もしかして、どこもブラックなのか?
確かに商標登録はまだだと言っていた。
説明文が入っているということは俺が転生した後に商標登録したのだろう。
それを省いてこれを選んだのは俺のミスかもしれない。
……だがな。
「そもそも完成してるかどうかくらいは女神を名乗っているのなら分かりそうな物だろ。
それに人員不足だからと言って新人にワンオペさせるような仕事じゃないだろ、転生案内だぞ。あんなロリ天使一人で対応させていいほど簡単な業務内容ではないだろ。そもそもこうなったのは新人教育が疎かだからだ。新人教育に力を入れない企業などクソだ。存在する価値もない。新人のモチベーションを上げてやらねば奴らは育たず、離職率が増加するだけだろう。企業としての今後の成長など一切期待できないな。責任者を出せ。責任者を」
……ただ、倒したモンスターの能力を使えるだけまだ救いようはある。
何種類ものスキルを扱えるのならば魔王だろうがなんだろうが負けることはないだろう。
そう考えるとある意味この武器も悪くないのかもしれないな。
前向きに考えないと心が折れてしまいそうだ。
「あんたさっきから1人で何ぶつぶつしゃべってんの?さっきの戦闘でゴブリンに頭でもやられた?」
ゴブリンから奪った武器を担ぎながら歩いていたフェリシアは明らかにひきつった顔でこちらに悪態を付く。
ロリ天使に男女。
死んでからというもの女運に恵まれないな、俺は。
フェリシアの言葉に俺はため息で返事を返す。
「そういう言い方はだめでしょ。九条が1番疲れているはずよ? 前衛に出て戦う大変さはフェリシアも知ってるでしょ?」
「ま、まぁ確かにあれだけのノイジーピジョンの攻撃を無傷で切り抜けたり、ゴブリンを簡単に切り払ったりは私には無理だし正直めちゃくちゃすごいと思ったし………… ちょっとかっこいいなあって思ったけどさぁ……」
最後の方は小声で聞き取れなかったが、当然だ。
お前らとは身体の鍛え方が違うからな。
「あれぐらいで疲れたりはしてないさ。ちょっと考え事をしていてな。口に出ていたようだ」
「じゃあ代わりにこれ持ちなさいよ!!なんで私がこんな重いの持たされてるのよ!!」
「俺は羽毛を持っているからそれは無理だ。諦めてくれ」
奇声を上げるフェリシアと宥めるエリシア。
完全に女運に恵まれなかった訳ではなかったようだ。 エリシアだけはまともみたいだからな。
「しかし、肉は持ってこなくてよかったのか?埋めて供養していたようだが」
「ノイジーピジョンは羽を剥くと数分で腐敗が始まるの。羽は当然腐らないし、かなり高く売れるから羽を限界まで持って帰って、肉は置いて帰る人が多いかなあ」
ホント、勿体無いよね。すごく美味しいのに……とエリシアは付け加える。
羽の価値は俺にもわかる。
背負っている量と重さが比例していない。
そしてこの身体に張り付くような柔らかさと暖かさ。
前の世界で使っていた羽毛布団を遥かに超える逸品だ。こんな風に、元々の世界よりも優れた素材が他にもあるのかもしれない。
前の世界で製造できていた物に加工すれば、それなりの生活は出来るだろうな。
「街が見えてきたよ!フェリシアもう少しだけ頑張って」
視界に飛び込んできた年季の入った木製の大門。
その門の前で門番が野菜クズと毒々しい色の薬を必死にかき混ぜている。
ご苦労な事だ。
よく見ると装備品や武器も相当にガタが来ているようだ。
……ブラックなのだろうな、きっと。
「やっとこの重さから解放されるのね!!ほら2人とも、急ぐわよ!」
「ちょっと!武器を持ってるんだから転ばないようにね!危ないんだから!」
俺は駆け出した姉妹の背を追い、足を早めた。
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