二学期の始業式
「おはよ」
「おはよう、斉藤さん」
「おはようございます」
「おはよう」
「おう、おはよう」
「おはよう、林田君」
新学期が始まった。
周たちは学校でしばらくぶりのクラスメイトと再会の挨拶を交わす。
「ところで林田君、折り入って頼みがあるのだが」
「・・・・・・なにかな、宇喜多くん」
「うむ、先生にはうまく言って誤魔化しておくから後で宿題を写させてく・・・あてっ!」
ずいっと寄って俊介に何かお願いをしようとしていた宇喜多くんに、いいんちょ恵の正義のチョップが叩き落された。
「だから言ったじゃない、ちゃんとやっておきなさいって」
「か、完全に手付かずというわけではないぞ!
終わってないのだってあと少しだ」
「ホントにあと少しだってんなら、睡眠時間でも削ればよかったじゃない」
「既に徹夜だ!!」
「・・・・・・あぁ、そう、なんかごめんなさい・・・・・・」
横から入ってきた恵に目の下のクマを見せつけながら力説する宇喜多くん。
その説得に心を打たれたのか、恵はあっさり引き下がった。
「・・・・・・と、言うわけだ、林田君、頼む」
恵を説得した勢いで俊介に頭を下げる宇喜多くん。
だが。
「う~ん・・・・・・残念だけどそれは無理かな」
「ぬぁ!?」
何故僕の必死の説得が効かない!?と仰天する宇喜多くん。
「な、何故だ!?斉藤さんには宿題を写させてあげたのだろう!?
何故僕はダメなんだ!?見損なったぞ林田君!僕達の友情はそんなものだったのか!」
ガーッとまくし立ててくる。
普通なら「あー、はいはい」と聞き流すところだろう。
しかし、俊介はゆっくり首を振る。
「違うよ、周ちゃんはちゃんと自力で全部やったよ」
「な、何ぃ!?あの斉藤さんがか!?」
「・・・・・・微妙に失礼なこと言ってるよ、宇喜多くん」
どーどー、と宇喜多くんを押さえながら説明する俊介。
「そりゃまぁ、分からないところの説明とかはしたけどね。
答え写しは周ちゃんもやってないよ」
夏休み終わり1週間ほど前、周はバスケの練習を早めに切り上げ、俊介に「宿題写させて!」と迫ったのだった。
とっさの申し出に思わず首を縦に振るところだった俊介だが、それでは周の為にならないだろうと何とか拒否したのだった。
その代わり手伝いならするよと返すと、周もしぶしぶそれで手を打ったのだった。
「ぬぐぐ・・・・・・」
何とか食い下がろうと考えたが、やがて宇喜多くんは諦めた。
優先度レベルMAXと思われる周に答え写しをさせていない以上、自分がどれだけ頼んでもそれ以上の優遇は受けられまい。
そう思っての事だった。
この辺理解力がある。
「しょうがない、ここは恵に頼むとするか」
「ダメに決まってるでしょ。
あの斉藤さんだってちゃんと宿題をやったのよ?
自分でやりなさいよ」
「・・・・・・近藤さんも微妙に失礼なこと言ってるね・・・・・・」
「あ、えと、そんなつもりじゃ・・・・・・」
「なーにー?どうしたの?
もしかして宇喜多くんが宿題終わってなくて泣きついてるの?」
「ぐっ!」
そんな話をしているところに周がひょっこりと現れる。
指摘されたとおりなので言い返せない宇喜多くんであった。
その様子を見て「はは~ん」とにやける周。
「あれ~?もしかして宇喜多くんホントに終わってないの~?」
「ぐっ!ぐぐぐ・・・!」
いつもは俊介に宿題写させてもらっている同盟を組んでいると思っているだけに、宇喜多くんは本当に悔しそうにする。
それを見て調子に乗った周はさらに追い討ちをかけるのであった。
「あはは!私なんて全然「ややう」だったよ!」
「・・・・・・や・・・「ややう」?」
「あ、ごめん、全然「余裕」だったよ」
「なんで「ややう」!?」
思わずツッコミを入れたのは恵。
そういえば周がこのメンバーの前でこういう発言をしたのは初めてだったか。
周は「しょうがないな~」と言った顔で説明を始めた。
「古文でさ、「~のよう」っていうのを「~のやう」って書くじゃない?」
「ええ、確かにそう書くわね」
「だから「余裕」と書いて「ややう」。
ね?」
「なってないわよ!?」
周の説明があまりに高レベル過ぎてついていけない恵。
無論宇喜多くんも、たまたま聞いていた他のメンバーもついていけない。
ただ一人そんな周を理解できる男、俊介が助け舟を出した。
「周ちゃん、その辺にしておきなよ。
周ちゃんだって宿題終わったのは一昨日じゃない」
「そ、そうだけど!
だってあんまりこういう機会ないんだもん」
ぷーっと膨れつつも、「確かに少し言い過ぎたかも」とそっぽを向く周。
こうして俊介によりその場は納まったのであった。
「って助け舟の方向違ぁう!!」
しかし納得できない恵は思わず俊介を問い詰めた。
「何でそこで話が終わっちゃうのよ!
「ややう」の説明が終わってないじゃない!」
と、おそらく周自身も説明できないその一言を追及する恵。
この辺しつこ・・・いや、きっちりさせないと気がすまない辺り恵らしいか。
しかし、俊介はさわやかな笑顔で・・・・・・と思いきや、少し諦めの混じった笑顔で返事をした。
「仕方ないよ、だって周ちゃんだもん」
・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・そうね、仕方ないわね、そうね・・・・・・なんだか凄く納得がいったわ・・・・・・」
「うん、そうなんだ。
こんな説明でごめんね、近藤さん」
「ううん、私こそ。
なんだかとても理不尽なことを問い詰めていたんだなって理解できたわ」
そんなこんなでチャイムが鳴る。
ここはまだ校舎の外だ、急がなければ新学期早々遅刻してしまう。
一同は慌てて教室に向かうのだった。
「全然ややう」、これは流行る!
だって周ちゃんだもん。
ボクはキメ顔でそう言った、ってけーねが言ってた、それと便座カバー(詰め込めばいいわけではないという参考例




