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7.美和(2) 2004

「へえ。そんな面白いことになっていたんだ。」

「笑い事じゃないよ。」

「でもその話、プロトにも聞かせてみたかったわね。もっともプロトが居なかったからそういう話題になったのか。」

「そうだよ。」

「とりあえず、明後日プロトが学校に行ったら面倒見たいって話題の続きになるのかな?」

「うん。多分。」

「じゃあね、こう言っておいて。プロトを持ち帰るには保護者も交えて事前の審査とか守秘義務なんかの契約が必要です。それでも立候補してくれるのなら、大歓迎ですって。」


「それにしても。確かにそろそろ区切りをつけて、わかりやすい成果を出す頃合かしらね。」

「え?そこまで気にするようなことじゃないでしょ。」

「いやぁ、実はね、ちょっとね、せっつかれてはいたのよ。」

「そうなの?」

「そうなの。それにもう一旦切り上げても大丈夫なくらいに、ある程度の経験は蓄積できてるからね。第一フェーズは終了してとりまとめに入ろうかしら。」

「えっと、忙しくなるの?大丈夫?」

「う~ん、残業は増えちゃうかな。しばらくの間、負担掛けちゃうと思うけれど辛抱してね。」

「無理はしないでね。お母さん。」

「はいはい。」

「ところで、そうするとプロトはしばらく居なくなっちゃうの?」

「ああ、それは大丈夫。開発・検証用のマシンは、プロトの居る試験機とは別に用意してあるから。」


「ところで話は変わるんだけれど、美和は好きな子とか居ないの?」

「えっ!えっ!何?急に。そんなの居ないよ。」

「そうなの?それは残念ねぇ。」

「何でいきなり残念な人にされなくちゃいけないの。」

「いやぁ、思春期っていうのもプロトに体験させておきたかったなって。」

「クラスでカップルになってる人が居るからそれは見ているはずだよ。」

「そういうんじゃないのよ。美和が恋をして変になるのを間近で見るからいいんじゃないの。」

「何それ、恥ずかしい。嫌だよそんなの。それに変になる前提っ!?」

「良いじゃない。人類の明るい未来のための(いしずえ)ってやつよ。」

「ひどい。」

「まぁ、第二フェーズの時には期待しているから。」

「それは拒否したい。」



---- ◇ ----



確かに、考えてはいたんだよ。

タケたちには否定したけれど。

プロトの成長が実感できない。

本当はプロトの方が知識も何もずっと上なのに。

ボクじゃ役に立ってないのかもしれない。

どうしてボクなんかと一緒に居るんだろうって。

ボクがプロトの足を引っ張っているんじゃないかって。

お母さんの研究が進むのを邪魔しているんじゃないかって。

そんなの自分が一番思っていたことだよ。

でも「ボクで大丈夫なのか」なんて、あらためて訊くのも怖くて。

経験が蓄積できたってお母さんは言っていたけれど本当に足りているんだろうか。

無理してまとめようとしているんじゃないだろうか。

お母さんはこれまでのままで良いと言うんだろうけれど。


本当はプロトの方がボクよりずっと優秀なのに。

ボクはプロトに嫉妬している。

プロトは仕方なくボクに合わせてくれているんじゃないだろうか。

劣等感を自覚して嫌になっちゃう。


プロトはボクと一緒に居ちゃいけないんじゃない?

プロトはボクと一緒に居たくないって思っているんじゃない?

ボクはプロトと一緒に居たくないんだろうか?

プロトはボクと一緒に居たいと思ってくれているんだろうか?


頭の中がぐちゃぐちゃだ。

どうしよう。

プロトの事を(きら)いになっちゃう。

ボクのことが(いや)になっちゃう。



---- ◇ ----



翌日の夕方に、お母さんがプロトを連れ帰ってきてくれた。

同時に人格システムの本番用システム開発を本格化すると伝えられた。


そうして次の週からお母さんの帰宅時間が遅くなった。

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