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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神殺し

作者: 滝沢洋一

「・・・・随分とまた派手にやったな、ようやく落ち着いたか」


「また、まだ、あいつが・・・・」


「イワナガか、やめておけ、これ以上は流石に看過できん」






剣と剣がぶつかる音と共に、命の灯し火が1つ、また1つ消えていく。


暗褐色の刃と明けの明星に等しい輝きが、それらを一つずつまるで羽虫を蹴散らすかのように奪っていった。


「殺せぇ!!」


「あいつを、○○○○を殺せ!!」


狂おしい程の叫びが各地で充満していた。


殺意の塊と化した、狂気にその身を預けた者が、暴風のような勢いで目につく者達を片っ端から殺し尽くしていた。


「駄目です、止められません!!」


「護衛将たちはどうした!!


イワナガ様の寝所に決して近づけるな!!」


その声と共に暴風が吹き荒れた。


殺意と共に訪れるそれは、死の代名詞と化していた。


あちこちで焼けただれた焼死体が転がっていた。


口を大きく開けて、断末魔の悲鳴を上げているかのように上を向いている死体があった。


狂気に触れたのか、絶望と苦痛、恐怖に崩れ落ちたかのように口を大きく開けて死んでいた。


「あいつが、イワナガが元凶だったのか・・・よくまあ、やってくれたものだ・・・」


無言のままに殺戮が繰り広げられていった。


無惨に斬り刻まれた者、一刀のもとに切断された者、何かに引き千切られたかのように四肢を失った者など、様々な死体がそこらかしこに転がっていた。


「あいつ・・・・」


「宇迦御霊神、御身は止めないのか?」


「ああなった時のあいつは止めようがない、なんなら其方が行けばよい。


まだ理性が残っているようだからな」


「・・・確かに、だが流石に止めようがないぞ」


「全くだ」


苦笑いを浮かべた武神に、殺意に輝く目が向けられた。


凄まじい殺気と狂気がそこにはあった。


「・・・・斬る」


「手は出さぬよ」






(あいつのせいで多くのものを失った。


神楽、梨前、無将、毅然、嵐山。


追放するだけでは留まらず、殺そうとしていたことは許せぬよ)


「殺せぇっ!!」


「確実に殺せ、惨殺しろぉ!」


群がってくる者達を幾重に渡って殺して来た。


殺して殺して殺し尽くして、一刀両断にしてきた。


それでもあいつは、イワナガは出てこない・・・・当然だな、あいつの狡猾さは幾多の存在さえ騙す。


あの母娘だけは・・・・決して許さぬ!!


怒りに爛々も燃える眼は、鬼灯の色。


身に纏う輝きは底知れぬ漆黒の闇、輝く剣は明けの明星が如し。


「羅刹っ!早う、早う、あの者を殺せ!!


なにがあってもこれ以上近づけてはならぬ!!」


「・・・・お相手致す、これ以上は進められませぬ」


見上げるほどの巨体に似合う、大振りの刀に筋骨隆々の肉体に見合う、鋼の眼光がその目には備わっていた。


憐れみとも怒りとも、無念とも不開示人も言えぬ灯火がその目には灯っていた。


「羅刹・・・・お前が出てきたか」


「不本意ながら・・・・御命により、これより先は行かせませぬ」


うなりをたてて剣が降りてきた。


厚みのある巨大な刃は人間の体など簡単にへし折り、圧し潰して灰燼と化してしまう。


地獄の業火によって鍛え上げられたとされる、その剣の一撃は受けたものごと切断してしまうと言われるほどの豪剣だった。


「・・・やはり、足止めが精一杯ですか」


「お前をこのような形で斬る気はなかったのだがな、だがイワナガ如きを守るのならば話は別だ」


刀身に纏うは暗褐色の輝き、不吉とも魔を斬り裂くともされる輝きだった。


その輝きを纏う剣を両手に握り、豪剣を受け止めていた。


「・・・・剣を受けられて誠に幸せでしたぞ」


「鳳凰!」


叫ぶと同時に暗褐色の巨大な鳥が舞った。


受け止めていた剣で剣を断ち斬ると、そのままの勢いで一刀両断した。


「・・・・暗鬼」


微かに呟くと、暗褐色の輝きが周囲を覆った。


その場にいた者達が苦痛と恐怖、怒りに満ちた絶叫さえもすべて食らい尽くし、消えていった。


「流石に辛いな・・・・もうすぐか」


「はよう、早う逃がせ!!」


「何をしている、殺せ!!」


「イワナガ様の寝所に近寄らせるな!!」


完全に武装をした者達が血相を変えてたった一人の者に群がる勢いで斬りかかっていく。


それらすべてを斬り殺し、時には地獄の亡者達の餌として分け与え、食い殺させていった。


「殺す、殺してやる・・・・」


「これ以上は、やらせ、まいぞ・・・」


息も絶え絶えに足首を掴んだ者の手を斬り跳ね飛ばし、返す刃で貫いた。


「邪魔を、するなぁ!!」


絶叫と共に暗褐色の剣を振り抜いた。


絶望の闇が周囲を包み込み、何もかも消えていった。


「どれだけ湧いて出てきやがる、あいつは・・・・どこまで!!」


怒りと殺意だけが支えていた。






「・・・・随分とまた派手にやったな、ようやく落ち着いたか」


「また、まだ、あいつが・・・・」


「イワナガか、やめておけ、これ以上は流石に看過できん」


剣を握り締め、荒い息で立ち上がろうとする者を、言霊で縛り付けた。


「もう十分であろう、これ以上はやめておけ・・・・お前の復讐はこんなことで終わるものではない」


なおも立ち上がろうとする者の肩に手を添えると、強い力を込めて押し留めた。


「これ以上は看過できん、お前をここで斬る訳にはいかぬからな・・・」


首筋に鞘ごと剣の一撃を落とすと、崩れるかのように倒れた。


「流石に兄上が出てこられては困るからな、お前はこんなところで死なせる訳にはいかぬ・・・」

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