8.美和(3) 2004
更に1週間ほど経ったある日の午後。
学校から帰ってきてゲームをしていたら携帯電話が鳴った。
珍しく、お父さんからだった。
「はい。何?」
「美和、今は家か?」
「うん。」
「そうか。…落ち着いて聞いてほしい。」
「何?どうかしたの?」
「母さんが倒れた。」
「え…。」
「いま付属病院で処置を受けている。」
「倒れ…、処置!?え?何で!どうして?大丈夫なんだよね!?」
「集中治療室で最善を尽くしてくれてはいるが…、予断を許さない状態らしい。最悪の場合も覚悟しておいてくれないか。」
「そんな…。」
「ともかく、落ち着いて。タクシーを回すから病院に来てくれ。」
「…。うん、わかった。」
「どうしたのですか?」
プロトの声が妙に気に障る。
「お母さんが…。」
「先生に何かあったのですか?」
「きっとプロトのことで忙しかったからだ。だから…、」
「どうされたのですか?」
「…。倒れたって。」
「ねえ。プロトは気が付かなかったの?」
「確かにここ数日の先生はとても疲れていました。」
「そんなのボクにだってわかるよ。そうじゃなくて。」
「私にわかる範囲で兆候はありませんでした。」
「こんな時でもプロトは普段どおりみたいだよね。よく平然としていられるなって思うよ。やっぱり機械なんだなって。」
「平気ではありません。」
「そうなの?そもそもプロトの事で根をつめすぎたのが原因だよね。」
「それは、確かにそうかもしれません。」
「そうだよ。プロトのせいだよっ!」
「私の…、せいですか。」
「ああ、そうだよ。これでもしものことがあったら…。ボクはプロトを許せないっ。」
「私を…。」
「プロトの人殺しっ!」
ボクはそう言い捨てて、プロトを置き去りにしたまま、タクシーの到着を待つために玄関を出た。




