「ガチャリ」レミルの家のドアが開かれた。中からジーク(レミルのじいちゃん)がゆっくりと出てくる。なにかすさまじいオーラをまとっていたかのように見えた。
「敵襲かと思ったぞ・・・・。」
ゆっくりとジークは話はじめる、
「もしも敵と間違えられて、孫まで矢で風穴を開けられたらどうするつもりじゃ!!!!!」
やはり、見慣れないものによって、村に突っ込んでくるのは、少し非常識だったのかもしれない。彼らは爆発進化が世界で起こっているので、ぴりぴりしているのだ。テロ後にアメリカがぴりぴりするのと同じである。
弘樹は少し罪悪感を感じない訳にはいかなかった。
「いや、そんなに驚かれるとは、申し訳ないです。」
「あの、これつまらない物ですが、どうぞ」
そういって彼は、墜落現場にあって、隊員がこっそり持ち込んでいたお菓子のモナカを取り出して、差し出した。
弘樹のこの行動は、どう考えてもおかしな行動だが、とにかく、ジークの怒りを鎮めたかったようである。
「フム」
ジークは、モナカを手にとり、珍しそうな面持ちで、眺めている。
彼はまず、ビニールによって外気と遮断してあることに驚いたようだった。
パリパリパリ ビニールが引き裂かれる。そして、その中から一つをとり、ゆっくりと口に運んだ。
弘樹は(その場で食うんかい)と思ったが、口には出さなかった。
「う!!!!」
とつぜんジークがうめき声をあげる。
「どうしたの?おじいちゃん!!」
心配そうにレミルがおじいちゃんに話し掛けている。
「ど・・・。どうしたんだ!!」
村人たちが、心配そうな表情で、ジークに話し掛ける。
村人たちは毒でも入っていたのかと思い、突き刺さるような視線で弘樹を見る(やはりあいつは敵だったのか?)この間は、5秒ぐらいである。
(そ・・・そんな!もしかして、もう腐っていたのか?そういえば、賞味期限を見るのを忘れてしまった。)
弘樹も心配そうである。
「うまいぞぉぉぉぉぉ―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(へ?)
「この微妙な甘さ!さっぱりしていて、甘いのだがしつこくなく、それでいて、このつぶつぶの物体が、口の中で、ほのかにころげて、絶妙なハーモニーをかもしだしている!!また、この皮がなんともいえない歯ごたえを作り出し、・・・ああなんて幸せなんだ!長生きはするものだな、こんなにうまいものにめぐり合えるなんて!!感動じゃ―――――!!!!!!!!!」
まるで、味王のようなことを言っている、これほど喜ばれるとは・・・。それほどこのジークにとって、おいしかったらしい。
「こ・・この食べ物はなんという食べ物なのじゃ?」
ジークの目は、あまりのうれしさのため、すこし潤んでいる。
「モナカといいます。」
「モナカ・・・・か・・・・。」
そこで、レミルが一つ取って食べてみた。
「うーん、たしかに甘くておいしいけど、私はイチゴの方が好きだけどなー。」
レミルはイチゴには目が無いらしい。また、この星にもイチゴがあるようである。
「うーん、この美味さがわからんとは・・・。もったいないのう。」
テケテケテケテケテーン(ジークの性格に、モナカ大好きが追加された)
「さて、それはいいが、おぬしは一体何処から来たのか、そろそろ本当に教えてもらおうかのう。悪い奴ではなさそうだが、得体の知れない者を、村に置いていたのでは、皆の不安が増すばかりじゃ。・・・・。本当のことを話してもらえんかのう」
ごもっともな意見である。
「・・・・わかりました。お話します。」
「フム、ではとりあえず中へ入りなさい。」
「・・・・・はい。」
弘樹は家の中へ入り、テーブルの奥のほうに座らされた。しばらくすると、村長や、村の長老たちが、駆けつけてきた。そして、弘樹を取り囲むように、テーブルを囲む。
弘樹は、基本的に、色々と話すつもりではいたが、武器の性能や、その他軍事機密に触れるようなことは、話すつもりはなかった。なぜならば、もしもこの星の文明が非常に遅れていた場合、武器の性能を知ることによって、いらぬ混乱を招く結果につながる可能性がある。
とにかく、信じてもらえるかわからないが、武器以外で話せることはすべて話そう。弘樹はそのように思っていた。
ジークが語りかける。
「さて、まずは、何処の国から来たのか話してくれ。」
「・・・・はい、私は日本国から来ました。」
村長が尋ねる。
「日本じゃと?聞いたことの無い名前じゃが、何処にあるのかのう?」
「おそらくこことは違う惑星、地球という星です。」
「これは異なことを・・・。星から来たというが、星に人が住んでおるのか?」
村の長老が、話に割って入ってきた。
「ふぉふぉふぉ、こやつは最新の天文学でも学んでおるのじゃろう。たしか、最新の天文学では、空に浮かぶ星ぼしは、あの太陽のようなものや、このモムのような星かもしれんという仮説があるのじゃ。ふん、そんなものは糞の仮説じゃ!!そんなものでだまされるワシではないわ!!」
怒りっぽい長老である。弘樹は、(これは厄介だ)と思い始めていた。
「いや、そう言われましても・・・。」
そこで、また村長が尋ねる。
「おぬしはアクレス帝国の手の者ではないのか」
アクレス帝国、突如現れた、爆発進化した動物たちの国家である。
「違います。」
弘樹ははっきりと答える。
「まあおぬしの言うことが本当だとして、ここに来た目的はなんじゃ?」
そこで、ジークが話に割ってはいる。
「まあまあ、色々聞いても埒があきません。ここは、彼に直接話すように呼びかけましょう。」
「さて、弘樹君、レミルを助けてくれた君にここまで聞くのは酷かも知れぬが、君の来た目的、どうやって来たのか、君のいた星のこと、君がどのようなところで生活していたか、など、総合的に話してはくれぬか?」
「・・・・・解りました。お話いたします。まず、星ですが、この星からは、どの方角になるのかは解りませんが、太陽系第三惑星、地球という星に私は住んでいました。日本は、その星の極東にある島国です。私たちの星は、緑豊かな星です。まあここの星の方が、空気も緑もきれいなようですが・・・。」
一呼吸おいて、さらに話を続ける。
「で、私たちの国を他国の侵略から守るために、自衛隊という組織を日本国は持っています。私はその、陸上自衛隊第七機甲師団に入っていました。」
「奇行師団?なにか変なことでもするのか?」
村長が、割ってはいる。
「村長、静かに」
ジークが村長に注意する。
弘樹は続けた。
「そして、演習中に、正体不明の物体に師団ごとさらわれました。自衛隊は、相手から攻撃があるまで、政府の指示が無い限り決して反撃してはならないので、この物体が近づいてきた時も、攻撃はしませんでした。また、吸い上げられたあとに、反撃は出来るのですが、そうなると、この物体が私たちを乗せたまま落ちることになります。そのような自殺行為をするわけにはいきません。」
「それで?」
「はい、そして、私達は宇宙につれていかれました。しかし、なにか事故が起こったのかわかりませんが、とつぜん爆発音とともに、物体が揺れ始め、この星に落ちていきました。そして、相当運が良かったのでしょうが、私は生きていました。そこから先は、皆さんの知るとおりです。ただ、私はあなた方に危害を加えるつもりは一切ありません。できれば自分の星に帰りたいと思っています。」
「ほう、ではあの鉄の馬のようなものは、君たちの星の物なのか?」
「・・・・そうです。」
・・・・・・・・・・・。
一瞬の沈黙が流れた後に、ふたたび、あの長老が、話し始める。
「この嘘つき目が!!そんなはずはなかろうが!!おい、皆こやつの言うことを信じるのか?星に人が住めるわけがないわ!!ワシらをからかって面白いか?こやつはアクレスの手のものに違いない!!」
「まあまあ、長老、あまり熱くならないで下さい」
ジークがなだめている。
「おぬし!こやつを信じるというのか!?アクレスの手先に違いないわい!!」
「アクレスの手先ならば、相当戦力になるロークシャーを本当に殺したりはしませんよ」
「くっ!!奴はロークシャーを殺して、レミルを助けることにより、我々に取り入って、ゆだんさせたところでいっきにこの村を占領するつもりなのじゃ!!ジーク!おぬしのような達人もおるから、正面から来るとやりずらいのじゃ!そのような卑怯な手が、いかにもアクレスらしいじゃないか!!」
「長老!それは言いすぎです!!」
ジークは、ちょっとすごんで言った。が、すさまじいオーラには変わりなかった。
「ぐっ!ならばおぬしらで勝手にするがよいわ!ワシは認めぬぞ」
そう言い放つと、長老は部屋のドアを蹴って、外に出て行ってしまった。
そこで、村長が、話し始める。
「やれやれ、短気な奴じゃ、フム、おまえさんの言い分はよく解った。まあ鉄の馬などを見てみると、ワシが知る限り、同じ物を作れるほど優れた技術をもつ国は、おそらく、ファルシア大陸にある、東の技術、軍事大国、ジーポウン、じゃろうな。アクレス帝国にはそれほどの物は作れん。おぬしの言ったことが本当でも嘘でも、まあ我々に害のないことは確かな様じゃな。」
「そうですね・・・。」
ジークが相槌をうつ。
「フム、色々答えてくれて、ありがとう。おぬしには、害がないこと、村人にもよく伝えておくよ。」
どうやら村長の理解が得られたようである。
「ありがとうございます。ところで、村長、一つ気になることがあるのですが・・・。」
「なんじゃ?」
「はい、実は私は、今日、私の初めてモムに落ちてきた所に行ってまいりました。そこで、通信機、まあこれの大きいものです。」
弘樹は携帯式の通信機を取り出し、その場で実演して見せた。
「なんと!!離れていても話せるのか!!?す・・・すごい」
「で、このようなものの出力の大きいもので、同じこの星に落ちたであろう、自衛隊の仲間と連絡が取れるかと思い、試そうとしたのですが・・・。」
「フム」
「すると、今現在のアクレスと呼ばれるところから、非常に出力の強い電波を受信しました。また、その他には人工的な電波は一切出ていないので、この星ではまだ電波は実用化の段階には入っていないと思います。」
「しかし、初めて作ったという可能性もあるじゃろう。技術立国のジーポウンならば、作れるかもしれん、それを、アクレスの連中が盗み出したという可能性もある」
「突然あのような出力の強い通信機は絶対に作れません。」
「そうか・・・。おぬしがそう言うのならば、そうゆう物なのだろうな、ところでそれはどういうことを意味するのかのう?」
「はい、この星で、この星以外の何者かが何らかの目的で、動物たちを操っていると推測されます。」
「ほう、君たちの星の者ではないのかね?」
「違います。我々の技術では、この星まで来る技術はありません。」
「操っていると、おぬしは申したが、動物を操るようなことが、出来るのかね?」
「・・・・・解りません。ただ、自然現象では絶対にあのような進化は起こらないということが言い切れます。」
「天空からの侵略者・・・・か・・・。」
「もしもそれが本当ならば、大変な事じゃ!すぐにでもビスカ国王に知らせなければ・・・。」
「全面的に信じていただけるのですか?」
「フム、おぬしの言うことには説得力がある。また、鉄の馬も見たし、遠くにいても話せる箱も見た。信じようではないか」
「ありがとうございます。ところで、ビスカ国というのは何処の国なのですか?」
「・・・・この国じゃ。ついでにこの村はフィロス村じゃ、覚えときなさい」
「・・・・はい」
「さて、となるとこれから大変じゃな。弘樹君や、この国の王が居るビスカ城は、ここから北へ向かった、ユナリ商業圏の城下町に囲まれておる。これからワシが書をしたためるから、ちょっと国王まで届けてくれんかのう。」
「わ・・私がですか?」
「そうじゃ、おぬしの鉄の馬は速そうじゃからな。」
その話は、とつぜん一時中断することになった。
「私も行くわ」
「レミル!」
「ごめんなさいね。盗み聞きしちゃった。まあそういうことなら、道案内する人が必要でしょ。北と言っても広いんだから。この星の人じゃないと、道に迷っちゃうわ。ね、村長」
「ま・・まあのう。じゃあレミルと弘樹君に頼もうかのう」
(ふふふ、やったわ!!うーん、久しぶりに、町にいけるわ!お気に入りの服買ってこよっと)
「ワシも行くぞ」
ジークも行くと言い出した。
「へ?」
村長も驚きの表情が隠せない。
「若い年頃の孫娘と、男を、二人きりで行かす訳にはいきません」
「しかし、あの鉄の馬は二人の・・・。」
「ワシも行きます!!!依存ありませんね。村長!!」
村長の話の途中でジークが遮る。
やはり、ジークは迫力がある。
結局、三人で、馬で行くこととなった。
彼らの本当の冒険は、これから始まることとなる。アクレス帝国の本当の目的は何なのか、なぞの通信の意味するものは?爆発進化いったいそれが何を意味するのか?この時点では誰にも知り得ない事だった。