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黒の箱と始める異世界転生  作者: あるほーく
1/1

転生もしくは転移

目が覚めると知らない場所だった。

ただ寝た記憶がないし、寝る前までの記憶もない。

「何してんだ俺は」

自分に呆れ、辺りを観察する。

干草で積まれた山や、鉄製の鍬を見つける。

そしてなにより獣の匂いがする。おそらく馬なのだろう。そう考えた時、強烈な頭痛が起こる

「ッ!なんだこの頭痛は、、」

頭が小さくなっていくような感覚を味わう。

治った時にふと思う。水が飲みたいと。

「とりあえず外に出て謝るか。」

日差しが漏れてくる扉に向かって歩き出した。



「ここどこ?」

拍子抜けな感想が出てしまうほど、見覚えのない景色だった。

おそらく街なのだろう。ただ知ってる街ではない。

建物の作りも中世風、なにより

「太陽が2個並んでるな」

そこでようやく自分の状態に気づく

どこか知らない世界に来てしまったことを。

「目が覚めたら違う世界でしたってか?流石に無いだろ。漫画じゃあるまいし、、、ッ!」

そう言った直後、またあの頭痛がやってくる。

「元の世界を思い出そうとすると、頭痛が来るんだな。フィルターってやつか」

そうしてなるべく元の世界のことを思い出さないようにすると決めた。

「じゃあこれは異世界だから浮いてるのか?」

ずっと気にしないようにしていた自分の周りに浮かんでいる黒の箱にようやく意識を向ける。

なぜかずっと昔から持っていたような感覚だったのがおかしいことに気づいたのだ。

「鉄でもプラスチックでもなさそうだな。どこから開けるかもわからないし、どうするかな」

そう思ってしまった瞬間、プラスチックという単語で元の世界を思い出し、頭痛を覚悟したが

「頭痛がない?この箱にはフィルターがないってことか、、?」

頭痛が起こらない場合もあることを確認する。

今必要なのは自分の状態の確認だと思ったからだ

「とりあえず、転生か転移かわからないから自分の顔見に行くか」

転生なら知らない顔、転移なら知ってる顔が出てくるだろうと思い、鏡を探し、大通りっぽい所へ歩いていく

「こっちにくる前の記憶がないな。というか自分がどんな奴だったか丸ごと思い出せない。常識的なところだけだな覚えてるのは。」

自分の記憶を再確認する。やっぱり何もわからない。

そして大通りへ辿り着く。

「通行人の服は普通だな。たまに派手なやつもいるがあれは貴族ってやつかな。そして何より、なんだあれは」

1番目を引いたのは、全長4メートルはあるだろうというおそらく爬虫類ぽい動物に引かせている馬車だった。

「あれを馬車と呼んでいいかはわからないが、さすがにファンタジーを感じるなこれは」

半ば諦めのような感想の後、目的のものを見つける。

「あれは飲食店ぽいな。行けば水ぐらいくれるだろ。

待て、言葉通じるのか?まぁいいかなんとかなるだろう。」

謎の自信と共に飲食店に入る。

「やっぱり建物の文化レベルは中世ってところか。ただここは飲食店というよりバーだな。」

周りを見渡して、正面のカウンターにちょび髭のダンディーな男、あとはフードを被った2人。目立つのはそのぐらいだった。喉が渇いてあまり気にしていないが。

「あー、マスター。言葉は通じるか?」

俺はちょび髭のダンディーな男に話しかける

「はい、通じていますよ。他大陸からのお客様ですかね。いらっしゃいませ。」

マスターぽい男とは普通に会話ができることを確認した。色々聞きたいことはあるが、まずは

「すまない。旅をしていたのだが、路銀を落としてしまって何も払えないんだが、水を一杯くれないか」

俺は事前に考えていたセリフを話す。

「喜んで。箱持ちのお客様は大歓迎ですよ!」

「箱持ち?この黒い箱が見えるのか?」

俺以外の人から見えることを確認していなかったと反省する。厄介ごとになる前に走って逃げることを覚悟しながら会話を続ける。

「もちろん。それは選ばれた人の象徴ですからね。ただ黒色というのは初めて見ましたね。」

「この色は珍しいのか。何色が多いんだ?」

「ふむ。お客様はあまり詳しくないんですね。いいでしょう。簡単に説明させていただきます。」

そう言ってこの世界のことを話し始めた。

「まずこの世界には精霊がいるとされています。その中でも属性によって分けられていて、火、水、風、土の4種類が精霊の数が多いとされていますね。そしてその精霊から力をもらって自分で発揮することが出来るようになるのがその箱です。箱の色は精霊に対応していると言われ、火は赤、水は青、風は緑、土は茶色といった風に色分けできると言われています。もちろん他にも精霊の種類もいますがね。なので何色が多いかと言われますと、赤青緑茶色ということになりますね。稀少な精霊は、王家や貴族そういった方々に多いですね。」

なぜか聞き覚えのある設定いや、世界のことを聞き改めて自分が特殊なことに気づく。ここに居てはまずいと思い。

「ありがとうマスターよくわかったよ。水もありがとう。この恩は必ず返すので少し待っていて欲しい。」

「期待してお待ちしております。」

そう言って、店を出ようとした時目の前にフードをかぶっていた奴が道を遮る。おそらく背格好的に男だろう。

「退いてくれないか、そこを通りたいんだ。」

するとフードの男が話し出す。

「やっと見つけた。長い間待ったよ。」

そう言って男は紫の箱を空中に現す。

箱を隠せるとは思わなかったが、それどころではなかった。

「強引にでも連れて帰るよ。本当に長い間待ってたんだ君のことを。」

そう言って男はこちらに近づく。

「俺は待ってないし初対面だな。」

身の危険を感じ、逃げる用意をする。

「させないよ。選択肢は与えない。」

紫の箱が光り、あたりに紫の煙が出てくる。

明らかに不気味なその煙は、逃げることを諦めるには十分だった。

「面倒ごとは嫌いなんだけどな」

そう言って諦めようとした時、頭の横に雷が通る。

「そうはさせないよ。やっと尻尾出してくれたね。待ちくたびれたよ」

女の声だった。おそらくもう1人のフードの奴だろう。

「追ってきているのは知ってたさ。でもどうすることもできないだろう?」

フードの男は煙を濃く広く店の中に充満させる。

「舐められたものだな。それぐらいで逃げられるとでも?」

フードの女は雷を何本も放ち、煙を消していった。

「仕方ない。目立ちたくはないんだけどね。」

そう言って男は俺の黒の箱に掌を伸ばす。

嫌な予感がして後ろに下がる。

「その箱だけは貰って帰るよ。」

そう言った途端、黒の箱は何かに押し潰されたように消えた。

「そんなこともできるのか、流石に降参だよ」

抵抗の意志がないことを見せながら、必死に逃げ道を考える。

「まだだよ!そこの君!早くこっちに来て!」

女は叫ぶ。そして目の前に何か黒いモヤが現れる。

黒いモヤの中に紫の雷が見え、死んだと思った時、目の前に潰されたはずの黒の箱が現れる。

「こいつが守ってくれたのか?」

何が起きてるかはわからないが、助けられたのだと考える。

「馬鹿な、再生した?そんな事象聞いたこともないぞ。」

「やはりそうですか。あなたが『異分子』なのですね」

女は驚き、男は納得した。

そしてフードの男がフードを取る。

「自己紹介してなかったですね。私は開発者と呼ばれているものです。お迎えにあがりました。」

フードの男は長い黒髪を後ろで束ねた不健康そうな男だった。

「あなたの力とその使い方、使命を伝える準備は整っています。どうか私についてきて頂けませんか。」

開発者と名乗る男はそう言って頭を下げてきた。

ただ俺も馬鹿じゃない。こいつが悪だってことはなんとなくわかる。ついて行ったらロクなことにならないことも。

「すまないな。まだ自分のことで精一杯なんだ、整理する時間をくれないか。」

できるだけ穏便にこの場をやり過ごそうとする。

「なるほど。それもそうですね。ではまた伺うことにしましょう。決心がついたらいつでも待っていますよ。あまり待ちすぎるとこちらからお迎えにあがりますがね。」

そう言って男をまた頭を下げた。

「それとこれはプレゼントです。」

そう言って男は俺の黒の箱に紫の煙を向ける。

黒の箱はそれを飲み込んでいく。

「今何をした?」

「いずれ分かるかと、それの使い方も含めてお教えする時を心待ちにしていますよ。」

そう言って男は紫の煙を放ち、消えていった。

辺りは静寂に包まれていた。

フードの女は何かを考えこんでいる様子だ。

マスターは何も無かったように振る舞っている。あんなことがあったのに。たぶんこいつも普通じゃないんだと理解した。

「すまない、騒がせてしまった。今度お詫びの品を持ってくるよ。」

そう言って店を出ようとした時

「少し待ってくれないか!君を連れて行きたい所がある。後悔はさせない。」

フードの女はそう言ったのだった


  



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