剣士の覚悟④
「突き!!!」
俺は大地を蹴り、ガンドルグの懐へと飛び込む。
ガンドルグの右手に握られた大剣が横凪に振るわれる。
咄嗟に体制を低くし、斬撃の下を掻い潜る。
そして、そのまま発動した突きは、ヤツの左胸を狙う。
やはりガンドルグは強い。
だが、何度か斬り合って分かったが俺の方が速さは上だ。 タイミングさえ掴んでしまえばどうとでもなる。
すまない、ガンドルグ……。
俺の放った突きはガンドルグの胸元に吸い込まれる。
やはり手が震える。思うように力が入らない。
だが、俺が負ければ皆殺しだとあいつは言った。
俺の頭の中に浮かび上がるのは、いつも脳裏に現れるゴブリンの悲鳴ではなかった。
俺を慕ってくれた子供達の笑顔。
輝くような笑顔で見つめてくるエリシア。
なんだかんだ言いながら、笑って俺を送り出してくれたフェリシア。
『いずれ、にいちゃんにも戦士にならねぇといけない時がくるさ。 非情にならねえと守りてぇもんも守れやしねぇ』
ガンドルグ。 正直、守りたいものが出来たのかはわからない。だが、少しだけ分かった気がするよ。
「うぉおおお!!!!」
雄叫びで不安を掻き消し、無理やりに剣を握る両手に力を込める。
全身全霊を込めた攻撃。
ガンドルグの命を奪うに足る、確かな一撃。
「ッ!!」
届かない。
魔剣の切っ先は確かにガンドルグの胸元に触れることは出来た。
だが、彼の獣頭骨で出来た鎧によって弾かれる。
左手の剣を振り上げるガンドルグ。
俺は崩れた体制から、片足に力を込めて真横に飛び込み、受身を取る。
振り下ろされた大剣は小さく大地を揺らし、地面に向かって吸い込まれた。
「やるじゃねぇか、にいちゃん。 今のは危なかったぜ」
「あぁ、正直俺も勝ったと思ったよ。 その鎧、見かけによらず相当な硬さだな」
ガンドルグはガハガハといつものように大きく笑い、胸元の頭骨に手を当てる。
「こいつぁ、戦場で散っていった戦士達の骸でなぁ。 斬撃や刺突には耐性を持ってんだ。 ……戦士達の誇りや信念を受け継ぐなんて気持ちで身につけていたが、今の俺には不釣り合いだな」
ガンドルグの表情が一瞬曇る。
お前にそんな顔をこれ以上させてやるわけにはいかないな。 俺は魔剣に力を込め、身体の前で構える。
「わりぃな、ガラにもなく感傷的になっちまった。 さぁ、続きといくぜぇ!?」
ガンドルグの持つ六尺ほどの大剣。それを握った両手を後ろに伸ばし、俺に向かって走り出す。
「おらぁ!!」
右手から振り抜かれる大剣。
そこから繋がるガンドルグの猛攻。
彼の放つ乱撃をただひたすらに躱す、躱す、躱す。直撃すれば確実に俺の身体が両断されるほど鋭くて重い斬撃。
反撃を仕掛けたところで鎧によって俺の斬撃は阻まれる。躱す以外の選択肢はない。
なんとか奴の懐に飛び込み、鎧を破壊する術を考えなければならない。
……そういえば、奴の鎧には斬撃と刺突に耐性がある、とか言ってたな。
ならば。
「地穿双牙!!」
しびれを切らしたガンドルグは両手を振り上げる。大振りだ。
チャンスは今しかないだろう。
「突き!!」
一気に距離を詰め、ガンドルグの懐に飛び込む。ここまで密着すれば斬撃は届かない。
だが、ガンドルグに焦りはない。
俺の攻撃が通用しないことを知っているからであろう。
……だが、これならどうだ!!
俺はスキルが発動する直前で跳び、叫ぶ。
「荒くれ小鬼 ──殴打」
刀身に荒くれ小鬼の文字が浮かび上がると同時に、魔剣は棘の付いた黒鉄の棍棒へと姿を変える。
空中で身体を捻り、そのまま振りかぶる。
ガンドルグもさすがに想定してなかったようだ。驚愕の声を口から漏らし、スキルの発動を中断する。
「その鎧、砕かせてもらうぞ!ガンドルグ!!」
棍棒が鈍い音を放ち、胸元の頭骨にめり込む。
獣骨は直撃した箇所から蜘蛛の巣状にヒビが入り、バリンと音を立てて砕け散った。
【作者からのお願い】
『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマーク登録、感想、レビュー等いただけますと非常に有り難いです。
また、↓に☆があります。
こちらが本作の評価になり、私自身のモチベーションアップにも繋がりますのでご協力いただけますと幸いです。




