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冷酷のブレイバー  作者: 泥陀羅没地
第一章:輝く星を追い掛けて
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野蛮なる王の襲撃

――ザッ…ザッ…ザッ…――


『ハッキリ言って〝迷惑〟だ』


あの人の言葉が何度も、何度も脳内に響く…。


「私は……ただ…」


あの人の、本当の姿を…ロクデナシだなんて謂れのない嘘だって皆に知って欲しかっただけなのに…。


『〝独り善がり〟』


あの人の言葉が重く胸を貫く…独り善がり……私は余計なお節介をしていたの?…。


(でも、それじゃああの人はずっと誤解されたままで…でも、あの人は私のやろうとしてる事は望んでない)


一体…どうすれば良いのだろう…。


「……もう、こんな時間…」


気が付けば、私は宿のベッドに座り…夕日の沈む光景を目で追っていた。


「御飯食べよ……」


そして私は夕食を食べに下へ降りようとした…その時だった。


――カーンッ、カーンッ、カーンッ――

――カーンッ、カーンッ、カーンッ――


村の見張り台から、警鐘が甲高く鳴り響く…ソレが意味するのは…〝襲撃の合図〟


「〝魔物の群れ〟だー!!!」

「ッ!」


自警団の誰がそう叫ぶのを聞いて、私は急いで装備を着け、宿を飛び出した…。





「――〝助太刀〟します!」

「ッ――助かる嬢ちゃん!」


辺りは騒々しく、怒号と悲鳴が後を絶たず…自警団の人達は必死に村の防壁を盾に魔物達と戦っていた。


「オークと…ゴブリン!」

(この数…多過ぎる!)


しかし、ソレはジリ貧だと直ぐに分かった……何故なら、自警団の数は20人前後、対して相手の数は60匹を超えていたんだから。


「ゲヒャヒャッ!」

「ッ――ハァッ!」


そんな事を考えていると、ふと横からゴブリンが飛び出して来る…そして私はそんな考えを片隅に押し込み、今目の前の問題を処理する為に剣を抜く。


――ズシャッ――


「此処は絶対に…〝通さない〟!」


そして…突然の襲撃…その前線へと飛び込んで行った。



○●○●○●


「ホォ…案外シブトイナ、人間ハ…オイ〝軍師〟…ドウ言ウ事ダ?」


攻め立てる魔の軍勢の後方から、一際大きな身体のソレは眼下に居る、身綺麗な〝人型〟に向けてそう低く問う。


「いやはや、想像以上にやる様で…近隣の村はコレで落とせたのですが……ふむ、どうやらあの〝小娘〟が兵士共を指揮して居る様ですなァ」

「フム……成ル程…」


軍師の言葉に巨躯の〝豚鬼〟は考える様にその視線を前線で戦う美少女へ向けると…その視線を下卑た劣情のソレに変え、言う。


「ナラバ、我直々二鏖殺シ、アノ小娘ヲ我ノ物トシヨウ…ウム、ソレガ良イ」

「えぇ…まぁ…ソレは陛下の御随意に…我々はただ、陛下の覇道を御支えするだけに御座います」

「ウム、ウム…貴様ノ忠義ハ然ト受ケ取ッタ…全軍二通達セヨ…〝全軍出撃〟…〝一切全テヲ蹂躙セヨ〟…ト!」

「ハッ…」


そして森の中に潜んでいた〝ソレ〟は腰を上げ…古ぼけた巨大な剣を握り、進軍する…その背後では…。


「仰せの通りに…〝裸の王様〟♪」


参謀軍師が口から、不義の嘲りを口にしていた。



●○●○●○


「フンッ!」


――ズシャッ――


「ハァッ!」


――ドサッ――


「ウリャァァッ!」


――ドサドサドサッ――


襲撃から凡そ20分は経ったにも関わらず、騒乱は終わらない…それどころかより激しく、より苛烈に成っていく。


「ハァッ…ハァッ…」

(どう考えても可笑しい…数が多いのに、どいつもこいつもオークやゴブリンばかり…)


ただの偶発的な群れの襲撃なら、此処までの規模には成っていない…しかし、今まで討伐してきた個体の中で、オークの上位種…指揮個体は一匹も居なかった…。


「凄えぞ嬢ちゃん!、コレなら勝てる!」

「〝勝てる〟……」

「助かったぜアンタ、アンタの働きは勲章モンだぜッ」

「〝勲章〟…」

「コレなら街に緊急要請を出さなくて良かったな!」

「〝緊急要請〟…!?」


――ドクンッ――


その瞬間、私の脳は情報を弾けさせ…凄まじい勢いでその〝可能性〟を導き出す……その考えは、所詮ただの〝可能性〟だった…しかし、私にはソレが何故だか確信を持って言える様な気がして、皆に叫ぶ様に伝える。


「今直ぐ……今直ぐ〝街に連絡〟を!」

「は?……急にどうした嬢ちゃん、此処まで来て街の連中に手柄を横取りさせるか――」

「〝違う〟――コレは〝罠〟だッ…本命は――」


しかし、その言葉は既にもう――。


――ドスッ――


〝手遅れ〟だった…。


「――あっ」

「……はぇ…?」


私を見ていた衛兵の一人…その首に一本の〝矢〟が突き刺さる…それは、唐突で…私達の予想打にしていなかった〝攻撃〟…いや、気付いた時には既に手遅れだった〝想定〟…。


(この規模の襲撃が有りながら、一匹も指揮個体を見なかった時点で直ぐに考え付くべきだった……!)


「ヒッ!?――オイ、何だよアレ!?」

「嘘だろ…まさか〝アレ〟は…!?」


彼等の声に、私は戦場の奥を見る……その平原と森の境目に、ゾロゾロと姿を表した――。


「〝オーク〟……〝キング〟…!」

 

2メートルは優に超える巨体で、醜悪な豚の顔…脂肪に覆われた肥えた腹に巨大な剣を手にして此方へと歩み迫る…群れの〝王〟と、その〝親衛隊〟達の姿を…。


「全軍突撃!……其処ノ小娘以外ハ蹂躙シロ!」

『ブゴオォォォォッ!!!』


そしてその王の一声に、親衛隊は雄叫びを上げて突撃する…その光景は凄まじく。


「ひ、ヒィィィッ!」

「クソッ、撃てッ撃ち続けろぉ!」

「おい嘘だろ!?…彼奴等盾で周り囲んで突撃して来てるぞ!?」


その殺意と、狡猾な知恵の突撃に…私達は絶望と恐怖を植え付けられてしまった…。


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