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冷酷のブレイバー  作者: 泥陀羅没地
第一章:輝く星を追い掛けて
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異世界の仕立て人

――ザッ…ザッ…ザッ――


「――うぅむ、やはりいつ見ても此処は〝不快〟よのう…どいつもこいつも、怨嗟に満ちておるわ」


路地裏を縫う様に進む事暫く、俺達は情報屋の言う〝情報〟を元に、とある人物を探していた…その人物とは――。


「〝異界者〟…私達の世界とは異なる世界からの迷い人、或いは漂流人…その異界者が経営して居る〝店〟がこの辺りに有るらしいけれど…あの情報屋の言う事を素直に信じるべきかどうか…悩むわね」


そう、〝異界者〟…異なる世界を渡って来た〝異界の人族〟…遇必はどう有れ世界を渡ると言う〝規格外〟の所業を為す程の逸材たる彼等は、その身に凄まじい〝力〟を秘め…その能力は〝勇者〟にさえ迫る者も居ると聞く…俺達が探しているのはまさにその〝異界者〟で有り、その人物が経営していると言う〝防具店〟だった。


「うむ、妾達を罠に嵌めようとした、とも考えられるからのう…その時は妾等を護るのじゃぞ御前様よ?」

「――無論、そうする…だが、〝罠〟の可能性は無さそうだ」


そして、路地裏を渡り歩き…二人の警戒心の籠もった会話に返答を返しながらそう言っていると…俺は遂に、ソレらしい〝店〟を見つけ立ち止まる……其処に有ったのは、この陰鬱とした路地裏には似つかわしく無い〝雰囲気〟を醸し出す一つの〝一軒家〟…其処には小洒落た細工と金具の看板が掲げられ、店名らしき名が主張し過ぎること無く人の目を惹く様にデザインされていた……のだが、場所も場所なだけに、その〝注目度〟は雑踏立ち並ぶ家々の比では無かった。


「――何じゃ、思っていたよりも〝普通〟…いや、風変わりな店じゃの…」

「こんな路地裏では凄く目立つわよねアレ…強盗とか入らないのかな…?」


そんな建物が眼の前に現れた所為か、ルイーナとアイリスは眼の前の店に、或いは姿無き店の店主を案じる様にそう言い、俺もまた心内にそう考えていた…その時。


「――エェ、確カニ盗ミヲ働コウトスル不届キ者ハ多イデスネ」

「「「ッ!?」」」


俺達の間から、そんな何処かぎこちない言語が飛び出し…俺達はその声に慌てて振り向いた…其処には、1人の給仕が片腕に買い物袋を抱えて立ち尽くし、俺達に無機質な視線を投げ掛けていた。


「何じゃ此奴――!?」

「嘘、直ぐ横に居たのに気配が感じられなかった…!?」


そんな、無機質な美貌を持つ給仕に…俺達が驚いていると、その給仕は何かに気付いたように洗練された所作でお辞儀し、謝罪の言葉を紡ぐ。


「――コレハ失礼ヲ…ドウヤラ驚カセテシマッタ様デ…私ハ〝主様〟ノ身ノ回リヲオ世話シテオリマス、〝ルージュ〟ト申シマス」

「……嗚呼、宜しく頼む」


そして、紡がれる自己紹介に俺がそう返すと…その給仕…〝ルージュ〟はその瑠璃色の瞳で俺の顔を覗き込み、問う。


「――所デ其処ノ人間ノ御人…恐ラクハ貴方様ガコノ集団ノ長ト推測致シマスガ、何カ御用デショウカ?」

「…そうだ、情報屋から…ここなら質の良い革鎧を造ってくれると聞いてきた」

「成ル程」


そして、ルージュは俺を、続いてアイリスを、ルイーナを見ると…その姿勢を正し、俺達の前に出る。


「ソウ言ウ事ナラバ、私ガ御案内致シマス……久シ振リノオモテナシデスノデ、不備ガ無イト良イノデスガ…(此処ノ所、悪党ノ処理シカシテイマセンデシタカラ…)」

『『『物騒』』』


そしてそう言い淡々と歩き始める彼女の背を追い、その小言に微かな慄きを抱きつつ、俺達はその店の扉を潜り抜けたのだった……。


――チリーンッ!――


その瞬間、軽快な鈴の音が俺達を出迎え…壁には魅せる様に並べられた一目見て上等と分かる〝スーツ〟、〝ドレス〟がその視界に飛び込んで来た…。


「「……」」

「……凄いな…」


その光景たるや、身嗜みに大した意識を払わない俺でさえ、感嘆の感想が漏れ出る程である…お洒落に目が無い生娘と精霊の姫にすれば、最早絶句の域だろう…。


「〝おや……〟――御客さんかな〝ルージュ〟?」

「――ハイ、〝御客様〟デス〝主様〟…ソシテ、買イ出シヲ済マセテキマシタ」


と……そんな風に見惚れていると、見るも華やかな衣装並ぶ店の奥…上品なカウンターの奥から覗く二つの視線と、一つの声が俺達の耳に届く…その声に自然と俺達は視線をやると…其処には1人の〝男〟が穏やかな笑顔で俺達と、給仕のルージュを出迎えていた…。


「あぁ、有難うルージュ…それじゃあ早速悪いんだけれど、御茶を淹れてきてくれないかな……君達もどうだい?」


そう言う男は、その身体はやや細く…温和な性格も相まって〝戦いを望まない人間〟なのだと自ずと理解する…しかし。


「……嗚呼、頂こう…〝店主〟殿」

「――フフフッ、そんなに畏まらなくて良いよ…気軽に〝店主(マスター)〟や〝仕立人(テイラー)〟とでも呼んで欲しいな……何せ久し振りの〝御客様〟で、とても面白い〝原石〟達だ…是非とも仲良くしたいかな」


その男の、温和な声と振る舞いからは到底考えられない程、底知れない〝未知〟が男の背に広がっていた…。


「君達も、肩の力を抜くと良い…それと、此処に有る衣服も、好きなだけ見て良いよ…試着したいなら、試着室はルージュに案内させよう」

「「良いの(かの!?)」」

「勿論だとも…可愛らしい乙女と精霊の姫君」  


そんな俺とは対象に、二人は眼の前に広げられる宝石の様な〝衣装〟を食い入る様に見つめ、店主の言葉を聞いて直ぐにドレスの元に駆け寄って行く…ソレを見て、俺は溜息を漏らし、店主は微笑ましく二人を見ながら俺に言う。


「女性は何時だって〝お洒落〟に目が無い…どの世界でも〝コレ〟は変わらないんだねぇ…」

「……あぁ、その様だな」

「さて…それじゃあ……改めてようこそ〝テイラー(仕立て屋)柊〟へ…お求めの商品は何かな?」


そして、その店主は俺の方に視線を戻し…そう言った。

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