表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
対角線上の攻防  作者: 惟織
対角線上の攻防
1/15

溶けた黒髪


 足元すら覚束ない宵闇を、淡い月の光が照らす。今宵の月は蒼く、まるで眼下の凄惨さに血の気が引いているよう。

 悪夢にも似た鳥の羽ばたきを聴きながら、女は静かに瞳を開けた。鋭い眼光は冴え冴えとして蒼く、目の前の敵を睨み据える。

 吐き気を催しかねない八つの紅い眼。真っ黒な風景に妖しく映えていた。

 彼らは一様に細長い尻尾、首のない胴体をコウモリの翼で浮かせている。鳥ではなく、正確には鳥を模した化物だ。

 奴らにとって女は今宵の獲物。女にとって奴らは討伐対象。

 張り詰めた空気が滞る刹那、一筋の閃光が迸った。銀の輝きはあやまたず彼らの胴体を射抜き、彼らを灰に帰す。

 急所を狙えば後の処理は早い。彼らは、死ねば勝手に霧散してくれるのだから。

 それでもちゃんと消えるのを見届けてしまうのは、一抹の不安があるからだろうか。しかし、杞憂に終わるのも毎度のこと。

 今回も事なきを得た女は、長く艶やかな髪を翻しながら踵を返し――――二度と振り返らなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ