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ユリシンクス  作者: みのろう
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ゼロ章

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

序章

 西暦20XX年、7月7日――


 例年より暑い夏、梅雨があけ、蝉の声がミンミンと響き、本格的な夏の到来を感じさせるこの日、日本は全国的に透き通るような爽快な青空が広がっていた。

世界はともかく、この日本の国内は、いつもと同じような平和な一日となる予定だった。

 このころ、日本を瀕死に陥れた某政権も失墜し、超円高は是正され、産業は息を吹き返した。一般的には普及していないが、NEDが量子コンピューターを開発してスーパーコンピューターのシェアを独占していた。アメリカなどには100パーセントの関税をかけられていたが、それでもアメリカ市場を独占状態にしていた。

 それほど量子コンピューターは優秀なのである。

 また、自動車産業も、燃料電池車が一般的となったため、技術力の高い日本企業は破竹の勢いで伸びていた。

 そう、日本経済は、今息を吹き返そうとしていた。


 航空自衛隊のAWACS(空中早期警戒機)は、いつものように飛行していた。彼らの仕事は、空からの日本に対する侵入者を早期に発見することである。

 航空自衛隊では、「バッジシステム」と呼ばれるレーダー警戒網を運用している。全国に設置された地上レーダーサイトが、24時間日本領空を監視、侵入者を警戒する。だが地上レーダーサイトは、超低空や、遙か洋上にいる航空機を探知しにくい。地球の丸さがあるため、遠くになると低空を飛んでくる物体を捕らえきれないことが多いため、このような大型レーダーを積んだ機体が高空から領空の監視をする。

 警戒機と地上レーダーサイトは互いにデータ回線で結ばれており、最新情報をリアルタイムで共有することができる。また、AWACS(空中早期警戒機)の任務は警戒だけではなく、スクランブル発進した戦闘機に侵入機の位置情報を与え、誘導、管制を行う事も任務である。

 E-767(AWACS)の上には円盤状のレーダー(AN/APY-2)が積まれており1分間に6回転する。内部にある三次元レーダーは、高度9000メートルで半径800キロメートルをカバーする。


「――――??」


レーダーに反応が現れた。


「―――――――!!!!」


 目を疑う。もう一度確認する。


「ば・・・ばかな」


 レーダー監視員は唖然とし。もう一度目を凝らしてレーダーを見てみる。そのレーダーパネル上の光点、とてつもなく大きい。

すぐに彼はレーダーの故障かと思い、調べてみる。・・・・・故障ではない!

 そして、念のため、敵味方識別装置のスイッチを入れる。

アンノウン、国籍不明機である。


「れ・・・レーダーに反応、1機、8時の方向、距離350マイル、高度180000フィート、速度は・・・ゼロ!?いえ、高度が下がっています。垂直降下している模様。レーダー反射面積が異常に大きいです。この大きさだと数十キロに達すると思われます!!!!!!」


 機内に緊張が走る。ちなみに、一マイルは1609メートルである


「ばかもの!!勤務中だぞ!!」


 上司が、彼を叱責する。


「冗談ではありません!!!」


「なんだと!?」


 上司が、レーダーを覗き込む。彼の部下が言ったとおりの数値がそこにはあった。


「故障ではないのか?」


「調べましたが、故障ではありません」


「高度180000フィートだと!!しかも数十キロ!?・・・それは何処に向かっている!!」


 上司は、混乱していたのか、最初のレーダー監視委員の発言を聞き逃したようだ。そこで、レーダー監視委員が発言する。


「垂直降下中、高度を段々と下げてきています。高度176000・・・173000・・

所在地は・・・!!北海道の沖合い、35マイル」


「なんだと!!本土に近すぎる!!なぜ気がつかなかったのだ!」


「高度が高すぎたためです。」


「っばかもの!!」


 報告をうけた司令部は、蜂の巣をつついたような大混乱におちいっていた。いきなり太平洋側から飛行物体が降下してくるとの連絡があり、それが大きさ数十キロに達するというのである。びっくりしないほうがおかしい。

 なぞの飛行物体は、なおも降下を続ける。


 ビービ―ビービ―ビー!!!!!!!!!

航空自衛隊の、とある基地で、けたたましくブザーが鳴り響いた。

 スクランブル発進の合図だ。

待機中の隊員は、全力疾走で自機に向かって走りだす。


(やれやれ、またか)


 パイロットである田崎は、まあまたいつものように、どこかの国の民間機が迷い込んできたのかと思い、たいして緊張はしていなかった。

 どうせいつものこと、適当に近づき、注意して進路を変えてやればよい。

 管制塔から指示が入る。


「スクランブル発令、離陸を許可します。離陸後は進路を東に取り実用上昇限度まで上昇し、目標へ向かってください。目標の距離、35マイル、高度164000フィートで垂直降下中、」


 5分以内に、航空自衛隊のF-15J改、制空戦闘機が、アフターバーナーを点火して、フル加速で舞い上がる。

 あたりには、バリバリといった雷のような腹に響く音が鳴る。

F-15J改、

全長19.4メートル、

全幅13.1メートル

全高5.6メートル

全備重量25トン、

最大速度マッハ2.5

実用上昇限度19000メートル、

航続距離4600キロメートル

これは航空自衛隊の制空戦闘機で、対空専用戦闘機としてアメリカによって作られたF-15Cを、日本風に改造し、それを更に強化したものである。F-15は、この時代においても、世界トップクラスの制空戦闘機として、その名をはせていた。ちなみにF-15Jは、一機あたり100億円を超える代物である。

 アメリカの価格だと、もっと安いのであるが日本はF-15をライセンス生産しているため、価格が跳ね上がる。

 兵器の自国生産をしない国は、ライセンス生産せずにそのまま輸入したとしても、高い値段をふっかけられる事が多い。


「目標、1時の方向、上空です」


 管制塔からの指示が、流れ続ける。

 AWACSのレーダーで捉えた物体の位置や速度は、リアルタイムで、地上の管制基地や、空中の戦闘機へ送られる。しかし、この場合、本土に近すぎるので、地上のレーダーでも余裕で確認できる。

 田崎は、愛機をさらに上昇させた。

 透き通るような青い空に向かって同機は舞い上がっていく。同機の翼端では気流が乱れ白い線を引き、排気口から出る熱により同機の通った後に白い航跡を引く。

 スクランブル発進というのは、通常2機で行われる。今回の場合も、当然、もう1機ついてきている。


(高度16万フィートだと?いったい何を要撃するというのだ!)


 田崎は疑問に思ったが、口には出さない。いくら不可解な命令であったとしても、命令には絶対服従、必ず疑問の余地なくそのとおりに働くのが、軍人である。非効率的に思うかもしれないが、軍隊は部隊として動くため、上下の規律はしっかりしていないと機能しない。

 まあ自衛隊は軍ではないと言われれば、それまでだが・・・。


「物体の高度は、20000フィートまで降下し、北海道へ向かって動き始めた。目標の国籍不明機は恐ろしく大きいので、距離の誤認による物体への衝突に注意してください。」


「・・・・了解」


 田崎は、一体なにが起こったのか、という気持ちにとらわれていた。目標に対する距離の誤認に注意するほど大きいと言うのは、一体なんなのだろうか?

 しばらくすると、物体が目視圏内に入ってきた。

 物体は、恐ろしく大きく、円盤型である。現在の高度は、17000フィートを物体は飛行しているようである。しかし、高さも2キロ近くあるので、どちらで測ったらいいのか解らない。少なくとも、下面は17000フィートだが、上面は、それよりも2キロ上にある。

 あまりにも大きいため、円盤型の物体が下降していると、物体により空気が押し出され、高速気流となり、物体の下部は白い雲に覆われているように見える。まるで、雲の上に乗っているがごとく。


(そ・・・そんな・・・ありえない、ありえない)


 その物体を目視した瞬間、田崎は、我が目を疑った。


「物体を目視しました・・・。」


 なんであろうと、見たものは後方へちゃんと伝える。


「どういう物体か?」


 無線が入る。


「・・・・大きいです。とてつもなく大きい円盤状の物体です。」


 かれは、心の底から動揺していた。どうすれば良いのか、迷ってしまう。


「では、飛行物体の国籍を確認せよ」


(国籍って・・・。どう考えても地球のではないではないか)

 

 でも、彼は自分の仕事はきっちり行った。

田崎は、無線の周波数を、国際周波数に切り替えて、語りかける。


「こちらは、JASDF、こちらはJASDF、貴機の国籍と、航行目的を述べよ。」


 これらの言葉を三回以上繰り返す。

 しかし――

返信は無かった。

 さらに続ける。


「こちらはJASDF、貴機は日本の領空を侵している。貴機の国籍と航行目的を述べよ」


 国籍不明機からの反応は無い。2機のF―15Jは、円盤の周囲を飛びながら、国際周波数で何度も語りかけたが、結局まともな反応は得られなかった。


「我、国際周波数にて呼びかけるも、反応無し、物体は北海道方向にゆるやかに動き始めた模様」


 本来の手順であれば、威嚇射撃を実施するところである。しかし、明らかに文明レベルの違う物体を前にして、威嚇射撃は対惑星間戦争を引き起こす可能性すらある。防空司令部からの返答は、監視を続けよ。ただこれだけだった。


―――――――


 午後2時35分――

 北海道であるのにやはり夏は蒸し暑い、湿度が高い。

 様々な虫に刺されながら、匍匐前進を続ける。手には重い小銃を持ち、頭には首の折れそうな鉄兜をかぶり、分厚い迷彩服を着て匍匐前進を続ける。そう、今は訓練中。

 陸上自衛隊第七機甲師団は北海道のとある訓練場において訓練中であった。訓練中のさなか、天城弘樹は指令により、匍匐前進を続けていた。耳にはイヤホン(指令を受ける受令機)をつけ、司令部からの指令を受けながら、作戦行動を実施する。

 天城弘樹、彼の小さい頃の夢は宇宙飛行士になりたかった。しかし、勉強が嫌いで、結局三流大学に進学、職も無く自衛隊に入隊、航空自衛隊に行きたかった、パイロットになりたかったが、視力が悪く、陸上自衛隊で、今彼はむなしく人生の意味を感じながら匍匐前進を続けていた。

 2時50分頃、受令機が変なことを言い始めた。

 「これより、上空に巨大な飛行物体が飛来する。各隊攻撃は控えるように、いかなる事があっても攻撃は許可しない」

 (は?なにこれ)

 不可解な命令だ。しかし、これは本部が言っていること、きちんとした命令なのであろう。今まで本部が無線で冗談を言ったことは無い。

 しかし、全く意味がわからない。

 (巨大な飛行物体が飛来する?SFではあるまいし・・。)

 そして、彼は地面にはいつくばること5分、彼らは見てしまった。

 無線機の通信量は増大する。

 「正体不明の物体飛来!!」

 「空自のF-15が周辺で監視体制をしいている模様」

 「攻撃は許可しない」

 様々な内容の指令や報告が飛び交う。円盤状の物体が弘樹たちの演習場に飛来した。巨大な陰が弘樹たちを覆う・・・大きい。演習場を包み込むほどに。

 あたりには地響きが鳴り始め、恐怖が全身を駆けめぐる。90式戦車や155ミリ自走流弾砲の主砲は、円盤を睨んでいたが、発砲するつもりはない。

 やがて、巨大な物体は演習場上空にて停止した。


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