剣士の覚悟③
「……姉さん。 ガンドルグのステータス、開示した?」
「……うん。 速さに関しては九条の方が上だけど、それ以外は圧倒的にガンドルグさんが上。 二つ名の補正が入ってる事もあって、筋力なんかS相当だと思う。 ……今、九条が攻撃を捌き切れてるのでさえ奇跡だと思うよ」
フェリシアは苦虫を噛み潰したような顔をして親指の爪を噛んでる。
神から与えられた名、二つ名。
二つ名を持つ物は表示されているステータスに補正が入る。
私も魔童子の名が与えられた時は驚いた事をよく覚えてる。
魔力のステータスがA まで跳ね上がって、魔法の威力と規模が格段に伸びたからね。
九条もやっぱり完全に攻撃を受け切れてない。純粋な鍔迫り合いだと、明らかに九条が押されてる。
このままだと……。
──ごめん。ごめんね、九条。
私はガンドルグさんと辺りの獣人達に向かって両手を伸ばす。
九条には絶対に当てちゃダメ。
でも大丈夫、乱戦は得意。
「遥か遠き神の城。守護者達よ、時が来た。今こそ我が名に於いて出兵を命ず」
久しぶりだ、この魔法を使うの。
私の周りに無数の魔法陣が浮かび上がる。
頭痛がひどい。やっぱり詠唱が必要な魔法は身体への負担が大きいな。
「姉さん!!! ダメよ!!! あいつの覚悟を馬鹿にすることになる!! ……それに、そんなの使ったら姉さんだってタダじゃ済まないわ!!」
わかってる。
九条には後でいっぱい怒られよう。
全身が焼けるように痛む。
身体中の血が溶岩に入れ替わったみたい。
でも、どうでもいい。九条が、優しい貴方が生きて私の前に帰ってきてくれるのなら。
「我が前に立ち塞がるは神の怨敵。臣民犯し、辱めんとする暴虐の徒」
戦いを見守っていた獣人達が武器を構え、すごく焦せった様子で走ってくる。
急がなきゃ。
「誇り高き戦士達よ、御旗を掲げ喊声を上げよ。彼の者を打ち果たさんとする、閃光の神槍を今、解き放て!! 神罰顕現: 断罪の──」
「──やめて、姉さん」
肩にかかるほどの髪を振り乱し、私を抱きしめるフェリシア。展開した魔法陣が瞬いて消える。
『もう君が戦う必要はない。 必ず、僕達がこの争いを止めてみせるから』
そう言って、幼い私を抱きしめてくれた青年。
彼の姿と、力強く私を抱きしめるフェリシアの姿が被る。
……そういえば、あの人達もそうだったな。
絶対に勝てない、死んじゃうって思ってたあの二人は戦いを終わらせて、私の前に帰ってきてくれた。
そっか、フェリシアは九条を信じてるんだね。 私も、九条の事信じてあげなきゃ。
「ごめんね。フェリシア。九条」
へたり込む私。
辺りで震えている衛兵さんを無視して、獣人達は私の首元に槍の切先を突きつける。
「族長から一滴の血も流すなとの命を受けている。手荒な真似はしたくない。どうか、おとなしく見届けてはくれまいか……?」
大丈夫。 九条はきっと戻ってくる。
私は小さく頷き、彼の背に視線を戻した。
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