かつて勇者の友だった男
始めましての方は始めまして、お久しぶりの方はお久しぶり、泥陀羅没地に御座います。
私は等々犯してしまいました…禁断の〝二作品同時進行〟…しかし言い訳させて欲しい。
作者だって本意では無いのです、二作を同時に書き綴るとはつまり、其れ等の作品に十分な熱意を込める事が出来ないかもしれないのですから。
ですが、悲しい事に私が話を書き連ねる合間にも新たな〝世界〟が花開くのです。
既に〝7作〟脳内で燻っているのです…このまま放って置く事等出来ぬ程に。
恐らく、今まで以上に不定期な投稿に成るかも知れませんが、なるべく投稿頻度は維持致しますので、どうか御容赦を…。
それでは長々と書き連ね手しまいましたが、本編をどうぞ……素人作者の三文小説ですが、皆様の娯楽として楽しんで頂けるなら幸いです。
――このパーティーを抜けてくれ――
その一言が、周囲の喧騒を黙らせた…男も女も、老いも若きもその視線を一点に向けた…。
其処には6人の男女が居り、1人の男を5人が見詰めていた。
〝パーティーからの追放〟
それ自体は珍しい事じゃない、足手纏い、使い物にならない、品行方正の欠如…理由はそれぞれだが、そうやってチームの質を高める事も有る…だが、事現在に起きた〝ソレ〟ばかりは…誰も彼も聞き逃し、見逃す事など出来なかった……何故ならば彼等は……。
「はぁ?…オイオイ〝グレイ〟…らしく無いぞ?…お前がそんな冗談を口にするなんて」
「……」
「俺達は今まで〝勇者パーティー〟として頑張ってきただろ?…なぁ?」
〝勇者パーティー〟
その意味を知らぬ者は、この世界に居るまい…〝勇者〟…それは誰もが耳にした英雄譚…〝魔王を討つ者〟…〝世界の守護者〟として神々から祝福を受けた者…そしてその勇者を支え、悪しき魔王を討伐するべく集い集まった〝英雄〟達…そんな彼等が、〝仲間を切り捨てる〟のだから。
「………僕は本気だ…〝レイド〟…君の〝行い〟にはもう……愛想が尽きた…」
その言葉は重く、鋭く…冷たく…対面にいる〝男〟に注がれていた…勇者が放つその圧力にたじろぐ様にその男は後退り…しかし、まるで栄光を捨て去るのが惜しいかの様に食い下がる。
「ま、待てよグレイッ…忘れたのか!?…3年前、〝オークキング〟の攻撃からお前を庇ってやったろ!?」
「それは感謝している、だけど…この〝2年間〟で君は変わってしまった…旅先ではしょっちゅう問題をお越し、道行く人達にパーティーの威光を使って横柄に働く…戦いだって真面目にして来なかった」
しかし、そんな言葉に返ってきたのは、ほんの少しの感謝と、男の起こした数々の〝問題〟、その証明だった。
「ッそれは…」
「――もう、君の面倒は見切れない…〝皆も〟そう言ってる」
「ッ……おい、冗談だよな〝エリック〟、〝ヘレステア〟、〝ユリース〟、〝ローラン〟?」
『……』
言葉を詰まらせる男へ〝勇者〟は、まるで最終通告とでも言うように全員の判決だと告げる…すると男は、まるで信じられないとでも言う様に震えた声で仲間へと問う…しかし…返ってきたのは酷く冷たい、冷ややかな視線だけだった…。
「――ッ、待ってくれよグレイ!…俺達餓鬼の頃からの仲だったじゃないか!…幼馴染を見捨てるっていうのか!?」
「ッ――良い加減にしろ〝レイド〟!」
――ドンッ――
鈍い音と共に、木製のテーブルが木っ端微塵に砕け散る…それに我に返ったのだろう…勇者グレイは満ちた憤懣を鎮め…しかし先程よりも確固たる意思で男へ鋭く〝睨み付ける〟…。
「………君の〝追放〟はパーティー全員での〝決定〟だ、君にそれを拒否する権利は無い…もうこれ以上、僕の〝レイド〟を穢すな」
そして、勇者グレイはそう言うと席を立ち…店主へ謝罪と硬貨の入った麻袋を渡し…仲間と共に店を出る。
「ッ……!」
その後ろ姿を、その男は…〝追放者〟のグレイは…ただじっと、見送る事しか出来なかった……。
その日の出来事は、瞬く間に街々へ、国々へと広がる噂と成り…勇者パーティーから追放を受けたその男の名は瞬く間に拡がった……その名は――。
〝レイド・バルクレム〟……〝かつて勇者の友だった男〟…と。