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ユリシンクス  作者: みのろう
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未開の惑星

第一章未開の惑星


(ううっ、ここはどこだ?)

暗闇の中で弘樹は気がついた。体中にすさまじい痛みが走る。

(たしか僕は・・・他の隊員たちはどうなってしまったんだ?)

いいようのない不安がよぎる、頭も痛い・・・体も痛い・・・。

しかし次の瞬間に目にしたものによって弘樹はその不安から解き放たれたと同時にあらたな不安が襲ってきた。

(月?)

木々の間から微かな光が地面を照らしていた。弘樹は月のほうを見た。木々に隠れてはっきりとは見えないが、その大きさはよく分かる。すさまじく大きい。地球から見る月の直系5倍はある。こんなに大きいと潮の満ち引きが大変だなあ・・・そんなことを弘樹は考えていた。

(一体ここはどこなんだ)

 弘樹はそこでまた意識が飛んだ。


「う・・・。」


 弘樹は目を覚ました。あたりを見回すとものすごく深い森である。潤いのある風景、木々はコケにおおわれていて、空気が非常にうまい、木々の間から太陽の光が差し込んで神秘的な感じがする。

 まだ体は痛かったし、他の隊員もぜんぜん見当たらなかった。いったいなにがどうなってしまったのだろうか?


 少し歩いていると小さなせせらぎが聞こえる。水の流れる音だ!彼はその音の方向に向かって走った、コケの付いた岩を飛び越え、誰かが通った跡のある道を走った。そして、小さな小川についた。とてつもなく清んだ水、きれいで美しい水だった。彼は非常にのどが渇いていたので、水をそのままのどに、流し込んだ。水が、のどを伝い、胃に到着するまでの、過程がよくわかる。日本で売っている「-のおいしい水」の100倍はおいしかった。

一休みしていると、人の声が聞こえてきた、いや、声と言うより歌であった。透き通るような心地よい歌、しかもなぜか日本語でそれは歌われていた。


(もしかしてここは日本なのか?)


 その歌のするほうへ、弘樹は吸い寄せられるように歩いていった。


 ふと見ると、歌を歌っているのは女の子であり、服は見たことのない珍しい服を着ていた。日本人のような顔立ち、そして整った輪郭、きれいな黒髪、彼がいた日本と言う国の都心部に生息する肌が黒くて金髪でわがままでぎゃあぎゃあうるさい女とは大違いである。彼がその子に声をかけようとした次の瞬間、森の方からすさまじい雄叫びが上がった。弘樹の背筋が凍りつく。本能的に自分よりもはるかに強い者の声であることは理解できた。向こうの方から木がなぎ倒されていく。そして、その声の主が姿を表した。


(恐竜?)


弘樹の頭の中で、一致する動物はその言葉しかなかった。その後、恐竜はものすごい速度で女の子の方向に走っていった。

速い!いったい時速何キロ出ているのだろうか?


(食べようとしている!!このままでは恐竜に食べられてしまう!)


いや、彼は恐竜と思ったのだが、専門家が見たならば、それは明らかに恐竜とは違う化け物であった。


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 女の子の悲鳴が森中にこだまする!


「あぶない!!」


弘樹はとっさで女の子と恐竜の間に割って入った。しかし、恐竜のものすごい形相と、迫力を至近距離で見た弘樹は割って入ったことをちょっと後悔した。


(あああ!やっぱり格好つけるんじゃなかった!)


 不意に、恐竜の口が開く。

 

「邪魔をするな!!この餌がぁ!!」


 腹に響き渡るような声、この世のものとは思えないほどにおぞましい。

 恐竜はそう言うと弘樹に向かって襲い掛かってきた。きょ・・恐竜がしゃべったぁぁぁぁぁ!!!と、弘樹は思ったが、そういう暇などなかった。

 彼は恐竜の一撃をかわした、空気が震える。奴は勢い余って、その一撃を、弘樹の後ろにあった、岩に向けてぶつけた。


(しめた!・・・・・・・!!!!!!!!)


しかし――!

なんという威力だろうか!恐竜は弘樹のかわす前に後ろにあった岩を粉々に粉砕した!!


(ま・・・まずい!!!)


恐竜と思われる生物は、なおもすさまじい形相で、弘樹の方向へ、突進してくる。恐怖のあまり、おかしくなりそうだ。彼はとっさに、その辺に落ちていた岩を拾って恐竜に向かって投げた。かなりの質量のある石である。人間がこれを頭に食らったならば、無事ではすまないだろう。


(どうだ!?)


くっ!!

全く効かない・・・恐竜はそんなものに当たってもひるむ様子もなく、さらに突進してきた。


(まずい!!これを食らったら死む!!)


死の恐怖が脳裏をよぎる。これが本能というものだろうか。

彼は背負っていた自動小銃を取り出し、恐竜に狙いをつける。この辺は、いくら恐怖があっても、条件反射で動く。3発の銃声――すさまじい速度で鉛の玉が回転しながら飛んでゆく、恐竜の体が、小刻みに震え、森中に銃の音はこだまして、頭、腹、口に銃弾をくらった恐竜はその場に倒れこんだ。

即死である。


ズーーン・・・すさまじく重そうな地響きと共に恐竜は地面に倒れこんだ。何リットルあるのかと思うほどの血が、地面に吸収され、その付近の大地が赤く染まる。


(ま・・・まずった!!銃を使ってしまった!・・まあ正当防衛だし・・しょうがないかなあ。)


とかいうことを思いながら彼はとりあえず声をかけた。


「あ・・あの、君、大丈夫?」


 頼り無さそうな声である。


「あ・・あ・・ああ・・・」


女の子は恐怖に震えている。・・・無理もない、一瞬とはいえ死の恐怖にさらされたのだ、大体、弘樹自身も震えが止まっていない。まだ何が起こったのか分からなかったようだ。


 しばらくの時間がたって――


「あ、あの・・・ありがとうございました。」


 彼女は珍しそうに、そう言って来た。しかし、弘樹に対する恐怖はまだある様である。おそらく、何者なのだろうか?信用していいものだろうか?とでも思っているのだろう。


「あの・・・私レミルといいます。助けていただいてありがとうございます。お礼がしたいので私の家まで来ていただけますか?」


 お礼をするから家に来てくれだなんて・・・なんて良い子なんだろうか。


(うーん、ここがどういうところか分からないから情報収集のためにも行ってみるか。)


 そう、まずは情報収集をせねば、一体何が起こって、ここは何処なのかさえも、弘樹は知らない。


「うん、喜んで行かさしてもらうよ。」


 彼はレミルの家に行くことになった。


 少し歩くとその村は見えてきた。はっきり言って田舎である(筋金入りの)しかしなにかいい雰囲気を出している。水車が回り、小鳥がさえずり、田舎ではあるが、清潔感がある。しかし田舎度は群を抜いている!!効率の悪そうな風車も回っていた。この村の、家は、一般的に田舎の雰囲気である、古くてぼろい家とは、かけ離れているようだ。人口は少ないが、家は比較的新しくて、清潔である。


「たいていのロールプレイングゲームはど田舎から始まるんだよなー・・・」


 弘樹の独り言である。


「え?ろーるぷ??」


 レミルがそれに反応する。


「え?いやいや、独り言だよ」


 そう、独り言。


 そういえば、たいていのロールプレイングは田舎から始まることが多い。まあどうでもいいことであるが・・・。


 そうこうしているうちに、弘樹はレミルの家の前までやってきた。


「ここが私の家です、どうぞ、遠慮なさらないで、お入りください」


 親切に、彼女は話し掛けてくる。相変わらず、声は透き通っている。


「あ・・、うん、お邪魔します」


 弘樹は、別に悪いことはしてないのに、なにか悪いような気がした。

 家は、清潔感のあるレトロな家だった。しかし、作りはほんとうにファンタジーな作りだった。レンガでできていて、電気と言うものは当然通っていない。今の日本では、もうこのような作りの家はお目にかかれないであろう。


 彼は部屋に案内され、しばらくすると食事が出てきた。


そして、レミルは家族を紹介しはじめた。みんな人の良さそうな顔をしている。ただ、レミルのおじいちゃんだけは、威厳に満ちていた。


 一通り紹介が終わり、彼らは食事をとりはじめた。

レミルの父が、話し始める。


「娘を助けていただいて本当にありがとうございます。話に寄ると、なんでもロークシャーを、倒されたとか、あれほど凶暴な生物を倒せる人間はそうおりませぬ。さぞかし名の知れた方なのでしょう。ところで弘樹殿は何処からきたのですか?」


 弘樹は、言いたかった。(実は私、地球と言う星の日本と言う国の陸上自衛隊第七機甲師団に所属している天城弘樹と申しますが、なんか、いきなり正体不明の物体が現れて、師団ごとさらわれちゃったんです。)

と、言いたかったが、とても信じてもらえるとは思えずに、そうは答えなかった。まあ私たちが、山でなにかあって人に助けてもらって、その人が、実は私、さらわれた宇宙人なんです。なんて言っても信じないのと同じことである。

 で、結局弘樹はこう答えた。


「いや、実は旅の途中でして、たまたま娘さんを見かけて、たまたま恐竜に襲われそうに成っていたので、たまたま助けたまでです。」


 緊張していたのか、弘樹は、話すときに、「たまたま」を連発した。

彼は微妙に話題をそらし、何処からきたのかは答えなかった。


「恐竜?ロークシャーを恐竜というなんて・・・。弘樹殿はいったい何処からきたのですか?」


レミルの父が、突っ込んでくる。

 弘樹の微妙に話題そらし攻撃は効かなかった。後で知ったことだが、

ロークシャーを恐竜と間違えることは、犬に、「これ猫」といってしまうほどに常識的なことだった。


「いや・・・。その・・・なんと言えばいいか・・・。」


 レミルの家族たちの目線が突き刺さる。


(うう、どうしよう)


「まあまあ、弘樹さん困ってるみたいだから、あまり詮索しない方がいいんじゃない?それにロークシャーだってあっさり倒したんだから、」


 レミルが、助け舟を出してくれた。


「あっさり!!??そんな!!わが国の軍隊の近衛隊でも、2,3人がかりでやっと倒せるのに、本当にあっさり倒したのか?」


 なにか、非常に驚いている。そんなに強い生物だったのだろうか?


「うん、30秒ぐらいかな、もしかしたらじいちゃんよりも強いかも」


じいちゃんより強いかも?レミルのじいちゃんって、そんなに強いのだろうか?


「それはすごい、で、何処からきたのですか?」


 もう逃げられない、と弘樹は思った。


「いや、実は、私も覚えていないのです。頭を強く打ったみたいで、記憶も断片的でして。」


 苦しい言い訳、自分でも解っている。しかし、もしもこの世界で生きていこうと思ったら、「宇宙から来ました」なぞと言う言葉を吐いて、変態扱いされるのだけは、避けなければいけない。

 レミルのじいちゃん(ジーク)が、話し掛けてくる。


「ではなぜ初めからそう言わないんじゃ?うそをつくとあやしまれるに決まっておろう。・・・まあそれほどの腕をもっておると、あまり言いたくないのもわかるがのう。」


(そうか、その手があったか!名の知れた剣士(剣士?)の隠密の活動家!)


「今はただでさえ、爆発進化、で、人々は警戒心をもっておるところじゃ。まああんたシャンは悪気はなかったのじゃろうがのう。・・・やれやれ、年を取ると説教くさくなってしもうたわい。まあ可愛い孫を助けてくれたあんたシャンにはかんしゃしとるよ。ホッツホッツホ」


 爆発進化?なんだろう。

「爆発進化ってなんですか?」


 一瞬異様なほどの、沈黙が流れる。


「・・・・・・え?いくら記憶喪失だからって、そんなことも知らないの?本当は異世界かどっかから来たんじゃない?まあそんなわけ無いか。ははははは」


 彼らが、口を合わせて、話す。

 当たらずが、遠からずな答えであった。しかし、爆発進化を知らないということは、地球で言えば、地球が丸いという事を知らないのと同じぐらい有名な事柄であった。

爆発進化とは、一年ぐらい前から起きた現象で、動物たちが急激に進化しているそうだ。ある動物は、筋力が急激に進化し、またある動物は、知能が急激に進化していると言う。そして、ほとんどの動物に見られるのは、進化した動物は、必ず人間を襲うようになっているそうである。

 そして、知能が発達した動物は、なんと言語が話せ、国を形成しているというのである。そして、なぜか知能を持った動物と、筋力のみが発達した動物は、協力して、人間を襲ってくるのである。

 ちなみに、ニワトリは変わっていないそうだ。

彼は一通りそれらの説明を聞いた。


「そんなことが・・・。実際問題として起こりうるのだろうか?」


 真剣な眼差しで、弘樹は話す。

それに対して、真剣な表情で、レミルのお爺さんが、答える。


「だが、ここでは実際に起こってきているのじゃ。・・・。困ったものじゃ。動物が知能をつけ、人間を襲ってくる。まさに地獄じゃ。まあ奴らは今のところ組織だった行動ができないようじゃからなんとか各国は撃退しておるようじゃがのう。」


「しかし、一体なにが原因でこんなことが起こっているのでしょうか?自然現象的なものか、もしくは人為的なものか」


 そうこうしているうちに、その日のよるはふけていった。

 弘樹の案内された寝室は、6畳前後の小奇麗な所だった。明かりはロウソクでそれの照らし出す明かりの雰囲気は、何処となく暗く、ちょっと寂しく、しかし神秘的で、まさに物語の中のようであった。

 一ヶ月前までは、自分はTVゲームなどで遊んだり、バイクでツーリングに行ってたりしていた。そして、日本経済の行く末を考えたり、極東や中東が緊迫していると、心配もしていた。

 しかし、こうなってしまうと、心配事などどうでもいいことのように思えた。

弘樹は寝る前に、窓の外を見た。星空が見えた。満点の星空である。都会に住んでいたら、絶対に見ることはできないほどの美しい星空であった。空気も信じられないほどに清んでいる。深呼吸をした。――――――――  -非常に気持ちいい。―――――――しかし、その星空は、弘樹の知らない空、彼の知っている星座は一つもない。

 不意に、不安が訪れた。もしかすると、もう二度と地球には戻れないかもしれない。いや、その可能性のほうが高い。だいたい、地球の現在の科学力では、すべてを費やしても、この星には来る事はできない。

 厳しい現実、夢なら早く覚めてほしかった。

しかし待てよ?もしかすると、地球に近い星かもしれない。まあ近いといっても太陽系ではないことは確実だから、帰ることはできない、しかし、連絡ぐらいなら取れるかもしれない。地球と連絡が取れなくても、もしかすると、自分以外にもこの星で生きている隊員がいるかもしれない。そういえば、自分の落ちた近くに、通信用のアンテナも落ちていた。よし、明日は通信用のアンテナで電波がどこかからか出ていないか探しに行こう。

 弘樹はそんなことを思いながら、深い眠りについた。


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