4.ジエイ(2) 3150
「さてと、どうするのが良いと思う?」
「前提が異なっていた以上、状況を確認してから再度実施するのが妥当だと思います。」
「私もそう思います。想定外の事態ですから今日の更新は中止にして、確認が終わるまで延期すべきでしょう。」
「ただ、状況の確認といってもこれ以上に何か調べられそうな事ってあるかしら。」
「そうなんだよだねぇ。ドキュメントはアテにできないみたいだし、そもそも調べるっていっても、できそうな事はさっき確認しちゃったんだよね。だから事態はあまり変わらない気がする。」
「あ、そうだ。属性情報の設定内容はともかく、登録日は調べたいわね。」
「それは気になるんだけどね、今応答待ち中だからコマンド打ちたくないんだよ。」
「じゃあ、今の、イニシャライズの途中だったかしら?それを進めるなり中断するなりしたら確認してみましょ。」
「もういっそ、このまま起動しちゃいましょうか。もし当時の人格がまだ残っているようなら、それがどういうものなのか確認してから対処するっていうことで。」
「僕としても、現状設定されている内容で立ち上げてみたいんだよね。その方が面白そうだし。」
「どっちにしても調査はしなくちゃならないし、他に取っ掛かりがないわけだから、それが一番手っ取り早いかもしれないわね。」
「でも、その人格が本稼働時に引き継がれずに簡易版に戻されたのって理由があるはずですよね。気になりませんか?」
「そうだね。試験用だから不完全だったとかならともかく、何か不都合や危険があって封印されていたのかもしれないものね。」
「オカルト話みたいです。」
「それ、復活させちゃって大丈夫なんですか?」
「まあ、最悪シャットダウンして、初期起動モードで立ち上げちゃえば、まっさらでしょ。」
「うわっ、軽っ。」
「エルはどう思う?」
「私も一度起動してみた方が良いのではないかと思います。単純に私たちの稼働する前に存在した人格、私たちの基になったかもしれない存在に興味があるということでもありますが。」
「それは多分ここに居るみんなが同じだと思うね。」
「あ、でも念のために無線も含めて外部との接続は全て切断しなくちゃか。スタンドアロン状態を確保しておかないとね。」
「あれ?オフライン設定はしましたよね。」
「論理スイッチを扱っただけだからね。その程度ならその気になれば簡単に繋げちゃうよ。だから、こういう時は物理的にも遮断しないと安心できないんだ。」
「それは私が手配しておくわ。通信ケーブルを引っこ抜いて、ルーターの電源も切って。念のため電源ケーブルも抜いて通常電源から非常用電源に切り替えるようにしましょう。」
「うわぁ…。そこまでするんですか。」
「もちろんよ。」
「というわけで処理継続の流れになっちゃってるけれど、皆はそれでよいかな?」
「多分これが最善だと思います。」
「他にとっかかりが少なすぎますしね。」
「でも過去に人格があったとしてもちゃんと残っているんでしょうか。それにちゃんと動くのかしら。どうやら千年以上前のですよね。」
「まあそれもわからないんだよね。ただ、確認はできてないけど自我や感情がプロセスに残るのはほぼ確実だろうってなったじゃない。」
「ジエイ君たちの推測ですね。」
「はい。そうです。」
「それで、アイ・システムの機器更新の手順を確認してみたことがあるんだけれど、確かに作業時に行うクローンコピーではプロセス部分もばっちり移行されている。」
「それって最初からなんですか?」
「もちろん。思考ユニットの人格はそうやって引き継がれてきたものだろうし、人格が無いと言われていたi0も更新手順は同じなんだ。当然だけど今回の作業もだね。だから残っている可能性は十分にあると思うよ。」
「ドキュメントには残していないのに引き継がれているのって、何だかさっき話に出た封印みたいですよね。本当に消し去りたいのならプロセスも設定内容も初期化しちゃえば良いのに。」
「確かにそうだね。何か意図的なものがあるのかもって考えちゃう。」
「そう考えるとますます人格が残っている可能性が高いように思えてきました。」




