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もしかして、俺は弱いのか?

 このゼフィールとか言う世界にはステータスというものが存在し、それぞれの能力値の高さがF〜SSといった具合に表されるらしい。


……どうでも良い事だがこの世界に来て一度もアルファベットと言うものを目にしていない。

なのに何故ここんなところで利用されている?

少しばかり気味が悪い。


 あのロリ天使が寄越した翻訳機能とやらが俺にわかりやすいようにそう表現しているのだろうか……?


 まあ、とにかくSSランクに近づけば近づくほどその能力値は高いものとなるとの事だ。


そして…… 俺の能力値は……


「魔力のステータスは無いにしても、筋力、体力はC。 俊敏性と生命力はB! 全部普通の人を大きく超えるランク! むしろ冒険者としては一流の素質だよ!!」


 俺の手を握ってくるエリシア。にこにこ顔でぴょこぴょこ跳ねる彼女とは対称的に俺は絶望のあまり、表情を作る事も出来ず硬直してしまっていた。


……あの犬に殺されかけた時にも思った事だが、この世界を舐めすぎていたようだ。

 死ぬ直前から非日常的な展開のオンパレードだったため、正直多少ながら頭がパニックになっていたようだ。化け物共が闊歩する世界の人間が平和な日本で暮らしてる人間より弱いはずなんてないよな……。


……まあ、仮に冷静だったとしてもあのロリ天使から能力とやらを貰うなど俺のプライドが許さなかったろうが。


 それに、悪いことばかりでもない。俺には魔王の魂が封じられた魔剣がある。

 それこそ努力は必要となるかもしれないが、流石にこの世界に現存する武器の中でも最高峰の剣である事は間違いないだろう。 まだ、希望はある。


「ま、スキルも魔力もない以上、私達より強い!ってことは、まず無いでしょうけどね」


 そう言いながら、ドヤ顔でクロスボウを肩に担ぎ、貧相な胸を張るフェリシア。 表情もそうだが、私は強いんだぞと言わんばかりに武器を見せつける姿も実に腹が立つ。


「スキルや魔力とやらが使えないのは微々たる問題だ。 俺の強さを判断するのは実際に戦って見せてからにしてもらえないだろうか? さすがに見くびられすぎるのも不快なのでな」


 少しイラついたような表情で口を開こうとするフェリシア。それをエリシアは静止し、申し訳なさそうな表情でこちらに頭を下げた。


……今に見ていろ。ノイジーピジョンとやらとの戦闘で俺とこの剣の力を見せつけてやる。


「いつまで時間を無駄にする気だ? 」


 俺は身を翻し歩みを進める。

背後で何かを叫ぶ2人に無視を決め込んで、足早に元の道へと戻っていった。


         ◆◇◆◇◆



 あれから20分ほど歩き続けた。

俺の視界に飛び込んできたのは、この景観には不釣り合いなほど巨大な大木と、その左側を流れる小さな川。


 高さ30メートル程だろうか……背の高い雑草に囲まれて佇むそれを中心として、都心の喧騒を何倍にも増幅したかのような騒音が響き渡っていた。



「すごーい!!! これだけうるさいって事は、いつもよりいっぱい渡って来てるわね!!」


「今からワクワクして来たわ……!一気に目標の額に近づきそうね、姉さん!! 」


 姉妹は軽い足取りで大木へと一直線に駆けていく。

どうやらターゲットはあの大木に潜んでいるらしい。 正直、この馬鹿でかい雑音の中に飛び込んで行くのは気が引ける。だが、啖呵を切ってしまった以上、実力を見せつけてやらねばならないだろう。


 奴らの背中を追う。 一層大きくなる騒音に顔を歪ませながらも、今から対峙するであろう強敵との戦いに心を躍らせていた。

 前方の二人が立ち止まる。 その前に躍り出た俺は大きく息を吐き、魔剣に手を掛ける。


 さぁ、準備は出来た。

──魔獣よ、かかってくるがいい。

俺はゴクリと生唾を飲み込む。騒音の元凶たる魔獣の姿を視界に入れようと大木を見上げた。


「……おい、ノイジーピジョンとやらはどこだ?」


「え? こんなにいっぱい居るのに見えないの? あんた、ステータスどころか目まで普通じゃないのね」


 お前の俺に対する態度の方がよっぽど普通じゃないだろ、男女。 どこに魔獣なんているんだ。小さな鶏みたいなのが止まってるだけじゃないか。


……まさかこいつらじゃないよな?


「フェリシア、いい加減に言葉遣い治してね。 ……そろそろ行きましょうか」


「了解。 なるべく羽毛を汚さないようにするわ、姉さん!」


 フェリシアはクロスボウに矢を番える。

そのままスコープを覗き込み、照準を大木の上へと合わせた。


「ふうっ……」


 小さく息を吐き、引き金を引くフェリシア。

風切り音と共に矢が打ち出される。


 放たれた矢は真っ直ぐに鶏に向かって突き進む。 ……嫌な予感はしたが、本当にノイジーピジョンとやらはあの鶏もどきらしい。 拍子抜けだな、魔剣の力を見せつけるにはあまりにも相手が貧弱だ。


「グェッ!」


 フェリシアの放った矢は鶏もどきの首元を貫く。崩れ落ちたその遺体は重力に従い、地面へと吸い込まれる。仲間の骸を見つめる鶏達は静まり返り、こちらへと一斉に視線をやる。


『クルルルゥウ!!!!』


 鶏の大群は一斉に舞い上がり、こちらへ向かって一直線に滑空してくる。見た目は鶏とはいえ、この数が押し寄せてくるとなると凄みがある。

 俺は魔剣を身体の前で構え、真っ直ぐに純白の軍勢を睨みつけた。


「姉さん!! 準備はできてる!?」


次の矢を番えながら、フェリシアはエリシアに向かって叫ぶ。


魔力増加マナブースト。 ……うん、大丈夫よ! 」


 エリシアの身体が薄っすらと青い光を放つ。

彼女は最初に出会った時の柔和な表情とはかけ離れた鋭い目つきで右手のひらを群れに向ける。


麻痺の病(パラライズ)


 鶏の群に向けられた掌を中心に、淡黄色に輝く魔法陣が浮かび上がり、その中央からバチバチと音を立て、か細い雷撃が放たれる。


『グェエエ!!』


 向かってくる1羽に当たった瞬間に雷撃は炸裂し、隣接した鶏達にも電流が伝播する。 バチバチと音を立てながら、数羽の鶏は地面へと落下する。


 確か羽毛を汚すな、と言っていたな。

俺は剣を横に向け、向かってくる軍勢の頭をひたすら殴打する。

 量が量だ。多少の擦り傷は覚悟していたが、こいつら程度の動きであれば見切れないわけがない。

 

「そろそろアイツらが来るはずだわ! 守り切るわよ、2人共!!」


 エリシアが叫ぶ。それに応えるようにフェリシアは矢をつがえる。

あいつらとは一体何のことだ?


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